キス (シロギス)・ サヨリ・ ニシン・ サンマ, レシピ shirogisu sayori recipe edomae
Jul 11, 2015 16:41:48 GMT 9
Post by 管理人 on Jul 11, 2015 16:41:48 GMT 9
光もののうち、使用頻度は低かったものの、触れておくべき重要なネタ(タネ)を取り上げます。
◆キス (シロギス, 白鱚)
シロギス(以下、「キス」)は伝統的な江戸前のすしネタですが、
一部の老舗系のすし店以外では、長いことあまり使われませんでした。
最近は、若手・中堅の名店でもよく使われています。
子供の頃から、東京湾で陸からも船の上からもよく釣った魚で、とても愛着があります。
釣った数は、父の分と合わせれば、軽く1万匹を超えるでしょう。
身質がとても上品で、日本料理でもよく使われる魚です。
旬は春から初夏にかけてですが、夏の産卵期後、
秋深まる頃にはだいぶ身質が回復し流通量も増えてくるので、その時期にも使われます。
春から初夏と秋から初冬あたりがすし店で主に使われる次期です。
江戸前のすしでは、通常カスゴやマアジと同様に背開きで、天ぷらやアジフライのような形に卸します。
光をとばさないよう塩水を使うこと、
ならびに卸し方はカスゴと同じ(片身づけの場合、尻ビレを外す処理は無し)ですので、
カスゴのページを参考にしてください。
私は、尾は使わないので切り落としました。(一般的)
やや小さ目の片身づけサイズ(片身で1カン)が多く使われ、その場合は骨抜きを省略することもできますが、
大き目のキスを使う場合、骨抜きは必須となります。
私は、片身づけサイズでも、幅がありふっくらとしたものを主に使いましたので、
必ず骨を抜いていました。
キスのすしにも色々とありますが、私が好んだ仕込みは以下の通りです。
a. 塩と酢で締め、皮は引かずにワサビとおぼろを挟んで握り、煮切り醤油をつける伝統的なもの。
ただし、締め方は現代風に軽くしました。
伝統的な江戸前のすしでは色々なネタにおぼろが使われますが、この方法で仕込むキスは最も相性が良いと思います。
(仕込み)
塩で締める
→真水で洗う
→小骨を抜く
→皮目を内側に折り込んで酢洗い(酢+ミネラルウォ-ターの同割)し、
手のひらを合わせて酢をしぼり、ザルに上げ、ザルの下に皿を敷き、
ラップして冷蔵庫に入れる(皮目を内側に折ったまま)
→供する前に、皮目を折り込んでいたキスを開き、
身の表面が少し白っぽくなる程度に酢に漬け(5~10秒程度)、
皮を下にしてザルに上げ、キッチンペーパーで水気を拭き取る
→片身ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
b. 塩と酢で軽く締めてから昆布締めし、皮は引かずにワサビを挟んで握り、塩とかんきつ果汁をつけるもの。
昆布は主に真昆布を使いました。
(仕込み)
昆布を必要な大きさに切り、煮切り酒で拭き、ラップで包む
→塩で締める
→真水で洗う
→小骨を抜く
→皮目を内側に折り込んで酢洗い(酢+ミネラルウォ-ターの同割)し、
手のひらを合わせて酢をしぼり、ザルに上げ、しばらく置く(皮目を内側に折ったまま)
→皮目を内側に折り込んだまま酢にくぐらせ、手のひらを合わせて酢をしぼり、
別のザルに上げて下に皿を敷き、ラップして冷蔵庫に入れ酢を回す(皮目を内側に折ったまま)
→やわらかくなった昆布に、キスを開いて一枚一枚並べて昆布で挟み、ラップで包んで冷蔵庫に入れる
(昆布の香りがつきすぎないよう、途中で昆布をはずす)
→供する前に、片身ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
c. 塩を溶かした日本酒にキスをくぐらせ、皮を引き、ワサビを挟んで握り、塩をつけたもの。
片身で2カンとれる大型のキスを使いました。
(仕込み)
