玉子焼き (玉, 卵焼き), レシピ tamagoyaki gyoku recipe edomae
Jun 13, 2015 16:22:30 GMT 9
Post by 管理人 on Jun 13, 2015 16:22:30 GMT 9
江戸前のすしでは、卵焼きを「玉子焼き」又は「玉(ぎょく)」と称するのが普通です。
東京の江戸前のすし店の玉子焼きの材料は、概ね以下のように分類できると思います。(混合型もあります。)
a.卵+ダシ+調味料
b. 卵+ダシ+調味料+具 (クルマエビ ・ アナゴ ・ ウニ ・ 小柱 ・ ミツバ 等)
c. 卵+調味料
d. 卵+調味料+すり身 (シバエビ ・ 小さいクルマエビ ・ シロエビ ・ 淡白な白身魚 ・ 小柱 等)又はおぼろ
e. 卵+調味料+すり身 (シバエビ ・ 小さいクルマエビ ・ シロエビ ・ 淡白な白身魚 ・ 小柱 等)
+イチョウイモ(関東での呼称は大和イモ)又はツクネイモ ※イチョウイモが圧倒的に多い。
aとbは普通巻いて焼かれ、c ・ d ・ eは普通巻かずに焼かれます。
最も多いのはaで、いわゆる関東風の甘いダシ巻き卵です。(巻かずに薄焼きにするすし店も稀にあります。)
名店のほとんどは、伝統的なd又はeです。
江戸前のすしの世界では、狭義には、すり身を入れて巻かずに焼く、
伝統的なもののみを玉(ぎょく)と呼ぶようです。
私がここで紹介するのもdとeです。
dは薄焼き、eは厚焼きにするのが普通です。
より多いのはeで、高級店のほとんどはeです。
dは江戸時代又は明治初期から続く老舗やその出身者の店に多いようです。
多くのすし店でdとeの玉子焼きを食べ、自分でも何度も試ましたが、
すしネタ(タネ)として私が評価するのはdの薄焼きです。
dは、シャリとの相性がとても良く、自分好みの味にして握ると、とても美味しくなります。
玉子焼きだけで食べるよりも、シャリと合わせた方が断然美味しいと思います。
反面eは、あまり言われないことですが、そのまま食べるととても美味しいのに、
握るとシャリとの相性があまり良くないため、美味しさが半減してしまいます。
イチョウイモ(又はツクネイモ)のせいです。
eの玉子焼きを出すすし店で、“オマカセ”で食べると握られず、
“オコノミ”で注文すると「握りますか?」と必ず聞かれるのは、お客の多くが握らない方を好むことに加え、
すし店側でもシャリとあまり相性が良くないことを自覚しているのが本当の理由だと思います。
eの玉子焼きをあえてすしにするならば、シャリに具を混ぜ、
そのシャリを玉子焼きで巻く昔風のやり方の方が良いと思います。
私は、dの玉子焼きはすしネタ、eの玉子焼きはおかず(正月のおせち料理等)として区別しました。
1.仕入れ
色々と試しましたが、私はすり身にはシバエビだけを使ったものが一番好きです。
シバエビは柔らかく味がいいので、シバエビだけを使う名店も多いです。
シバエビと鶏卵について、簡単に触れます。
◆シバエビ
特にdの玉子焼きの場合、すり身を多めにして焼くと、
焼いている時(菜箸でひっくり返す場合)や握る時に玉子焼きがパキッと割れやすくなります。
でも、小さ目のシバエビを使うと割れにくくなります。
小さい方が加熱してもより柔らかいからです。
ですから、特に慣れないうちは小さ目を使うことをオススメします。
その他、シバエビの仕入れについては、おぼろ (シバエビのおぼろ)のページをご確認ください。
◆鶏卵
すし店では、卵にあまりお金をかけていないところが多いようですが、良いものを使った方が当然美味しくなります。
私が選んだ卵に共通するのは、次の点です。
・抗生物質やワクチン等の薬物を一切使用していない
・自由に歩きまわれる環境で育った地鶏が生んだ有精卵
・味と香りが濃厚で秀でている
・粘りが強い
・黄身の色が濃い、ただしビタミンE剤等の薬剤を与えていない ← 綺麗な色に仕上がる
・生産者が明らか
