ミルガイ (ミルクイ, 本ミル), レシピ mirugai mirukui honmiru recipe edomae
Aug 15, 2015 15:18:30 GMT 9
Post by 管理人 on Aug 15, 2015 15:18:30 GMT 9
ミルガイは、こげ茶色又は黒っぽい貝殻から、
象の鼻のような黒い水管 (ミル)がニューっと出ている、ちょっとグロテスクな感じの貝です。
豊かな甘味と香り、心地よい歯触りに特徴のある貝ですが、
漁獲量が激減してしまったため値段が高く、上物を使えるすし店は限られます。
標準和名は「ミルクイ (海松喰)」ですが、
「ミルガイ (海松貝)」の方がより一般的(少なくとも関東では)だと思います。
「本ミル」という呼称も一般的ですが、
これは形が似ているナミガイ (波貝)という全く別の種類の貝が「白ミル」の名で流通するようになってから、
区別するために使われるようになりました。
ナミガイは貝殻が白く、水管はやや茶色がかったクリーム色という感じなので、簡単に見分けられます。
ナミガイの方が水管が大きく長く成長し、
水管がミミズ系の生き物を連想させるため、よりグロテスクな感じがします。
経済力のなかった若い頃は、値段の安いナミガイを使いましたが、ミルガイとは値段も味も全く異なります。
ナミガイをナミガイと分かって食べる分には問題ありませんが、
飲食店 (すし店を含む)の中には、ナミガイをシロミルではなくミルガイとしてメニューに入れ、
高い値段をとっているところもありますので、だまされないよう気をつけてください。
1.仕入れ (築地場内市場)
ミルガイは、江戸前のすしの伝統的なネタ(タネ)ですが、高価希少なためでしょう、
築地場内でもアカガイやトリガイのように、そこら中の仲卸しが扱っているわけではなく、
まして上物となると、ごく一部の仲卸ししか扱っていませんでした。
ミルガイの産卵期は、秋から春までとバラツキがあり、産卵直前まで美味しく食べることができ、
密漁物も含め1年中流通(真夏は極少)するため、きちんと選別していけば長い期間使え、
中には1年中ミルガイを使うすし店もあります。
産卵のピークは秋と春で、中秋から晩秋と真冬から春先あたりに良いものが多くなりますが、
産卵期がずれこむことも多く、また産地によって漁期も異なるため、秋から初夏の間は良いものが手に入ります。
ですから、ミルガイの旬を秋とする料理人、真冬から早春とする料理人、春から初夏とする料理人など様々です。
自分が好きな産地の漁期を旬と捉えている方が多いのだと思います。
(一般的には、冬から早春あたりが旬とされていると思います。)
ミルガイは、当然活け物を使うわけですが、
生きていても鮮度が落ちると味も香りも食感も悪くなるため、活きのいいものを選ばなければなりません。
高価なだけに出荷調整されがちなので、要注意です。
見た目に活き活きとしていて、水管は太く張りがあり、触った時に反応の良いものを選んでください。
上物は、貝殻も水管もふっくらとしています。
小さいものはキロ当たりの単価も安いですが、ミルガイの醍醐味を充分に味わうことができません。
すし店では、水管を縦に切りつけた時に握りの大きさにちょうどいい
700~800グラムくらい(近年はこれでも大きい方)のものを使うところが多いですが、
もっと大きなものの方が、身が厚く食べごたえがありますので、1キロ以上がオススメです。
ただし、アワビと同じく海水の塩分濃度を低くして、
ミルガイにたっぷりと海水を吸わせて目方を増量させる悪徳業者もいますので、気をつけてください。
築地場内には、東京湾、三河湾とその周辺、伊勢湾、瀬戸内海、有明海などから入荷がありましたが、
富津産 (東京湾)と伊良湖など渥美半島産 (愛知)のものが特に高く評価されていました。
流通量としては、値段の安い韓国産が圧倒的に多く、
築地場内でも韓国産が多く扱われていましたが、あまり評判は良くありません。