小骨を抜く
→供する前に、ボウルに塩と純米酒を入れて塩を溶かし、その中にキスをくぐらせる
→皮を下にしてザルに上げて水気を切り、キッチンペーパーで水気を拭き取る
→片身ずつに切り分け、皮を引き、尾に近い身は切り落とし、それぞれの片身を2カン分ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
でも、私はあまりキスを使いませんでした。
私と両親は、釣ったその日のうちに食べるキスの美味しさを、嫌というほど知っているからです。
キスは味が落ちていくのが早く、美味しさのピークは漁獲当日に来ます。
そして、翌日になると(増して翌日の夕食時になると)、比類ない上品な身質と味をだいぶ失ってしまいます。
その変化は、加熱調理されたものを食べる場合よりも、生食する場合に大きく感じます。
そのことを知っていて、キスを使わないすし職人もいると思います。
築地場内には、前日漁獲された東京湾や相模湾の釣りの上物もありましたが、
生で使える鮮度で魚自体はいいものの、味はピークを過ぎている上、
色艶も漁獲当日と比べるとあせてしまっています。
だから、流通に乗ったキスを見ても、なかなか手が出ないのです。
キスを知り過ぎているが故の悲劇(?)です。
それに加え、塩と酢で締め更に昆布締めしたカスゴの握りと比べると、
キスの握りの人気は我が家では明らかに下だったことも、キスをあまり使わなかった理由の一つです。
もしも漁獲当日のキスを手に入れていたならば、我が家の定番ネタになったのではないかと思うのですが。
◆サヨリ (細魚)
こちらも伝統的な江戸前のすしネタです。
カスゴやキスを使わないすし店は多いですが、
一定レベル以上の東京のすし店で、サヨリを使わないところはないと思います。
産卵に向けて漁の多くなる春が流通のピークで、一般的にはその時期が旬とされますが、
一番美味しい時期は真冬から春先あたりまでです。
卵が大きくなると、身の味は落ちます。
秋深まる頃にはだいぶ身質が回復してくるため、秋から春にかけて長い期間使うすし店もあります。
サヨリは見た目に美しい魚ですが、泳いでいる姿も素敵です。
春になると東京湾内や河口付近でよく見かけましたが、
東京ディズニーランドのあたりを船で通った時に、
岸近くの上層を群れで泳ぐサヨリが一際美しかったのを、今でもはっきりと覚えています。
江戸前のすしでは、ウロコ・尻ビレ・背ビレ・腹ビレを取ってから、頭を落として腹開きし、
皮目を下にして中骨と腹骨をとります。(3枚おろしではなく、2枚おろしで、天ぷらの形になります。尾は切り落とします。)
カスゴやキスと同じく、光をとばさないよう塩水を使います。
腹ワタは汚く強い臭気を伴うため、腹を割いた時によく洗い、身につかないよう気をつけてください。
中骨が三角形なので、背の方を開いていく際には、包丁の角度に注意が必要です。
黒い膜は、腹骨と共に綺麗にとってください。
小さなものは骨抜きをしなくても、
身側に縦に(尾から頭のラインと平行に)包丁を何筋か入れる程度の処理で大丈夫ですが、
大きなサイズになると、骨抜きは必須です。
皮をむくときは、光をはがさないよう丁寧に。
サヨリは、淡白な白身のような魚ですが、かすかに青魚っぽさがあり、
そのまま仕事をせずにすしにされることはありません。
さよりのすしの代表的な仕込みは、次の通りです。
a. 強めに締め(塩締め→真水で洗う→酢洗い→酢締め)、皮はむかない
b. 軽めに締め(塩締め→真水で洗う→酢洗い→酢締め)、皮をむく
(塩で軽く締め、供する時に酢洗いするだけのすし店もあり)
c. たて塩で軽く洗うか、塩で軽く締めてから真水で洗い、皮をむく
d. 昆布締めし、皮をむく
酢に漬ける場合は、光がとばないよう、皮目が内側になるように折り、漬けた後は酢を絞ります。
すし店によっては、酢に砂糖を入れた甘酢を使います。