・新鮮
地元の有機食材を扱う店に、全ての条件を満たす、とてもすばらしいものがあったので、そこで仕入れていました。
ちなみに、築地ではそのような卵は見つかりませんでした。
2.仕込み
dとeの玉子焼きを作るにあたっては、使う鍋がとても重要です。
江戸前のすし店で使われるのは、銅製又は鉄製で、鍋よりも一回り小さい木蓋が付いた、真四角の専用鍋です。
江戸前のすし店では、
dの場合、銅製で高さの低い鍋を使い、途中菜箸でひっくり返して焼きます。
(高さが低いことに加え、幅のある鍋でないと出来ない。)
eの場合、銅製又は鉄製の鍋で、いずれかの方法で焼きます。
・途中菜箸でひっくり返して焼く。(高さが低いことに加え、幅のある鍋でないと出来ない。)
・ひっくり返さず、炭火・オーブンなどの上火も使って焼く。
・2つの鍋で、それぞれ下火で焼き、ある程度焼けてから、2つを合体させて更に焼く。
凝り性の私は、d用に銅製、e用に鉄製の、高さが低く幅のある江戸前のすし店が使う専用鍋を手に入れ、
途中菜箸を鍋と玉子焼きの間に入れてひっくり返して焼きました。(dでシバエビを多く使う場合は、上火も使いました。)
私の場合、プロ仕様の大きなガスコンロが自宅にあるので問題ありませんでしたが、
一般家庭のガスコンロに合うサイズの鍋ではありません。
特に熱伝導率の低い鉄製のものは、一般家庭のガスコンロには全く合いません。
江戸前のすし店が使う専用鍋を手に入れる前は、
木蓋付きで高さのある銅製の鍋で、上火も使ってdもeも焼いていました。
家庭では、フッ素樹脂加工されたダシ巻き用の鍋が一般的だと思いますが、これだと上火は使えません。
綺麗に焼け、ひっくり返すことができる構造になっているか、上火を使えるものがあれば、それを使ってください。
ケーキを焼く時に使う焼き型で、最初からオーブンで焼いてもいいかもしれません。
他には、ホットプレート等、ホットケーキを綺麗に焼くことができる類のものならば、
型などを使えば割とうまくいくかもしれません。
【レシピ】
銅鍋(柄を外すことができる)で、上火も使って焼く方法を紹介します。
他の鍋で作る場合も参考になると思います。
材料(特にシバエビ ・ 鶏卵 ・ eの場合はイチョウイモも)の質によっては、
それぞれの分量を大きく変えなければなりません。
何度か作ってみて、適した生地の状態を把握してください。
下記はdのレシピですが、eに必要なことは茶色の字で書いています。
(材料)
・シバエビ 適量 (割った卵と、剥いたシバエビの体積は同じくらい。私はそれよりも若干多めにシバエビを使うことが多かったです。)
・鶏卵 適量 (同上)
・造りの良いコクのある純本ミリン 適量
・砂糖 適量
・塩(精製塩不可) 適量
・造りの良い濃口醤油(香りは控えめで色の明るいもの) 適量
・植物油(軽く酸化安定性に優れたもの) 適量
・eの場合のみ、イチョウイモ(関東での呼称は大和イモ) 適量(割った卵と、イチョウイモの体積は同じくらい)
※ちなみに、
dの場合、シバエビを少なめにした方が握るのが簡単です。(割れにくい)
eの場合、イチョウイモを多めにした方が失敗しにくいです。
また、巻き簾で巻いて伊達巻のようにするならば、イチョウイモを多くした方が、
割れることなく上手くいきます。
ただし、いずれも味わいは変わってしまいます。
①冷やした塩水でシバエビをざっと洗って表面の汚れとヌメリを落とし、
ザルに上げて水を切り、キッチンペーパー等で水気をとります。
②シバエビの頭・殻・尾を外し、身だけにします。(ミソは使いません。)
③つまようじ等を使ってシバエビの背ワタをとります。
④純本ミリンを鍋で煮切り、冷まします。
⑤シバエビを裏ごしし、すり鉢(当たり鉢)に入れます。 ※すし店によっては、シバエビを軽く茹でてからすり身にします。
eの場合、ここでイチョウイモを擦りおろし、シバエビと合わせ、
