トリガイ (鳥貝), レシピ torigai recipe edomae
Feb 28, 2015 18:06:25 GMT 9
Post by 管理人 on Feb 28, 2015 18:06:25 GMT 9
トリガイについて、奇妙な情報が氾濫しているのには驚き、悪意さえ感じてしまいます。
いわく、「冷凍してもあまり食味が変わらない」。
おそらく、湯がき後に冷凍したトリガイの不評を覆すために、業界関係者がネットとマスメディアを使って情報操作し、
それを鵜呑みにした何も知らない自称グルメの素人達が、更にその偽りの情報をネットで拡げている結果だと思います。
魚介類に限ったことではありませんが、バブル崩壊とそれに続くIT社会の中で、
このような偽りの情報が洪水のように溢れてしまっていることには失望してしまいます。
私は、冷凍物のトリガイを貶めるつもりはありません。
ただ、生と冷凍物では味わいや香りに大きな差があることを、ここではっきりと断言しておきます。
もちろん、値段にも大きな差があります。
グルメごっこを楽しんでいる程度ならともかく、私が築地通いをしていた頃のように、
もう長くは生きられない家族のために、特別に美味しいものを食べさせたいと必死にがんばっている人だっているのです。
私は、そのような人達に対して誠実でありたいと思っていますので、
経験に裏付けられたきちんとした情報を発信するよう努めています。
冷凍物の多くは、韓国産・中国産です。
国産にも、産地加工品と活けで流通するものとがあります。
さらに、国産の活け物でも、天然物と養殖物があります。
最高の美味しさを目指すなら、ぜひとも国産の天然の活けの上物を手に入れていただきたいと思います。
今は東京のすしの名店でも、天然の活け物を使うのが主流です。
1.仕入れ(築地場内市場)
トリガイの活けでの流通が始まったのは、そう古いことではありません。
環境の変化に敏感で、すぐに死んでしまうからです。
ですから、仕入れにあたっては、活きの良いものをきちんと鮮度管理しているところから仕入れ、
調理までの間も細心の注意を払わなければなりません。
活きが悪くなると、味が落ちるだけでなく、表面の黒い色(通称オハグロ)がとれやすくなってしまいます。
築地場内の仲卸しの各店舗は、通常は東京湾の沖から引いて浄化した海水を使うのですが、
活けのトリガイの場合は使わず、トリガイの入った発泡スチロールの中には、産地の海水が入っていて、
電池式エアーポンプでブクブクと酸素が送られていました。
ちなみに、私が働いていた日本料理店で産地から仕入れた時も、いつも電池式エアーポンプが付いた状態で届きました。
エアーポンプを付けていないものは、仕入れない方がいいと思います。
活けのトリガイを仕入れると、仲卸しはビニール袋に産地の海水とトリガイを入れ、
酸素ボンベからたっぷりと酸素を注入し手渡してくださいます。
その後、調理するまでの間も活きの良さを保つため、水温と酸素補給には充分に気をつけてください。
ただし、海水に直接氷を入れるような無謀なことはしないでください。
私は、維持すべき水温はその都度仲卸しに確認し(基本的には生息場所の水温)、
車での運搬中も家でも、適宜発泡スチロールと氷を使って水温を維持し、
家ではエアーポンプで酸素を送りました。
トリガイは、春に産卵するものと秋に産卵するものとがあり、それぞれ産卵前まで良い時期となりますが、
春の産卵に向けて肉厚となった晩冬から晩春あたりのものに、特に素敵な美味しさがあります。
キロあたりの単価が安い小さめのトリガイ(握りにちょうど良い大きさ)の方が美味だ、
と主張するすし店もありますが、上物ならば肉厚で大きめのものの方が、甘味も香りも上だと思います。
東京のすしの高級店でも、大きめの上物が使われることが多いです。
当時築地に入荷されていた活けのトリガイの産地は、
東京湾、銚子(千葉)、三河湾とその周辺(愛知)、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、七尾湾(石川)、宮津湾(京都)などでした。
私の経験では、日本海側のものよりも太平洋側の方が良いものが多かったです。
トリガイは父が大好きだったので、活けの良いものがあれば、時期に関係なく積極的に仕入れました。
時期を外すと味が落ち、当然築地への入荷もほとんど無くなるのですが、
私が親しくさせていただいていた上物の仲卸しの一つは、
時期ハズレに、旬の時期には及ばないものの、質の良い天然の活け物を扱うこともあったため、
通常よりも多くの期間、活けのトリガイを使うことができました。
2.仕込み
トリガイは、表面のオハグロがとれやすいため、殻から外した後、ガラス板やまな板をラップで覆ったりして処理します。
でも、オハグロがとれるかどうかで一番大切なのは鮮度で、