握る時は、ワサビと共におぼろが使われることもあります。(a・b・cの場合。aはおぼろが必須)
中には、代わりにショウガを使うすし店もあります。(cの場合)
aは伝統的な仕込みですが、現在はあまり行われていません。
主流はbとcで、より多いのはcです。
dの昆布締めは、日本料理では一般的ですが、江戸前のすしでは多くはありません。
よく使われるサイズは、小さ目の片身づけサイズ(片身で1カン)で、
飾りずしのように細工されることもありますが、
最も一般的なのは、皮を剥いてから光が表から見えるようにくるっと輪をつくって握るやり方で、私の好みもこれです。
輪の先端部分におぼろを載せると更に美しくなります。
脂のノリと甘味では、東京でカンヌキと呼ばれる大きなサイズの方が上です。
カンヌキを好んで使うすし店もあります。
私は上記以外にも色々と試しましたが、やはりbとcに落ち着きました。(つまみ用に昆布締めにすることもありました。)
おぼろを使っていた時期もありますが、上物を使えるようになってからは使いませんでした。
好んで使ったのは、富津・竹岡(東京湾)の釣りものです。
韓国産のものが多く出回っていて、若い頃に使ったことがありますが、全然ダメという感じです。
見栄えが抜群で、淡白ながら独特の美味しさのある魚ですが、我が家では、
bの場合、同時期に使うコハダ ・ カスゴ ・ マサバ ・ サワラ ・ マナガツオを塩と酢で締めたもの
cの場合、同時期に使うヒラメ ・ マダイ ・ オニオコゼ ・ ホウボウ等の白身の高級魚
と比べると人気がなく、段々と使わなくなってしまい、築地で仕入れることはありませんでした。
◆ニシン (鰊)
北海道のすし店でニシンの握りが出されていることは知っていましたが、
春先に築地のすし店で食べるまでは食べたことがありませんでした。
最近は、東京でもニシンを使うすし店が増えてきましたが、当時はほとんどなかったと思います。
出てきたすしは、生の小ぶりのニシン(大き目のマイワシくらいの大きさ)の皮を剥き、
ネタ表面に包丁目を入れ、ショウガではなくワサビを挟んで握ったものでしたが、
「これは使える!」 と思いました。
そのニシンの産地は石巻(宮城)で、
腹を開いてワタを出し、腹の中をよく洗って水気を拭いた後、身に食い込む小骨を竹串で起こして3枚に卸し、
内臓と接していた部分を包丁ですきとり、身に残った小骨は骨抜きで抜くとのことでした。
早速、翌週に築地場内で鮮度のいい石巻産の小ぶりのニシンを仕入れ、
同じ仕込みでワサビを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供してみたところ好評で、
以後、春先のちょっと変わったネタとして、何度か使いました。
私は試さなかったのですが、
他にショウガとアサツキを使ったもの、塩と酢で締めたもの、昆布締めしたもの等があります。
小骨を外す処理は、鮮度・脂のノリ・大きさ等により、やりやすかったり、やりにくかったりするかと思います。
竹串に固執せず、臨機応変に対処してください。
鮮度が落ちしやすい魚なので、マイワシと同じように保冷には充分に注意してください。
◆サンマ (秋刀魚)
今や東京の江戸前のすし店(主に大衆店)の定番に近いネタです。
我が家では、サンマの刺身が夕飯のおかずとして出てくるので、
あまり使いませんでしたが、簡単に触れておきます。
使ったのは、7・8月に北海道根室沖あたりで漁獲されるもの。
築地では仕入れませんでしたが、上物を扱う地元の鮮魚店で、上物を仕入れていました。
この時期・この場所で漁獲される上物は、秋の上物よりも美味しく、値段はずっと上です。
サンマは、マイワシと同じように使われますが、マイワシよりも若干バリエーションが豊富かと思います。
色々と試しましたが、生でショウガを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供する、