すりこ木で非常に丹念にあたり、強いコシと粘りを出します。
ここで手を抜くと、失敗します。
⑥砂糖と少量の塩を加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。
味見して、砂糖と塩の量を決めてください。
この後の味付けもそうなのですが、すしにする場合は、握った時のシャリの量と玉子焼きの厚さを考えて
それに相応しい味付けをしてください。
⑦煮切って冷えた純本ミリンを加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。 ※ミリンと共に日本酒を加えるすし店も多いです。
⑧鶏卵を割り、少しずつすり鉢に加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。
鶏卵の状態(水っぽさや黄身と白身の割合)により、加える量を調整してください。
生地には一定レベルの粘りと黄色い色が必要です。
eの場合は、ホットケーキの生地のように、かなりどろっとした感じになります。
※dの場合、鶏卵を入れてから、
すりこ木ではなく菜箸等で空気を含ませながら軽めに混ぜ合わせるのが普通で、
その方が菜箸でひっくり返して焼く場合やり易いのですが、
上火も使って焼く場合は、あえてすりこ木でよく混ぜ合わせました。
※卵の白身の一部を泡立てて、メレンゲにして加える店もあります。
オススメではありませんが、メレンゲを入れると、よく膨らみます。
ただし、たくさん入れると、シバエビ風味のスポンジケーキ(笑)のようになってしまいますので、
もしも使うならば極少量にしてください。
⑨濃口醤油を少量入れて味見し、味を修正し、すりこ木でよく混ぜ合わせます。 ※色が悪くならないよう注意。
濃口醤油の代わりに薄口醤油を使っても、醤油を一切加えなくてもかまいません。
醤油を加えない場合は、⑥で塩を少し多めにしてください。
eの場合、私はすしにしないので、醤油は加えませんでした。加えないすし店も多いです。
⑩銅鍋を熱し、植物油をたっぷり入れて、しばらく熱します。
⑪熱くなってきたら植物油を空け、鍋を適温まで冷まします。
この時に、鍋に手をかざすか、鍋を顔に近づけて“適温”を覚えてください。
“熱い”と“温かい”の間という感じ(笑)です。
この後に弱火で焼いていくのですが、鍋に植物油をよくなじませ、適温まで温度を上げておけば、
鍋にくっついて失敗するのを防ぐことができます。
ただし、温度を上げ過ぎると、焦げやすく(又は焼き過ぎに)なりがちです。
⑫鍋を弱火にかけ、植物油を少量加え、
菜箸と脱脂綿(キッチンペーパー等でも可)を使って鍋全体(四辺の縁を含む)に薄い植物油の膜ができるようにします。
⑬鍋に生地を入れ、鍋を軽くゆすって平らにします。火は弱火です。
この時に、玉子焼きの厚さが決まりますので、好みの高さにしてください。
私は、dの場合は、鍋底から6~7ミリくらいの高さまで入れました。(焼き上がると若干厚みが増します。)
eの場合、私は2センチくらいの高さまで入れました。(焼き上がるとかなり厚みが増します。)
eの場合、火加減は極弱火です。
⑭気泡が出てきたら竹串等で一つ一つつぶします。
⑮底面に好みの焼き色がつくであろう頃に、
玉子焼きの四辺の縁のまわりを竹串を自転させながらくるっと1周させ、
鍋から玉子焼きの縁を離します。(その後再び鍋にくっつきます。)
底面の焼き色は、四辺の縁よりも濃いことに留意してください。
※この時点で、一度この処理をしておくと、焼き具合を確認することができますし、
後で玉子焼きが鍋からきれいに離せないということがありません。
⑯上火で焼きます。
私は、次の4つを試してみました。
・オーブンのグリル機能(上火)
・オーブンのオーブン機能(上火)
・ガスコンロに付属しているグリル(魚を焼く部分)
・焼き網に備長炭を載せ、鍋の上で近づけたり遠ざけたりしながら焼く。
