タイラガイ(タイラギ), イシガキガイ(エゾイシカゲガイ), tairagai tairagi ishigakigai
Aug 22, 2015 17:31:47 GMT 9
Post by 管理人 on Aug 22, 2015 17:31:47 GMT 9
これまで貝については、アカガイ ・ ミルガイ (ミルクイ) ・ トリガイ、
煮物ネタ (タネ) としてマダカアワビ ・ ハマグリを取り上げてきましたが、
このページでは、その他の貝について書きます。
貝は小さいので、品数を増やすのに好都合です。
私は、マグロのトロやアナゴのような濃厚なネタを多用しましたので、
貝類は淡白なものを主にツマミとして使いました。
両親の歯の都合で、クロアワビ ・ エゾアワビ ・ サザエ ・ 真ツブ(エゾボラ)のような硬めの貝はあまり使えず、
タイラガイ (タイラギ)、イシガキガイ (エゾイシカゲガイ)、オオエッチュウバイ、エッチュウバイ、加賀バイ
などを主に使いました。
江戸前のすしの定番ネタでほとんど使わなかったのがアオヤギ (バカガイ)。
小柱 (バカガイの貝柱)は、そのまま握ったり軍艦巻にしたりウニと合わせたりしてすしにされますが、
すしや刺身で光る食材ではないので、すしの日にはほとんど使いませんでした。
また、足 (舌)は加熱すると出てくる独特の香りが父の好みに合わず、ほとんど使えませんでした。
実は、アオヤギの足を生食するととても美味しいのですが、
好塩菌の腸炎ビブリオに汚染されやすい上に、他の原因による食中毒もありうるので、
家族に生で食べさせる気になれませんでした。
もしも生で出したとしたら、父や母は気味悪がったでしょう。
だいぶ前になりますが、特定はされなかったもののコレラの感染源として疑われたり、
都内のすし店でアオヤギが原因の食中毒が出たりし、
共に新聞やテレビ・ラジオのニュースで大きく取り上げられましたから。
定番とまではいかないものの、
東京のすし店で比較的よく使われる貝にホッキガイ (ウバガイ) ・ ホタテガイ ・ カキ (マガキ)がありますが、
ホッキガイは父の好みではなかったのでほとんど使わず、
ホタテガイとカキはすしの日に使いたい貝ではないため使いませんでした。
以下、すしにも使ったタイラガイ (タイラギ)とイシガキガイ (エゾイシカゲガイ)について書きます。
◆タイラガイ (タイラギ)
東京のすし店では、標準和名の「タイラギ (玉珧)」よりも「タイラガイ (平貝)」と呼ばれることが多いので、
それに従います。
使うのは、貝殻中央にある大きい方の貝柱です。
貝殻から外し薄膜を取り除いて使います。(真水で洗ってから)
小さくてかわいい生きたカニやエビが貝殻内部に寄生していることも多いです。
他の部分も食べようと思えば食べられなくもありませんが、一般的には使いません。
私が働いていた日本料理店でも、他の部分はマカナイですら使いませんでした。
国産の漁獲量は少なく、流通する活けのタイラガイのほとんどが安価な韓国産。
韓国産のタイラガイを日本の海水に入れて置いたものも、国産としてかなり多く流通していますので、
そんなまがい物を掴まされないよう、きちんとした仕入先を選定してください。
一定レベル以下の飲食店では、偽の国産を含めほとんど韓国産が使われますが、
国産の上物を食べれば、この貝に対するイメージが大きく変わると思います。
すし店での使い方は至ってシンプルですが、
日本料理の世界では、その奥深い味 ・ 香りを活かしつつ他の食材と組み合わせた料理が色々とあります。
旬は真冬。
貝柱が小さいものは全くダメですが、大きすぎても味 ・ 食感共に悪くなります。
上物は、貝柱がふっくらとしていて尚且つ貝柱が引き締まっているため、味も歯触りも素敵です。
選ぶのは、もちろん活きのいい生きたもので、貝殻の隙間から中を覗いて選んでください。
江戸前の伝統的なネタだけに、かつては東京湾で素晴らしいタイラガイが沢山獲れたそうですが、
今やほぼ幻という感じです。
貝の名産地富津で今でも極わずかに獲れるようですが、ほとんど流通しません。
ミルガイ (ミルクイ) のように復活してくれるといいのですが。
東京湾以外の漁場でも激減中のようです。
近い将来、養殖物が主流となるでしょう。
タイラガイの好漁場「備讃瀬戸」(瀬戸内海)に面する倉敷周辺(岡山)のものが特に名高く質も良いのですが、
見つからない場合は他の瀬戸内海産か、知多半島など三河湾とその周辺(愛知)のものがオススメです。
タイラガイは好塩菌の腸炎ビブリオがつきやすい貝ですので、真水で洗うことが重要な防御策となります。