オーソドックスな握りに落ち着きました。(アサツキと共にショウガをネタの上に載せると、よりオーソドックスになります。)
ただ、ショウガ+煮切り醤油のマイワシ(東京湾の上物)の握りと比べると、かなり負けてしまう感じがしました。
◆キス (シロギス, 白鱚)
シロギス(以下、「キス」)は伝統的な江戸前のすしネタですが、
一部の老舗系のすし店以外では、長いことあまり使われませんでした。
最近は、若手・中堅の名店でもよく使われています。
子供の頃から、東京湾で陸からも船の上からもよく釣った魚で、とても愛着があります。
釣った数は、父の分と合わせれば、軽く1万匹を超えるでしょう。
身質がとても上品で、日本料理でもよく使われる魚です。
旬は春から初夏にかけてですが、夏の産卵期後、
秋深まる頃にはだいぶ身質が回復し流通量も増えてくるので、その時期にも使われます。
春から初夏と秋から初冬あたりがすし店で主に使われる次期です。
江戸前のすしでは、通常カスゴやマアジと同様に背開きで、天ぷらやアジフライのような形に卸します。
光をとばさないよう塩水を使うこと、
ならびに卸し方はカスゴと同じ(片身づけの場合、尻ビレを外す処理は無し)ですので、
カスゴのページを参考にしてください。
私は、尾は使わないので切り落としました。(一般的)
やや小さ目の片身づけサイズ(片身で1カン)が多く使われ、その場合は骨抜きを省略することもできますが、
大き目のキスを使う場合、骨抜きは必須となります。
私は、片身づけサイズでも、幅がありふっくらとしたものを主に使いましたので、
必ず骨を抜いていました。
キスのすしにも色々とありますが、私が好んだ仕込みは以下の通りです。
a. 塩と酢で締め、皮は引かずにワサビとおぼろを挟んで握り、煮切り醤油をつける伝統的なもの。
ただし、締め方は現代風に軽くしました。
伝統的な江戸前のすしでは色々なネタにおぼろが使われますが、この方法で仕込むキスは最も相性が良いと思います。
(仕込み)
塩で締める
→真水で洗う
→小骨を抜く
→皮目を内側に折り込んで酢洗い(酢+ミネラルウォ-ターの同割)し、
手のひらを合わせて酢をしぼり、ザルに上げ、ザルの下に皿を敷き、
ラップして冷蔵庫に入れる(皮目を内側に折ったまま)
→供する前に、皮目を折り込んでいたキスを開き、
身の表面が少し白っぽくなる程度に酢に漬け(5~10秒程度)、
皮を下にしてザルに上げ、キッチンペーパーで水気を拭き取る
→片身ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
b. 塩と酢で軽く締めてから昆布締めし、皮は引かずにワサビを挟んで握り、塩とかんきつ果汁をつけるもの。
昆布は主に真昆布を使いました。
(仕込み)
昆布を必要な大きさに切り、煮切り酒で拭き、ラップで包む
→塩で締める
→真水で洗う
→小骨を抜く
→皮目を内側に折り込んで酢洗い(酢+ミネラルウォ-ターの同割)し、
手のひらを合わせて酢をしぼり、ザルに上げ、しばらく置く(皮目を内側に折ったまま)
→皮目を内側に折り込んだまま酢にくぐらせ、手のひらを合わせて酢をしぼり、
別のザルに上げて下に皿を敷き、ラップして冷蔵庫に入れ酢を回す(皮目を内側に折ったまま)
→やわらかくなった昆布に、キスを開いて一枚一枚並べて昆布で挟み、ラップで包んで冷蔵庫に入れる
(昆布の香りがつきすぎないよう、途中で昆布をはずす)
→供する前に、片身ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
c. 塩を溶かした日本酒にキスをくぐらせ、皮を引き、ワサビを挟んで握り、塩をつけたもの。
片身で2カンとれる大型のキスを使いました。
(仕込み)
小骨を抜く
→供する前に、ボウルに塩と純米酒を入れて塩を溶かし、その中にキスをくぐらせる