最終的には、綺麗に焼け、熱をコントロールしやすいオーブンのグリル機能に落ち着きました。
予めオーブンを300℃で20分くらい温めて置き、鍋ごとオーブンに入れ、
300℃のグリルで回転させながら焼き、
好みの焼き色が付いても(dの場合、焼き色は付けなくても可)まだ火が通っていない場合は、
鍋にアルミホイルを被せて火を通します。
eの場合、温度は250℃くらいにしました。
※オーブンの機種により、必要な温度や時間は変わります。
⑰ほどよく焼けたら、再度、竹串で玉子焼きの四辺の縁のまわりを竹串を自転させながらくるっと1周させ、
玉子焼きを鍋から離します。
⑱玉子焼きの上に木蓋を載せ、鍋を上、木蓋を下にして、玉子焼きを木蓋に載せ、
上火で焼いていた玉子焼きの面が下になるよう鍋に移し、玉子焼きの上から木蓋を載せて軽く押し、
余分な空気を抜きます。(木蓋がなければ他のもので代用してください。)
⑲表になる方を上にして玉子焼きを木蓋又は平らなザルに載せ、室温に置き、自然に冷まします。
完全に冷めてからが食べ頃です。
3.供し方
≪dの場合≫
玉子焼きをネタに切りつけ、表面中央縦長に包丁で浅く切れ目を入れ、
何も挟まずにシャリを置いて鞍掛けに握り、何もつけずに供します。
すし店の中には、ネタ表面となる方には焼き色を付けずに薄く焼き、
ネタに切りつけてからおぼろを挟んで握り、包丁目からおぼろが見えるよう、
ネタの表面中央に十文字に包丁を入れるところもあります。
見た目の美しさを優先させるならば、この焼き方・供し方がオススメです。
≪eの場合≫
適当な大きさに切り、そのまま供します。
東京の江戸前のすし店の玉子焼きの材料は、概ね以下のように分類できると思います。(混合型もあります。)
a.卵+ダシ+調味料
b. 卵+ダシ+調味料+具 (クルマエビ ・ アナゴ ・ ウニ ・ 小柱 ・ ミツバ 等)
c. 卵+調味料
d. 卵+調味料+すり身 (シバエビ ・ 小さいクルマエビ ・ シロエビ ・ 淡白な白身魚 ・ 小柱 等)又はおぼろ
e. 卵+調味料+すり身 (シバエビ ・ 小さいクルマエビ ・ シロエビ ・ 淡白な白身魚 ・ 小柱 等)
+イチョウイモ(関東での呼称は大和イモ)又はツクネイモ ※イチョウイモが圧倒的に多い。
aとbは普通巻いて焼かれ、c ・ d ・ eは普通巻かずに焼かれます。
最も多いのはaで、いわゆる関東風の甘いダシ巻き卵です。(巻かずに薄焼きにするすし店も稀にあります。)
名店のほとんどは、伝統的なd又はeです。
江戸前のすしの世界では、狭義には、すり身を入れて巻かずに焼く、
伝統的なもののみを玉(ぎょく)と呼ぶようです。
私がここで紹介するのもdとeです。
dは薄焼き、eは厚焼きにするのが普通です。
より多いのはeで、高級店のほとんどはeです。
dは江戸時代又は明治初期から続く老舗やその出身者の店に多いようです。
多くのすし店でdとeの玉子焼きを食べ、自分でも何度も試ましたが、
すしネタ(タネ)として私が評価するのはdの薄焼きです。
dは、シャリとの相性がとても良く、自分好みの味にして握ると、とても美味しくなります。
玉子焼きだけで食べるよりも、シャリと合わせた方が断然美味しいと思います。
反面eは、あまり言われないことですが、そのまま食べるととても美味しいのに、
握るとシャリとの相性があまり良くないため、美味しさが半減してしまいます。
イチョウイモ(又はツクネイモ)のせいです。
eの玉子焼きを出すすし店で、“オマカセ”で食べると握られず、
“オコノミ”で注文すると「握りますか?」と必ず聞かれるのは、お客の多くが握らない方を好むことに加え、
すし店側でもシャリとあまり相性が良くないことを自覚しているのが本当の理由だと思います。
eの玉子焼きをあえてすしにするならば、シャリに具を混ぜ、
そのシャリを玉子焼きで巻く昔風のやり方の方が良いと思います。
