ホシガレイ (星鰈) hoshigarei edomae
Mar 28, 2015 17:35:05 GMT 9
Post by 管理人 on Mar 28, 2015 17:35:05 GMT 9
ホシガレイ (星鰈) は、マダイよりもヒラメよりも、ずっと高価な白身の最高級魚です。
そして、良いものを手に入れるのが、とても難しい魚です。
すしや日本料理の高級店でホシガレイを食べて、味気ないと感じる人がとても多いようです。
一方で、それを肯定的にとらえ、ホシガレイの味を、
「透明な味わい」、「深い無味の味わい」などと表現する料理人や評論家もいます。
私も、高級すし店で、味気ないホシガレイを何度も食べたことがあります。
一方で、料理人時代、幸いにも本当に美味しいホシガレイを扱っていましたので、
ホシガレイの真味を理解しているつもりです。
ホシガレイはとても淡白な魚ですが、本当に良いものは上品で素敵な甘味・風味のある魚で、
その味わいは不明確なものではありません。
では、なぜ味気ないホシガレイが多く出回っているのか。
私は、その理由を以下のように考えています。
①活けでの出荷ならびに出荷調整
活魚は、時間をかけて市場に運ばれている間に、必ず味と香りを落とします。
最も顕著なのが、甘味の減少もしくは喪失です。
ホシガレイは、生け簀で激しく動き回る魚ではありませんが、味がとても淡白なので、この影響は大きいです。
さらに、狂乱相場を狙って、産地の生け簀で何日も生かされる場合があります。
例えば、大型の活けのホシガレイ3枚を一度に手に入れた産地荷受けが、
日を置きながら一枚ずつ出荷するようなこともあるわけです。
活けで送るだけでも味が落ちるのに、これではホシガレイの味は消えてしまいます。
理想的なのは、産地で活け締めされたものを当日便で送ってもらうことですが、
めったに獲れない魚だけに、一部の料理店のように、いくつもの産地との太いパイプがなければ難しいでしょう。
②美味しさのピークと漁獲時期がずれている。
ホシガレイは、味わいに欠ける小型 ・ 中型は評価が低く、
大型の活け物のみ(ホシガレイは活けでなければ真価が発揮されません)が上物とされます。
そして、大型のホシガレイは全てメスです。
産卵期は場所により多少のずれはありますが、概ね12~2月で、ピークは1月に入ってからです。
産卵後、春から夏は浅場に集まり、夏を過ぎるとほとんどが深場に移ります。
春から夏は漁獲量が多く、主に刺し網や定置網で漁獲されるため、活けでの流通もこの時期が最も多くなります。
築地場内を例に挙げると、活けのホシガレイの入荷は、
産卵期の真冬からポツポツと始まり、春から初夏にかけて増え、数を減らしながら真夏にも入荷し、
その後はほとんどなくなります。
4月下旬くらいから身肉がだいぶ回復し、5~8月頃には身が厚く堂々とした大型のものが出てきます。
一般的には、この産卵後の成長期がホシガレイの旬とされています。
(ホシガレイの旬がいつかについては、プロの間でも意見が分かれます。この魚の難しさを象徴していると思います。)
私の経験では、夏場は良いものもあるのですが、ハズレも多いです。
魚体は大きくなっても、身が熟していないものが多いように思います。
特に上物サイズ(=大型)にハズレが多いのは、熟すまでにより時間を要するからでしょう。
ですから、私の中では、夏場のホシガレイは旬のはしりという感じです。
私が思うホシガレイの旬は、産卵期前の秋深まる頃で、なおかつ卵が大きくなる前のほんの一時です。
秋に、卵の小さい活けの上物サイズを使ったことのある料理人は、あまり多くはないでしょう。
ですから、秋を旬とする料理人は少数で、大抵は夏か春か冬が旬と主張します。
ホシガレイはもともと漁獲量が少ない上に、秋は特に少なく、
深場での底引き網漁が主体となるため水揚げ時に死んだり傷ついたりすることも多く、活けの大型はごく少数になります。
また、「子持ち」であるが故に評価が低く、流通先は限られます。
他の魚、例えばマダイは産卵期前の真冬が最も美味しい時期で、漁獲量は少ないものの、
それなりの量、活けの上物が流通します。
ところが、ホシガレイの場合、そうはいかないのです。
③ニーズ
東京の高級すし店を例に挙げると、
ホシガレイは、ヒラメ ・ マダイの味が落ちる春から夏にかけて、マコガレイと共に多く使われます。
春から夏は、淡白な白身の高級魚の多くが最悪の時期となりますし、
この時期にホシガレイを使うのが高級店の証のような風潮がありますので、競ってホシガレイを使うことになります。