→皮を下にしてザルに上げて水気を切り、キッチンペーパーで水気を拭き取る
→片身ずつに切り分け、皮を引き、尾に近い身は切り落とし、それぞれの片身を2カン分ずつに切り分ける
→適宜ネタ表に包丁目を入れる
でも、私はあまりキスを使いませんでした。
私と両親は、釣ったその日のうちに食べるキスの美味しさを、嫌というほど知っているからです。
キスは味が落ちていくのが早く、美味しさのピークは漁獲当日に来ます。
そして、翌日になると(増して翌日の夕食時になると)、比類ない上品な身質と味をだいぶ失ってしまいます。
その変化は、加熱調理されたものを食べる場合よりも、生食する場合に大きく感じます。
そのことを知っていて、キスを使わないすし職人もいると思います。
築地場内には、前日漁獲された東京湾や相模湾の釣りの上物もありましたが、
生で使える鮮度で魚自体はいいものの、味はピークを過ぎている上、
色艶も漁獲当日と比べるとあせてしまっています。
だから、流通に乗ったキスを見ても、なかなか手が出ないのです。
キスを知り過ぎているが故の悲劇(?)です。
それに加え、塩と酢で締め更に昆布締めしたカスゴの握りと比べると、
キスの握りの人気は我が家では明らかに下だったことも、キスをあまり使わなかった理由の一つです。
もしも漁獲当日のキスを手に入れていたならば、我が家の定番ネタになったのではないかと思うのですが。
◆サヨリ (細魚)
こちらも伝統的な江戸前のすしネタです。
カスゴやキスを使わないすし店は多いですが、
一定レベル以上の東京のすし店で、サヨリを使わないところはないと思います。
産卵に向けて漁の多くなる春が流通のピークで、一般的にはその時期が旬とされますが、
一番美味しい時期は真冬から春先あたりまでです。
卵が大きくなると、身の味は落ちます。
秋深まる頃にはだいぶ身質が回復してくるため、秋から春にかけて長い期間使うすし店もあります。
サヨリは見た目に美しい魚ですが、泳いでいる姿も素敵です。
春になると東京湾内や河口付近でよく見かけましたが、
東京ディズニーランドのあたりを船で通った時に、
岸近くの上層を群れで泳ぐサヨリが一際美しかったのを、今でもはっきりと覚えています。
江戸前のすしでは、ウロコ・尻ビレ・背ビレ・腹ビレを取ってから、頭を落として腹開きし、
皮目を下にして中骨と腹骨をとります。(3枚おろしではなく、2枚おろしで、天ぷらの形になります。尾は切り落とします。)
カスゴやキスと同じく、光をとばさないよう塩水を使います。
腹ワタは汚く強い臭気を伴うため、腹を割いた時によく洗い、身につかないよう気をつけてください。
中骨が三角形なので、背の方を開いていく際には、包丁の角度に注意が必要です。
黒い膜は、腹骨と共に綺麗にとってください。
小さなものは骨抜きをしなくても、
身側に縦に(尾から頭のラインと平行に)包丁を何筋か入れる程度の処理で大丈夫ですが、
大きなサイズになると、骨抜きは必須です。
皮をむくときは、光をはがさないよう丁寧に。
サヨリは、淡白な白身のような魚ですが、かすかに青魚っぽさがあり、
そのまま仕事をせずにすしにされることはありません。
さよりのすしの代表的な仕込みは、次の通りです。
a. 強めに締め(塩締め→真水で洗う→酢洗い→酢締め)、皮はむかない
b. 軽めに締め(塩締め→真水で洗う→酢洗い→酢締め)、皮をむく
(塩で軽く締め、供する時に酢洗いするだけのすし店もあり)
c. たて塩で軽く洗うか、塩で軽く締めてから真水で洗い、皮をむく
d. 昆布締めし、皮をむく
酢に漬ける場合は、光がとばないよう、皮目が内側になるように折り、漬けた後は酢を絞ります。
すし店によっては、酢に砂糖を入れた甘酢を使います。
握る時は、ワサビと共におぼろが使われることもあります。(a・b・cの場合。aはおぼろが必須)
中には、代わりにショウガを使うすし店もあります。(cの場合)
aは伝統的な仕込みですが、現在はあまり行われていません。