かなり長い期間流通しますが、腸炎ビブリオが活性化する水温の高い時期は、生食は避けた方がいいでしょう。
貝柱のだ円の面を上に向けた状態で、横から包丁を入れるとすると、切りつけたものはだ円形になり、
上から包丁を入れると長方形になります。
前者は見た目が良く、切断面がザラッとした感じになり、それはそれでいい感じですが、
繊維質を垂直に分断してしまうため、サクッとした食感が減じます。
すしや刺身の多くが、この繊維質を垂直に分断する切り方です。
後者は、繊維質と平行に切ることになり、サクッとした歯触りを失わなくて済みます。
ただし、前者に比べると見た目の美しさに欠けます。
私のオススメは後者で、特に厚みがあり身の引き締まった上物は、そのように切っていただきたいと思います。
このことは、ホタテガイの貝柱についても当てはまります。
刺身で食べるのも美味しいのですが、軽く炙ると味が凝縮し香りも高まります。
貝柱表面に醤油を塗って軽く炙り、海苔を巻いたものは、すし店の定番のツマミです。
醤油や海苔は使わず、塩だけ又は塩+カンキツ果汁でも美味しく食べることができます。
丸ごと又は繊維と平行に大きく切ってから焼き、ガブッとかじりつくのがオススメの食べ方です。
すしの場合、生で握られることの方が多いですが、炙ってから握った方が、シャリとの相性が良くなります。
私は、繊維と平行に切り(幅と厚みに欠ける場合は垂直に切ってください。)、
ネタ表にする面に煮切り醤油を塗り、両面をサッと炙ってから、
ワサビを挟んで握り、海苔で帯しました。
生のタイラガイの握りに海苔は味覚上必要ないと思いますが、
こうして炙ったタイラガイの握りは、海苔との相性がとてもいいです。
◆イシガキガイ (エゾイシカゲガイ)
エゾイシカゲガイ (蝦夷石蔭(陰)貝) が標準和名ですが、
「イシガキガイ (石垣貝)」の名で一般に知られています。
見た目も味もトリガイによく似ている貝ですが、
トリガイの足の黒い部分が、イシガキガイの場合は黄色っぽい色です。
むき身にすると、アオヤギ(バカガイ)にも似ています。
上物は大きく肉厚で甘味があり、トリガイよりもソフトな食感で、クセが少なく食べやすいと思います。
回転ずしでは、かなり以前から韓国産や中国産のイシガキガイが使われていて、
そのせいかどうか知りませんが、一昔前は、トリガイの代用品という程度の評価が一般的で、
国産でも比較的安価でした。
その後、陸前高田(広田湾, 岩手)で養殖が始まってから、
活け(以下、「殻付き」)での流通が徐々に増え、飲食店での使用が増える中人気が高まり、
東日本大震災により養殖場が壊滅状態となったものの再興し、
復興支援が盛り上がる中、知名度も評価も更に上昇したようです。
私がよく使っていたのは若い頃、産地直送中心の比較的大型・安売りの鮮魚店で仕入れていた頃です。
まだ養殖も行われておらず、国産のイシガキガイはあまり流通していなかったのですが、
その鮮魚店は、北海道や青森などで漁獲された殻付きで大ぶりのものを時々扱っていました。
当時、殻付きのイシガキガイは珍しく、仕入れに来る飲食店の人達を中心に人気がありました。
その鮮魚店では、殻付きのトリガイも扱っていたのですが下物ばかり。
でも、殻付きのイシガキガイは上質でした。
美味しく、漁獲量が少ない貝であるにも拘わらず、
知名度・評価共にあまり高くなかったからこそ、その鮮魚店でも扱うことができたのでしょう。
経済力のなかった若き日の私としては、手の届く価格でとても重宝していたのですが、
年を追うごとに入荷は減り、やがては全く入荷しなくなってしまいました。
漁獲量の減少と価格上昇のためでしょう。
その後、上物を扱う地元の鮮魚店を仕入先としてからは、
「国産 ・ 天然 ・ 殻付きの上物を見つけたらお願いします」ということで注文していましたが、
知名度 ・ 評価共に今一つだったからでしょう、
条件に見合うイシガキガイはなかなか見つからなかったようで、そう多くは使えませんでした。
父がイシガキガイよりもトリガイをより好んだので、
築地通いをしていた頃は真剣に探したことがありませんが、
どこかにはあったのでしょうが、見かけることはありませんでした。
(現在は、築地への入荷量は増えているようです。)
現在流通する国産の殻付きイシガキガイの主流は、養殖物です。
養殖物は使ったことがないので何とも言えませんが、
7~10月頃が出荷時期で、夏場が旬とされているようです。
私が使っていた北海道や青森等の天然物は、
2~5月頃と9~11月頃に入荷され、一番いい時期は春先あたりでした。