6月くらいから、江戸前の伝統的な白身ネタ(タネ)のスズキが良くなってきますが、
特有の匂いがあるため嫌う人が多く、しかも高級感に欠けるためか、使わないすし店が多くなりました。
スズキの代わりにイサキを使うすし店が増えましたが、やはり高級感に欠けるためか、高級店ではあまり見かけません。
このように使う側の強いニーズもあり、春から夏、ホシガレイの活けの大型の相場は異常なほど高騰し、
逆に秋から冬にかけては、他の白身の高級魚が良化することもあり、
活けの上物があったとしても、「子持ち」の時期でもあり相場は低くなります。
産地の荷受けとしては、わざわざお金をかけて、評価されないニーズの低い市場に活けで送るよりも、
手堅くしかも高く売れるごく一部の高級料理店へ、活け締めしたものを直送する方を選ぶことになります。
そのごく一部の高級料理店の一料理人として、私はとても味わい深いホシガレイを何度も扱うことができました。
ホシガレイを食べ慣れたお客さん達も皆、秋のホシガレイは脂も甘味もあって一番美味しいとおっしゃっていました。
④放流物の流通
あまりの漁獲量の少なさ故に、
他の希少魚種と同様、各地で卵から育てたホシガレイの稚魚が盛んに放流されるようになりました。
このホシガレイの稚魚の移動範囲はあまり広くないため、海で成長したものが、産地によっては高い確率で漁獲されます。
どことは言いませんが、あるかつての名産地で漁獲されるホシガレイのほとんどが放流物であることも確認されています。
つまり、純天然物ではないホシガレイがかなり多く流通しているわけです。
放流物は異常が発生しやすく、特に体色異常の発生率は高く、
目の無い側(海底に接する側)に、目の有る側と同じような色のウロコが発生したりします。
築地場内のいくつもの仲卸しでホシガレイを見せていただいた時に、体色異常のホシガレイを何度も目にしました。
体色異常のホシガレイを使ったことはないのでよく分かりませんが、
味覚の点でも、純天然物とは異なるという話はよく聞きます。
また、異常がなくても、放流物と純天然物では味覚上相違があるとも聞きます。
放流物と純天然物の味覚上の違いを自分自身で比較した経験がないので、
あくまでも仮説ですが、放流物のホシガレイを食べて、ネガティブな印象を持つ人が多くなった可能性があります。
上記の通り、ホシガレイはとにかく難しい魚です。
下手に手を出すと痛い目に合いますので、気をつけてください。
1.仕入れ(築地場内)
ホシガレイの美味しいサイズは、1.8~3キロくらいで身が分厚いものです。
狙うは、純天然の活け物。
築地場内では、現実的な入荷時期である真冬から夏の間に出回るものの中から、選別していくことになります。
初夏からは、肉付きの良い大型もあります。
放流物は、体色異常が多いことに加え、目の位置が逆になるものもあります。(純天然物にも稀にあり)
放流物に共通する特徴は、ヒレにある黒くて丸い紋が純天然物に比べると不鮮明なことです。
(お世話になった仲卸しのご主人による目利きのポイント)
出荷調整を完全に見抜くのは、魚のプロでも難しいです。
築地場内のような市場では、トップクラスの仲卸しで、活魚の目利きに優れ、情報通で、信頼関係の出来た方に、
具体的な条件(値段は相場の数倍を提示。使いたいホシガレイのレベルも具体的に説明し、
それに見合うものがなければいらないことも伝える。)を提示して、オマカセするのが一番だと思います。
条件に見合うホシガレイがあれば、きっと競り落としてくださるでしょう。
当然、その日築地で一番のホシガレイです。
それでも、はずれる時ははずれます。T__T
ホシガレイによく似た魚にマツカワ(マツカワガレイ)があります。
マツカワも美味しい魚ですが、ホシガレイとは値段の格が違います。
間違えたり騙されたりしないよう、気をつけてください。
2.供し方
ホシガレイは、ヒラメと同じようにコケを引いてから(包丁で両面のウロコを切り取る)、5枚おろしにして使います。
身がしっかりしていますので、
大きなサイズの上物ならば、活け締め当日だけでなく翌日も余裕で活けの身質を保ちます。
当然、翌日は旨味が増します。(当日食べて味がなければ、翌日も味はありませんが。)
また、ヒラメ同様エンガワも美味しく食べられます。
脂と甘味のある素晴らしいホシガレイが手に入ったら、ぜひワサビと醤油で食べてください。
握りもあり得ますが、ちょっともったいないかなと思います。
不運にもはずしてしまった場合は、オニオコゼやフグのように薄造りにして、ポン酢で食べてください。