主流はbとcで、より多いのはcです。
dの昆布締めは、日本料理では一般的ですが、江戸前のすしでは多くはありません。
よく使われるサイズは、小さ目の片身づけサイズ(片身で1カン)で、
飾りずしのように細工されることもありますが、
最も一般的なのは、皮を剥いてから光が表から見えるようにくるっと輪をつくって握るやり方で、私の好みもこれです。
輪の先端部分におぼろを載せると更に美しくなります。
脂のノリと甘味では、東京でカンヌキと呼ばれる大きなサイズの方が上です。
カンヌキを好んで使うすし店もあります。
私は上記以外にも色々と試しましたが、やはりbとcに落ち着きました。(つまみ用に昆布締めにすることもありました。)
おぼろを使っていた時期もありますが、上物を使えるようになってからは使いませんでした。
好んで使ったのは、富津・竹岡(東京湾)の釣りものです。
韓国産のものが多く出回っていて、若い頃に使ったことがありますが、全然ダメという感じです。
見栄えが抜群で、淡白ながら独特の美味しさのある魚ですが、我が家では、
bの場合、同時期に使うコハダ ・ カスゴ ・ マサバ ・ サワラ ・ マナガツオを塩と酢で締めたもの
cの場合、同時期に使うヒラメ ・ マダイ ・ オニオコゼ ・ ホウボウ等の白身の高級魚
と比べると人気がなく、段々と使わなくなってしまい、築地で仕入れることはありませんでした。
◆ニシン (鰊)
北海道のすし店でニシンの握りが出されていることは知っていましたが、
春先に築地のすし店で食べるまでは食べたことがありませんでした。
最近は、東京でもニシンを使うすし店が増えてきましたが、当時はほとんどなかったと思います。
出てきたすしは、生の小ぶりのニシン(大き目のマイワシくらいの大きさ)の皮を剥き、
ネタ表面に包丁目を入れ、ショウガではなくワサビを挟んで握ったものでしたが、
「これは使える!」 と思いました。
そのニシンの産地は石巻(宮城)で、
腹を開いてワタを出し、腹の中をよく洗って水気を拭いた後、身に食い込む小骨を竹串で起こして3枚に卸し、
内臓と接していた部分を包丁ですきとり、身に残った小骨は骨抜きで抜くとのことでした。
早速、翌週に築地場内で鮮度のいい石巻産の小ぶりのニシンを仕入れ、
同じ仕込みでワサビを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供してみたところ好評で、
以後、春先のちょっと変わったネタとして、何度か使いました。
私は試さなかったのですが、
他にショウガとアサツキを使ったもの、塩と酢で締めたもの、昆布締めしたもの等があります。
小骨を外す処理は、鮮度・脂のノリ・大きさ等により、やりやすかったり、やりにくかったりするかと思います。
竹串に固執せず、臨機応変に対処してください。
鮮度が落ちしやすい魚なので、マイワシと同じように保冷には充分に注意してください。
◆サンマ (秋刀魚)
今や東京の江戸前のすし店(主に大衆店)の定番に近いネタです。
我が家では、サンマの刺身が夕飯のおかずとして出てくるので、
あまり使いませんでしたが、簡単に触れておきます。
使ったのは、7・8月に北海道根室沖あたりで漁獲されるもの。
築地では仕入れませんでしたが、上物を扱う地元の鮮魚店で、上物を仕入れていました。
この時期・この場所で漁獲される上物は、秋の上物よりも美味しく、値段はずっと上です。
サンマは、マイワシと同じように使われますが、マイワシよりも若干バリエーションが豊富かと思います。
色々と試しましたが、生でショウガを挟んで握り、煮切り醤油をつけて供する、
オーソドックスな握りに落ち着きました。(アサツキと共にショウガをネタの上に載せると、よりオーソドックスになります。)
ただ、ショウガ+煮切り醤油のマイワシ(東京湾の上物)の握りと比べると、かなり負けてしまう感じがしました。