時期的にトリガイに近いので、生態もトリガイに似ているのかもしれません。
使い方はトリガイと同じですので、トリガイのページを参照してください。
煮物ネタ (タネ) としてマダカアワビ ・ ハマグリを取り上げてきましたが、
このページでは、その他の貝について書きます。
貝は小さいので、品数を増やすのに好都合です。
私は、マグロのトロやアナゴのような濃厚なネタを多用しましたので、
貝類は淡白なものを主にツマミとして使いました。
両親の歯の都合で、クロアワビ ・ エゾアワビ ・ サザエ ・ 真ツブ(エゾボラ)のような硬めの貝はあまり使えず、
タイラガイ (タイラギ)、イシガキガイ (エゾイシカゲガイ)、オオエッチュウバイ、エッチュウバイ、加賀バイ
などを主に使いました。
江戸前のすしの定番ネタでほとんど使わなかったのがアオヤギ (バカガイ)。
小柱 (バカガイの貝柱)は、そのまま握ったり軍艦巻にしたりウニと合わせたりしてすしにされますが、
すしや刺身で光る食材ではないので、すしの日にはほとんど使いませんでした。
また、足 (舌)は加熱すると出てくる独特の香りが父の好みに合わず、ほとんど使えませんでした。
実は、アオヤギの足を生食するととても美味しいのですが、
好塩菌の腸炎ビブリオに汚染されやすい上に、他の原因による食中毒もありうるので、
家族に生で食べさせる気になれませんでした。
もしも生で出したとしたら、父や母は気味悪がったでしょう。
だいぶ前になりますが、特定はされなかったもののコレラの感染源として疑われたり、
都内のすし店でアオヤギが原因の食中毒が出たりし、
共に新聞やテレビ・ラジオのニュースで大きく取り上げられましたから。
定番とまではいかないものの、
東京のすし店で比較的よく使われる貝にホッキガイ (ウバガイ) ・ ホタテガイ ・ カキ (マガキ)がありますが、
ホッキガイは父の好みではなかったのでほとんど使わず、
ホタテガイとカキはすしの日に使いたい貝ではないため使いませんでした。
以下、すしにも使ったタイラガイ (タイラギ)とイシガキガイ (エゾイシカゲガイ)について書きます。
◆タイラガイ (タイラギ)
東京のすし店では、標準和名の「タイラギ (玉珧)」よりも「タイラガイ (平貝)」と呼ばれることが多いので、
それに従います。
使うのは、貝殻中央にある大きい方の貝柱です。
貝殻から外し薄膜を取り除いて使います。(真水で洗ってから)
小さくてかわいい生きたカニやエビが貝殻内部に寄生していることも多いです。
他の部分も食べようと思えば食べられなくもありませんが、一般的には使いません。
私が働いていた日本料理店でも、他の部分はマカナイですら使いませんでした。
国産の漁獲量は少なく、流通する活けのタイラガイのほとんどが安価な韓国産。
韓国産のタイラガイを日本の海水に入れて置いたものも、国産としてかなり多く流通していますので、
そんなまがい物を掴まされないよう、きちんとした仕入先を選定してください。
一定レベル以下の飲食店では、偽の国産を含めほとんど韓国産が使われますが、
国産の上物を食べれば、この貝に対するイメージが大きく変わると思います。
すし店での使い方は至ってシンプルですが、
日本料理の世界では、その奥深い味 ・ 香りを活かしつつ他の食材と組み合わせた料理が色々とあります。
旬は真冬。
貝柱が小さいものは全くダメですが、大きすぎても味 ・ 食感共に悪くなります。
上物は、貝柱がふっくらとしていて尚且つ貝柱が引き締まっているため、味も歯触りも素敵です。
選ぶのは、もちろん活きのいい生きたもので、貝殻の隙間から中を覗いて選んでください。
江戸前の伝統的なネタだけに、かつては東京湾で素晴らしいタイラガイが沢山獲れたそうですが、
今やほぼ幻という感じです。
貝の名産地富津で今でも極わずかに獲れるようですが、ほとんど流通しません。
ミルガイ (ミルクイ) のように復活してくれるといいのですが。
東京湾以外の漁場でも激減中のようです。
近い将来、養殖物が主流となるでしょう。
タイラガイの好漁場「備讃瀬戸」(瀬戸内海)に面する倉敷周辺(岡山)のものが特に名高く質も良いのですが、
見つからない場合は他の瀬戸内海産か、知多半島など三河湾とその周辺(愛知)のものがオススメです。
タイラガイは好塩菌の腸炎ビブリオがつきやすい貝ですので、真水で洗うことが重要な防御策となります。
かなり長い期間流通しますが、腸炎ビブリオが活性化する水温の高い時期は、生食は避けた方がいいでしょう。