すごく活きの良いものならば普通に処理してもほとんどとれませんし、活きが悪ければいくら気を付けてもとれてしまいます。
ですから、上に述べた通り、調理するまで活きの良さを保つことが極めて大切なわけです。
活けのトリガイは生でも食べられますが、生々しいクセのある香りがあるので、湯がいてから使いました。
この香りを好ましいと思う方は、生で食べるのが一番でしょう。(生で使うすし店もあります。)
【レシピ】
供する直前に仕込みます。
(材料)
・活けのトリガイ 適量
・あら塩(精製塩不可)適量
・水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの)
・氷(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化した水を凍らせたもの)
①鍋にたっぷりの水を入れ、加熱します。
②ボウルに塩と水を入れたものを3つ用意します。
a. 表面の汚れをとるための塩水
b. 割いた後に洗うための塩水
c. 塩ゆでした後に冷やすための塩水←氷を入れる
③トリガイの身を殻から外し、表面の汚れ(砂やフン)を取るために、②-aの中でさっと洗います。
スプーンなどでも簡単に殻から外せますが、殻が割れやすいので、手を切らないよう気を付けてください。
小さなカニが入っていることも多いです。
④ガラス板かラップで覆ったまな板の上で、ヒモ(使わない)と足を切り分け、足を割いてワタを出し、
②-bで洗い、ザルに上げます。
⑤①に塩を加えて混ぜ、足を軽く湯がき、②-cで冷やし、すぐに別のザルに上げます。
私と家族は、クセのある生々しい香りが好きではないので、沸騰させた中で少し強めに(7~8秒位)湯がきました。
こうすると、好ましい香りに変化してくれます。
生々しい香りがお好きな方は、もっと低温で数秒湯がくか、生のまま使うと良いでしょう。
3.供し方
水気をとり、包丁で形を整え、原則として握らずに供しました。
トリガイは江戸前のすしネタ(タネ)の定番ですが、握らない方が美味しいと思います。
握る場合は、シャリを小さくしてワサビを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供します。
トリガイが大きすぎる場合は、切ってから握るか、握ってから切るかしてください。
生のトリガイを使う場合、すしにするとシャリでクセが多少マスクされますので、苦手な人でも食べやすくなります。
ちなみに、江戸前の伝統的なスタイルにこだわるすし店では、湯がいてから甘酢(砂糖+酢)にくぐらせたものを握ります。
いわく、「冷凍してもあまり食味が変わらない」。
おそらく、湯がき後に冷凍したトリガイの不評を覆すために、業界関係者がネットとマスメディアを使って情報操作し、
それを鵜呑みにした何も知らない自称グルメの素人達が、更にその偽りの情報をネットで拡げている結果だと思います。
魚介類に限ったことではありませんが、バブル崩壊とそれに続くIT社会の中で、
このような偽りの情報が洪水のように溢れてしまっていることには失望してしまいます。
私は、冷凍物のトリガイを貶めるつもりはありません。
ただ、生と冷凍物では味わいや香りに大きな差があることを、ここではっきりと断言しておきます。
もちろん、値段にも大きな差があります。
グルメごっこを楽しんでいる程度ならともかく、私が築地通いをしていた頃のように、
もう長くは生きられない家族のために、特別に美味しいものを食べさせたいと必死にがんばっている人だっているのです。
私は、そのような人達に対して誠実でありたいと思っていますので、
経験に裏付けられたきちんとした情報を発信するよう努めています。
冷凍物の多くは、韓国産・中国産です。
国産にも、産地加工品と活けで流通するものとがあります。
さらに、国産の活け物でも、天然物と養殖物があります。
最高の美味しさを目指すなら、ぜひとも国産の天然の活けの上物を手に入れていただきたいと思います。
今は東京のすしの名店でも、天然の活け物を使うのが主流です。
1.仕入れ(築地場内市場)
トリガイの活けでの流通が始まったのは、そう古いことではありません。
環境の変化に敏感で、すぐに死んでしまうからです。
ですから、仕入れにあたっては、活きの良いものをきちんと鮮度管理しているところから仕入れ、
調理までの間も細心の注意を払わなければなりません。
活きが悪くなると、味が落ちるだけでなく、表面の黒い色(通称オハグロ)がとれやすくなってしまいます。
築地場内の仲卸しの各店舗は、通常は東京湾の沖から引いて浄化した海水を使うのですが、
活けのトリガイの場合は使わず、トリガイの入った発泡スチロールの中には、産地の海水が入っていて、
電池式エアーポンプでブクブクと酸素が送られていました。
ちなみに、私が働いていた日本料理店で産地から仕入れた時も、いつも電池式エアーポンプが付いた状態で届きました。