私は、仕事でも個人でも、韓国産のミルガイを使ったことはありませんが、
高級店以外では多く使われているようです。
ですから、高級店以外でミルガイ(本ミル)を食べる場合は、
韓国産か国産の小さなものが出てくる可能性が高いと思います。
2.仕込み
供する直前に仕込みます。
(材料)
・ 水 (高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
・ 氷 (上記水を凍らせたもの) 適量
・ あら塩 (精製塩は不可) 適量
①鍋にたっぷりの水を沸かします。
②ミルガイの水管を上、貝殻の開口部を手前にして持ち、
開口部にムキ棒(又は食事用のナイフ)を入れて片側の柱を貝殻から外し、柱を外した貝殻を取り除きます。
③もう片側も、ムキ棒で柱を外し、貝殻を取り除きます。むき身になりました。
④水管とそれ以外の部分とに切り分けます。
※普通、すしや刺身に使うのは水管の部分だけですが、柱、ヒモ、ミル舌と呼ばれる足を使うすし店もあります。
ヒモにはこれといった持ち味が無く、柱とミル舌はミルガイ特有のクセのある匂いが水管の何倍も強いので、
好みが分かれるところですが、特にミル舌には愛好者がいます。
ミルガイ特有のクセが苦手な人でも、調理法によってはそれなりに美味しく食べることが出来るのですが、
家族には他のすしやつまみをしっかりと食べて欲しかったので、私は使いませんでした。
ちなみに、私が働いていた日本料理店では、お客さんに出すことはなく、マカナイでも使われず、
個人的に好んで食べる人もいませんでした。
マカナイを担当していた若い頃、もったいないと思い、マカナイに使ってみたいと先輩に相談したところ、
頼むからやめてくれ、と止められました_(:0 」
⑤水管をざっと水洗いして、汚れや砂(近年は砂のついたものは少ない)を落とします。
⑥ボウルに氷と水を入れます。
⑦水管の黒い皮で覆われた部分のみを、沸いた①の熱湯にさっと通してから⑥の氷水に移し、
すぐに取り出し、キッチンペーパーで水気を拭いてから、スプーンを使って水管の皮を剥がします。
※湯を使わなくても皮を剥がすことは出来ますが、この方が身を傷つけることなくきれいに素早く剥がせます。
ちなみに、水管に塩をふってしばらく置いてから(又は塩もみしてから)湯に入れると、
より簡単に皮を剥がすことができます。
⑧左右対称となるよう、横から包丁で水管を切り開きます。ギリギリまで包丁を入れてください。
⑨水管に塩を振り、開いた方を上にしてザルに載せ、塩が馴染みかけてきたあたりでボウルに入れて水で洗い、
ザルに上げてからキッチンペーパーで水気を拭き取ります。
※この処理は、ミルガイ特有のクセのある匂いを取り除くためのものです。
(行わないすし店の方が多いと思います。)
父は、この種の匂いを嫌うことが明白だったので、我が家では欠かせない処理でしたが、
ミルガイのクセが好きな方は水か塩水で洗うだけでも、洗わなくてもけっこうです。
(砂がついている場合は洗ってください。)
⑩水管の内側をキッチンペーパーで掃除し、水管先端の固い部分を包丁で切り取り、
水管の形を包丁で整えます。
※見栄えを良くしたければ、水管先端を薄く削ぎ、先端部分だけを湯ぶりし、赤くなったら氷水で冷やし、
キッチンペーパーで水気を拭き取ってください。
3.供し方
上述の通り、私は水管だけを使いました。
シャリと合わせるよりも刺身で食べた方が美味しいと思うので、基本的にはすしにはしませんでした。
軽く炙っても、とても美味しく食べられます。
すしにする場合は、開いた側を上にしてそぎ切りし、
ワサビを挟んで握り、煮切り醤油又は塩+カンキツ果汁をつけて供します。
すしにすると、上記⑨の処理なしでもミルガイのクセがシャリで多少マスクされますので、
苦手な人にも食べやすくなるかと思います。
シャリと密着しにくいため握りにくく、また切りつけた時に反り返ったりするので、
切りつけの際はそのあたりも計算に入れる必要があります。