夏ならば洗いもいいでしょう。
共に定番の食べ方です。
あなたが、“当たり” のホシガレイを使えることを願います。
そして、良いものを手に入れるのが、とても難しい魚です。
すしや日本料理の高級店でホシガレイを食べて、味気ないと感じる人がとても多いようです。
一方で、それを肯定的にとらえ、ホシガレイの味を、
「透明な味わい」、「深い無味の味わい」などと表現する料理人や評論家もいます。
私も、高級すし店で、味気ないホシガレイを何度も食べたことがあります。
一方で、料理人時代、幸いにも本当に美味しいホシガレイを扱っていましたので、
ホシガレイの真味を理解しているつもりです。
ホシガレイはとても淡白な魚ですが、本当に良いものは上品で素敵な甘味・風味のある魚で、
その味わいは不明確なものではありません。
では、なぜ味気ないホシガレイが多く出回っているのか。
私は、その理由を以下のように考えています。
①活けでの出荷ならびに出荷調整
活魚は、時間をかけて市場に運ばれている間に、必ず味と香りを落とします。
最も顕著なのが、甘味の減少もしくは喪失です。
ホシガレイは、生け簀で激しく動き回る魚ではありませんが、味がとても淡白なので、この影響は大きいです。
さらに、狂乱相場を狙って、産地の生け簀で何日も生かされる場合があります。
例えば、大型の活けのホシガレイ3枚を一度に手に入れた産地荷受けが、
日を置きながら一枚ずつ出荷するようなこともあるわけです。
活けで送るだけでも味が落ちるのに、これではホシガレイの味は消えてしまいます。
理想的なのは、産地で活け締めされたものを当日便で送ってもらうことですが、
めったに獲れない魚だけに、一部の料理店のように、いくつもの産地との太いパイプがなければ難しいでしょう。
②美味しさのピークと漁獲時期がずれている。
ホシガレイは、味わいに欠ける小型 ・ 中型は評価が低く、
大型の活け物のみ(ホシガレイは活けでなければ真価が発揮されません)が上物とされます。
そして、大型のホシガレイは全てメスです。
産卵期は場所により多少のずれはありますが、概ね12~2月で、ピークは1月に入ってからです。
産卵後、春から夏は浅場に集まり、夏を過ぎるとほとんどが深場に移ります。
春から夏は漁獲量が多く、主に刺し網や定置網で漁獲されるため、活けでの流通もこの時期が最も多くなります。
築地場内を例に挙げると、活けのホシガレイの入荷は、
産卵期の真冬からポツポツと始まり、春から初夏にかけて増え、数を減らしながら真夏にも入荷し、
その後はほとんどなくなります。
4月下旬くらいから身肉がだいぶ回復し、5~8月頃には身が厚く堂々とした大型のものが出てきます。
一般的には、この産卵後の成長期がホシガレイの旬とされています。
(ホシガレイの旬がいつかについては、プロの間でも意見が分かれます。この魚の難しさを象徴していると思います。)
私の経験では、夏場は良いものもあるのですが、ハズレも多いです。
魚体は大きくなっても、身が熟していないものが多いように思います。
特に上物サイズ(=大型)にハズレが多いのは、熟すまでにより時間を要するからでしょう。
ですから、私の中では、夏場のホシガレイは旬のはしりという感じです。
私が思うホシガレイの旬は、産卵期前の秋深まる頃で、なおかつ卵が大きくなる前のほんの一時です。
秋に、卵の小さい活けの上物サイズを使ったことのある料理人は、あまり多くはないでしょう。
ですから、秋を旬とする料理人は少数で、大抵は夏か春か冬が旬と主張します。
ホシガレイはもともと漁獲量が少ない上に、秋は特に少なく、
深場での底引き網漁が主体となるため水揚げ時に死んだり傷ついたりすることも多く、活けの大型はごく少数になります。
また、「子持ち」であるが故に評価が低く、流通先は限られます。
他の魚、例えばマダイは産卵期前の真冬が最も美味しい時期で、漁獲量は少ないものの、
それなりの量、活けの上物が流通します。
ところが、ホシガレイの場合、そうはいかないのです。
③ニーズ
東京の高級すし店を例に挙げると、
ホシガレイは、ヒラメ ・ マダイの味が落ちる春から夏にかけて、マコガレイと共に多く使われます。
春から夏は、淡白な白身の高級魚の多くが最悪の時期となりますし、
この時期にホシガレイを使うのが高級店の証のような風潮がありますので、競ってホシガレイを使うことになります。
6月くらいから、江戸前の伝統的な白身ネタ(タネ)のスズキが良くなってきますが、