貝柱のだ円の面を上に向けた状態で、横から包丁を入れるとすると、切りつけたものはだ円形になり、
上から包丁を入れると長方形になります。
前者は見た目が良く、切断面がザラッとした感じになり、それはそれでいい感じですが、
繊維質を垂直に分断してしまうため、サクッとした食感が減じます。
すしや刺身の多くが、この繊維質を垂直に分断する切り方です。
後者は、繊維質と平行に切ることになり、サクッとした歯触りを失わなくて済みます。
ただし、前者に比べると見た目の美しさに欠けます。
私のオススメは後者で、特に厚みがあり身の引き締まった上物は、そのように切っていただきたいと思います。
このことは、ホタテガイの貝柱についても当てはまります。
刺身で食べるのも美味しいのですが、軽く炙ると味が凝縮し香りも高まります。
貝柱表面に醤油を塗って軽く炙り、海苔を巻いたものは、すし店の定番のツマミです。
醤油や海苔は使わず、塩だけ又は塩+カンキツ果汁でも美味しく食べることができます。
丸ごと又は繊維と平行に大きく切ってから焼き、ガブッとかじりつくのがオススメの食べ方です。
すしの場合、生で握られることの方が多いですが、炙ってから握った方が、シャリとの相性が良くなります。
私は、繊維と平行に切り(幅と厚みに欠ける場合は垂直に切ってください。)、
ネタ表にする面に煮切り醤油を塗り、両面をサッと炙ってから、
ワサビを挟んで握り、海苔で帯しました。
生のタイラガイの握りに海苔は味覚上必要ないと思いますが、
こうして炙ったタイラガイの握りは、海苔との相性がとてもいいです。
◆イシガキガイ (エゾイシカゲガイ)
エゾイシカゲガイ (蝦夷石蔭(陰)貝) が標準和名ですが、
「イシガキガイ (石垣貝)」の名で一般に知られています。
見た目も味もトリガイによく似ている貝ですが、
トリガイの足の黒い部分が、イシガキガイの場合は黄色っぽい色です。
むき身にすると、アオヤギ(バカガイ)にも似ています。
上物は大きく肉厚で甘味があり、トリガイよりもソフトな食感で、クセが少なく食べやすいと思います。
回転ずしでは、かなり以前から韓国産や中国産のイシガキガイが使われていて、
そのせいかどうか知りませんが、一昔前は、トリガイの代用品という程度の評価が一般的で、
国産でも比較的安価でした。
その後、陸前高田(広田湾, 岩手)で養殖が始まってから、
活け(以下、「殻付き」)での流通が徐々に増え、飲食店での使用が増える中人気が高まり、
東日本大震災により養殖場が壊滅状態となったものの再興し、
復興支援が盛り上がる中、知名度も評価も更に上昇したようです。
私がよく使っていたのは若い頃、産地直送中心の比較的大型・安売りの鮮魚店で仕入れていた頃です。
まだ養殖も行われておらず、国産のイシガキガイはあまり流通していなかったのですが、
その鮮魚店は、北海道や青森などで漁獲された殻付きで大ぶりのものを時々扱っていました。
当時、殻付きのイシガキガイは珍しく、仕入れに来る飲食店の人達を中心に人気がありました。
その鮮魚店では、殻付きのトリガイも扱っていたのですが下物ばかり。
でも、殻付きのイシガキガイは上質でした。
美味しく、漁獲量が少ない貝であるにも拘わらず、
知名度・評価共にあまり高くなかったからこそ、その鮮魚店でも扱うことができたのでしょう。
経済力のなかった若き日の私としては、手の届く価格でとても重宝していたのですが、
年を追うごとに入荷は減り、やがては全く入荷しなくなってしまいました。
漁獲量の減少と価格上昇のためでしょう。
その後、上物を扱う地元の鮮魚店を仕入先としてからは、
「国産 ・ 天然 ・ 殻付きの上物を見つけたらお願いします」ということで注文していましたが、
知名度 ・ 評価共に今一つだったからでしょう、
条件に見合うイシガキガイはなかなか見つからなかったようで、そう多くは使えませんでした。
父がイシガキガイよりもトリガイをより好んだので、
築地通いをしていた頃は真剣に探したことがありませんが、
どこかにはあったのでしょうが、見かけることはありませんでした。
(現在は、築地への入荷量は増えているようです。)
現在流通する国産の殻付きイシガキガイの主流は、養殖物です。
養殖物は使ったことがないので何とも言えませんが、
7~10月頃が出荷時期で、夏場が旬とされているようです。
私が使っていた北海道や青森等の天然物は、
2~5月頃と9~11月頃に入荷され、一番いい時期は春先あたりでした。
時期的にトリガイに近いので、生態もトリガイに似ているのかもしれません。
使い方はトリガイと同じですので、トリガイのページを参照してください。