切りつけたネタを横長に置き、縦に細かく包丁目を入れると握りやすくなり、シャリとの一体感も出ますが、
そうすると心地よい歯触りが多少なりとも犠牲になりますので、しない方がいいと思います。
象の鼻のような黒い水管 (ミル)がニューっと出ている、ちょっとグロテスクな感じの貝です。
豊かな甘味と香り、心地よい歯触りに特徴のある貝ですが、
漁獲量が激減してしまったため値段が高く、上物を使えるすし店は限られます。
標準和名は「ミルクイ (海松喰)」ですが、
「ミルガイ (海松貝)」の方がより一般的(少なくとも関東では)だと思います。
「本ミル」という呼称も一般的ですが、
これは形が似ているナミガイ (波貝)という全く別の種類の貝が「白ミル」の名で流通するようになってから、
区別するために使われるようになりました。
ナミガイは貝殻が白く、水管はやや茶色がかったクリーム色という感じなので、簡単に見分けられます。
ナミガイの方が水管が大きく長く成長し、
水管がミミズ系の生き物を連想させるため、よりグロテスクな感じがします。
経済力のなかった若い頃は、値段の安いナミガイを使いましたが、ミルガイとは値段も味も全く異なります。
ナミガイをナミガイと分かって食べる分には問題ありませんが、
飲食店 (すし店を含む)の中には、ナミガイをシロミルではなくミルガイとしてメニューに入れ、
高い値段をとっているところもありますので、だまされないよう気をつけてください。
1.仕入れ (築地場内市場)
ミルガイは、江戸前のすしの伝統的なネタ(タネ)ですが、高価希少なためでしょう、
築地場内でもアカガイやトリガイのように、そこら中の仲卸しが扱っているわけではなく、
まして上物となると、ごく一部の仲卸ししか扱っていませんでした。
ミルガイの産卵期は、秋から春までとバラツキがあり、産卵直前まで美味しく食べることができ、
密漁物も含め1年中流通(真夏は極少)するため、きちんと選別していけば長い期間使え、
中には1年中ミルガイを使うすし店もあります。
産卵のピークは秋と春で、中秋から晩秋と真冬から春先あたりに良いものが多くなりますが、
産卵期がずれこむことも多く、また産地によって漁期も異なるため、秋から初夏の間は良いものが手に入ります。
ですから、ミルガイの旬を秋とする料理人、真冬から早春とする料理人、春から初夏とする料理人など様々です。
自分が好きな産地の漁期を旬と捉えている方が多いのだと思います。
(一般的には、冬から早春あたりが旬とされていると思います。)
ミルガイは、当然活け物を使うわけですが、
生きていても鮮度が落ちると味も香りも食感も悪くなるため、活きのいいものを選ばなければなりません。
高価なだけに出荷調整されがちなので、要注意です。
見た目に活き活きとしていて、水管は太く張りがあり、触った時に反応の良いものを選んでください。
上物は、貝殻も水管もふっくらとしています。
小さいものはキロ当たりの単価も安いですが、ミルガイの醍醐味を充分に味わうことができません。
すし店では、水管を縦に切りつけた時に握りの大きさにちょうどいい
700~800グラムくらい(近年はこれでも大きい方)のものを使うところが多いですが、
もっと大きなものの方が、身が厚く食べごたえがありますので、1キロ以上がオススメです。
ただし、アワビと同じく海水の塩分濃度を低くして、
ミルガイにたっぷりと海水を吸わせて目方を増量させる悪徳業者もいますので、気をつけてください。
築地場内には、東京湾、三河湾とその周辺、伊勢湾、瀬戸内海、有明海などから入荷がありましたが、
富津産 (東京湾)と伊良湖など渥美半島産 (愛知)のものが特に高く評価されていました。
流通量としては、値段の安い韓国産が圧倒的に多く、
築地場内でも韓国産が多く扱われていましたが、あまり評判は良くありません。
私は、仕事でも個人でも、韓国産のミルガイを使ったことはありませんが、
高級店以外では多く使われているようです。
ですから、高級店以外でミルガイ(本ミル)を食べる場合は、