特有の匂いがあるため嫌う人が多く、しかも高級感に欠けるためか、使わないすし店が多くなりました。
スズキの代わりにイサキを使うすし店が増えましたが、やはり高級感に欠けるためか、高級店ではあまり見かけません。
このように使う側の強いニーズもあり、春から夏、ホシガレイの活けの大型の相場は異常なほど高騰し、
逆に秋から冬にかけては、他の白身の高級魚が良化することもあり、
活けの上物があったとしても、「子持ち」の時期でもあり相場は低くなります。
産地の荷受けとしては、わざわざお金をかけて、評価されないニーズの低い市場に活けで送るよりも、
手堅くしかも高く売れるごく一部の高級料理店へ、活け締めしたものを直送する方を選ぶことになります。
そのごく一部の高級料理店の一料理人として、私はとても味わい深いホシガレイを何度も扱うことができました。
ホシガレイを食べ慣れたお客さん達も皆、秋のホシガレイは脂も甘味もあって一番美味しいとおっしゃっていました。
④放流物の流通
あまりの漁獲量の少なさ故に、
他の希少魚種と同様、各地で卵から育てたホシガレイの稚魚が盛んに放流されるようになりました。
このホシガレイの稚魚の移動範囲はあまり広くないため、海で成長したものが、産地によっては高い確率で漁獲されます。
どことは言いませんが、あるかつての名産地で漁獲されるホシガレイのほとんどが放流物であることも確認されています。
つまり、純天然物ではないホシガレイがかなり多く流通しているわけです。
放流物は異常が発生しやすく、特に体色異常の発生率は高く、
目の無い側(海底に接する側)に、目の有る側と同じような色のウロコが発生したりします。
築地場内のいくつもの仲卸しでホシガレイを見せていただいた時に、体色異常のホシガレイを何度も目にしました。
体色異常のホシガレイを使ったことはないのでよく分かりませんが、
味覚の点でも、純天然物とは異なるという話はよく聞きます。
また、異常がなくても、放流物と純天然物では味覚上相違があるとも聞きます。
放流物と純天然物の味覚上の違いを自分自身で比較した経験がないので、
あくまでも仮説ですが、放流物のホシガレイを食べて、ネガティブな印象を持つ人が多くなった可能性があります。
上記の通り、ホシガレイはとにかく難しい魚です。
下手に手を出すと痛い目に合いますので、気をつけてください。
1.仕入れ(築地場内)
ホシガレイの美味しいサイズは、1.8~3キロくらいで身が分厚いものです。
狙うは、純天然の活け物。
築地場内では、現実的な入荷時期である真冬から夏の間に出回るものの中から、選別していくことになります。
初夏からは、肉付きの良い大型もあります。
放流物は、体色異常が多いことに加え、目の位置が逆になるものもあります。(純天然物にも稀にあり)
放流物に共通する特徴は、ヒレにある黒くて丸い紋が純天然物に比べると不鮮明なことです。
(お世話になった仲卸しのご主人による目利きのポイント)
出荷調整を完全に見抜くのは、魚のプロでも難しいです。
築地場内のような市場では、トップクラスの仲卸しで、活魚の目利きに優れ、情報通で、信頼関係の出来た方に、
具体的な条件(値段は相場の数倍を提示。使いたいホシガレイのレベルも具体的に説明し、
それに見合うものがなければいらないことも伝える。)を提示して、オマカセするのが一番だと思います。
条件に見合うホシガレイがあれば、きっと競り落としてくださるでしょう。
当然、その日築地で一番のホシガレイです。
それでも、はずれる時ははずれます。T__T
ホシガレイによく似た魚にマツカワ(マツカワガレイ)があります。
マツカワも美味しい魚ですが、ホシガレイとは値段の格が違います。
間違えたり騙されたりしないよう、気をつけてください。
2.供し方
ホシガレイは、ヒラメと同じようにコケを引いてから(包丁で両面のウロコを切り取る)、5枚おろしにして使います。
身がしっかりしていますので、
大きなサイズの上物ならば、活け締め当日だけでなく翌日も余裕で活けの身質を保ちます。
当然、翌日は旨味が増します。(当日食べて味がなければ、翌日も味はありませんが。)
また、ヒラメ同様エンガワも美味しく食べられます。
脂と甘味のある素晴らしいホシガレイが手に入ったら、ぜひワサビと醤油で食べてください。
握りもあり得ますが、ちょっともったいないかなと思います。
不運にもはずしてしまった場合は、オニオコゼやフグのように薄造りにして、ポン酢で食べてください。
夏ならば洗いもいいでしょう。
共に定番の食べ方です。
あなたが、“当たり” のホシガレイを使えることを願います。