エアーポンプを付けていないものは、仕入れない方がいいと思います。
活けのトリガイを仕入れると、仲卸しはビニール袋に産地の海水とトリガイを入れ、
酸素ボンベからたっぷりと酸素を注入し手渡してくださいます。
その後、調理するまでの間も活きの良さを保つため、水温と酸素補給には充分に気をつけてください。
ただし、海水に直接氷を入れるような無謀なことはしないでください。
私は、維持すべき水温はその都度仲卸しに確認し(基本的には生息場所の水温)、
車での運搬中も家でも、適宜発泡スチロールと氷を使って水温を維持し、
家ではエアーポンプで酸素を送りました。
トリガイは、春に産卵するものと秋に産卵するものとがあり、それぞれ産卵前まで良い時期となりますが、
春の産卵に向けて肉厚となった晩冬から晩春あたりのものに、特に素敵な美味しさがあります。
キロあたりの単価が安い小さめのトリガイ(握りにちょうど良い大きさ)の方が美味だ、
と主張するすし店もありますが、上物ならば肉厚で大きめのものの方が、甘味も香りも上だと思います。
東京のすしの高級店でも、大きめの上物が使われることが多いです。
当時築地に入荷されていた活けのトリガイの産地は、
東京湾、銚子(千葉)、三河湾とその周辺(愛知)、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、七尾湾(石川)、宮津湾(京都)などでした。
私の経験では、日本海側のものよりも太平洋側の方が良いものが多かったです。
トリガイは父が大好きだったので、活けの良いものがあれば、時期に関係なく積極的に仕入れました。
時期を外すと味が落ち、当然築地への入荷もほとんど無くなるのですが、
私が親しくさせていただいていた上物の仲卸しの一つは、
時期ハズレに、旬の時期には及ばないものの、質の良い天然の活け物を扱うこともあったため、
通常よりも多くの期間、活けのトリガイを使うことができました。
2.仕込み
トリガイは、表面のオハグロがとれやすいため、殻から外した後、ガラス板やまな板をラップで覆ったりして処理します。
でも、オハグロがとれるかどうかで一番大切なのは鮮度で、
すごく活きの良いものならば普通に処理してもほとんどとれませんし、活きが悪ければいくら気を付けてもとれてしまいます。
ですから、上に述べた通り、調理するまで活きの良さを保つことが極めて大切なわけです。
活けのトリガイは生でも食べられますが、生々しいクセのある香りがあるので、湯がいてから使いました。
この香りを好ましいと思う方は、生で食べるのが一番でしょう。(生で使うすし店もあります。)
【レシピ】
供する直前に仕込みます。
(材料)
・活けのトリガイ 適量
・あら塩(精製塩不可)適量
・水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの)
・氷(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化した水を凍らせたもの)
①鍋にたっぷりの水を入れ、加熱します。
②ボウルに塩と水を入れたものを3つ用意します。
a. 表面の汚れをとるための塩水
b. 割いた後に洗うための塩水
c. 塩ゆでした後に冷やすための塩水←氷を入れる
③トリガイの身を殻から外し、表面の汚れ(砂やフン)を取るために、②-aの中でさっと洗います。
スプーンなどでも簡単に殻から外せますが、殻が割れやすいので、手を切らないよう気を付けてください。
小さなカニが入っていることも多いです。
④ガラス板かラップで覆ったまな板の上で、ヒモ(使わない)と足を切り分け、足を割いてワタを出し、
②-bで洗い、ザルに上げます。
⑤①に塩を加えて混ぜ、足を軽く湯がき、②-cで冷やし、すぐに別のザルに上げます。
私と家族は、クセのある生々しい香りが好きではないので、沸騰させた中で少し強めに(7~8秒位)湯がきました。
こうすると、好ましい香りに変化してくれます。
生々しい香りがお好きな方は、もっと低温で数秒湯がくか、生のまま使うと良いでしょう。
3.供し方
水気をとり、包丁で形を整え、原則として握らずに供しました。
トリガイは江戸前のすしネタ(タネ)の定番ですが、握らない方が美味しいと思います。
握る場合は、シャリを小さくしてワサビを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供します。
トリガイが大きすぎる場合は、切ってから握るか、握ってから切るかしてください。
生のトリガイを使う場合、すしにするとシャリでクセが多少マスクされますので、苦手な人でも食べやすくなります。
ちなみに、江戸前の伝統的なスタイルにこだわるすし店では、湯がいてから甘酢(砂糖+酢)にくぐらせたものを握ります。