韓国産か国産の小さなものが出てくる可能性が高いと思います。
2.仕込み
供する直前に仕込みます。
(材料)
・ 水 (高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
・ 氷 (上記水を凍らせたもの) 適量
・ あら塩 (精製塩は不可) 適量
①鍋にたっぷりの水を沸かします。
②ミルガイの水管を上、貝殻の開口部を手前にして持ち、
開口部にムキ棒(又は食事用のナイフ)を入れて片側の柱を貝殻から外し、柱を外した貝殻を取り除きます。
③もう片側も、ムキ棒で柱を外し、貝殻を取り除きます。むき身になりました。
④水管とそれ以外の部分とに切り分けます。
※普通、すしや刺身に使うのは水管の部分だけですが、柱、ヒモ、ミル舌と呼ばれる足を使うすし店もあります。
ヒモにはこれといった持ち味が無く、柱とミル舌はミルガイ特有のクセのある匂いが水管の何倍も強いので、
好みが分かれるところですが、特にミル舌には愛好者がいます。
ミルガイ特有のクセが苦手な人でも、調理法によってはそれなりに美味しく食べることが出来るのですが、
家族には他のすしやつまみをしっかりと食べて欲しかったので、私は使いませんでした。
ちなみに、私が働いていた日本料理店では、お客さんに出すことはなく、マカナイでも使われず、
個人的に好んで食べる人もいませんでした。
マカナイを担当していた若い頃、もったいないと思い、マカナイに使ってみたいと先輩に相談したところ、
頼むからやめてくれ、と止められました_(:0 」
⑤水管をざっと水洗いして、汚れや砂(近年は砂のついたものは少ない)を落とします。
⑥ボウルに氷と水を入れます。
⑦水管の黒い皮で覆われた部分のみを、沸いた①の熱湯にさっと通してから⑥の氷水に移し、
すぐに取り出し、キッチンペーパーで水気を拭いてから、スプーンを使って水管の皮を剥がします。
※湯を使わなくても皮を剥がすことは出来ますが、この方が身を傷つけることなくきれいに素早く剥がせます。
ちなみに、水管に塩をふってしばらく置いてから(又は塩もみしてから)湯に入れると、
より簡単に皮を剥がすことができます。
⑧左右対称となるよう、横から包丁で水管を切り開きます。ギリギリまで包丁を入れてください。
⑨水管に塩を振り、開いた方を上にしてザルに載せ、塩が馴染みかけてきたあたりでボウルに入れて水で洗い、
ザルに上げてからキッチンペーパーで水気を拭き取ります。
※この処理は、ミルガイ特有のクセのある匂いを取り除くためのものです。
(行わないすし店の方が多いと思います。)
父は、この種の匂いを嫌うことが明白だったので、我が家では欠かせない処理でしたが、
ミルガイのクセが好きな方は水か塩水で洗うだけでも、洗わなくてもけっこうです。
(砂がついている場合は洗ってください。)
⑩水管の内側をキッチンペーパーで掃除し、水管先端の固い部分を包丁で切り取り、
水管の形を包丁で整えます。
※見栄えを良くしたければ、水管先端を薄く削ぎ、先端部分だけを湯ぶりし、赤くなったら氷水で冷やし、
キッチンペーパーで水気を拭き取ってください。
3.供し方
上述の通り、私は水管だけを使いました。
シャリと合わせるよりも刺身で食べた方が美味しいと思うので、基本的にはすしにはしませんでした。
軽く炙っても、とても美味しく食べられます。
すしにする場合は、開いた側を上にしてそぎ切りし、
ワサビを挟んで握り、煮切り醤油又は塩+カンキツ果汁をつけて供します。
すしにすると、上記⑨の処理なしでもミルガイのクセがシャリで多少マスクされますので、
苦手な人にも食べやすくなるかと思います。
シャリと密着しにくいため握りにくく、また切りつけた時に反り返ったりするので、
切りつけの際はそのあたりも計算に入れる必要があります。
切りつけたネタを横長に置き、縦に細かく包丁目を入れると握りやすくなり、シャリとの一体感も出ますが、
そうすると心地よい歯触りが多少なりとも犠牲になりますので、しない方がいいと思います。