私は、dの玉子焼きはすしネタ、eの玉子焼きはおかず(正月のおせち料理等)として区別しました。
1.仕入れ
色々と試しましたが、私はすり身にはシバエビだけを使ったものが一番好きです。
シバエビは柔らかく味がいいので、シバエビだけを使う名店も多いです。
シバエビと鶏卵について、簡単に触れます。
◆シバエビ
特にdの玉子焼きの場合、すり身を多めにして焼くと、
焼いている時(菜箸でひっくり返す場合)や握る時に玉子焼きがパキッと割れやすくなります。
でも、小さ目のシバエビを使うと割れにくくなります。
小さい方が加熱してもより柔らかいからです。
ですから、特に慣れないうちは小さ目を使うことをオススメします。
その他、シバエビの仕入れについては、おぼろ (シバエビのおぼろ)のページをご確認ください。
◆鶏卵
すし店では、卵にあまりお金をかけていないところが多いようですが、良いものを使った方が当然美味しくなります。
私が選んだ卵に共通するのは、次の点です。
・抗生物質やワクチン等の薬物を一切使用していない
・自由に歩きまわれる環境で育った地鶏が生んだ有精卵
・味と香りが濃厚で秀でている
・粘りが強い
・黄身の色が濃い、ただしビタミンE剤等の薬剤を与えていない ← 綺麗な色に仕上がる
・生産者が明らか
・新鮮
地元の有機食材を扱う店に、全ての条件を満たす、とてもすばらしいものがあったので、そこで仕入れていました。
ちなみに、築地ではそのような卵は見つかりませんでした。
2.仕込み
dとeの玉子焼きを作るにあたっては、使う鍋がとても重要です。
江戸前のすし店で使われるのは、銅製又は鉄製で、鍋よりも一回り小さい木蓋が付いた、真四角の専用鍋です。
江戸前のすし店では、
dの場合、銅製で高さの低い鍋を使い、途中菜箸でひっくり返して焼きます。
(高さが低いことに加え、幅のある鍋でないと出来ない。)
eの場合、銅製又は鉄製の鍋で、いずれかの方法で焼きます。
・途中菜箸でひっくり返して焼く。(高さが低いことに加え、幅のある鍋でないと出来ない。)
・ひっくり返さず、炭火・オーブンなどの上火も使って焼く。
・2つの鍋で、それぞれ下火で焼き、ある程度焼けてから、2つを合体させて更に焼く。
凝り性の私は、d用に銅製、e用に鉄製の、高さが低く幅のある江戸前のすし店が使う専用鍋を手に入れ、
途中菜箸を鍋と玉子焼きの間に入れてひっくり返して焼きました。(dでシバエビを多く使う場合は、上火も使いました。)
私の場合、プロ仕様の大きなガスコンロが自宅にあるので問題ありませんでしたが、
一般家庭のガスコンロに合うサイズの鍋ではありません。
特に熱伝導率の低い鉄製のものは、一般家庭のガスコンロには全く合いません。
江戸前のすし店が使う専用鍋を手に入れる前は、
木蓋付きで高さのある銅製の鍋で、上火も使ってdもeも焼いていました。
家庭では、フッ素樹脂加工されたダシ巻き用の鍋が一般的だと思いますが、これだと上火は使えません。
綺麗に焼け、ひっくり返すことができる構造になっているか、上火を使えるものがあれば、それを使ってください。
ケーキを焼く時に使う焼き型で、最初からオーブンで焼いてもいいかもしれません。
他には、ホットプレート等、ホットケーキを綺麗に焼くことができる類のものならば、
型などを使えば割とうまくいくかもしれません。
【レシピ】
銅鍋(柄を外すことができる)で、上火も使って焼く方法を紹介します。
他の鍋で作る場合も参考になると思います。
材料(特にシバエビ ・ 鶏卵 ・ eの場合はイチョウイモも)の質によっては、
それぞれの分量を大きく変えなければなりません。
何度か作ってみて、適した生地の状態を把握してください。
下記はdのレシピですが、eに必要なことは茶色の字で書いています。
(材料)
・シバエビ 適量 (割った卵と、剥いたシバエビの体積は同じくらい。私はそれよりも若干多めにシバエビを使うことが多かったです。)
・鶏卵 適量 (同上)
・造りの良いコクのある純本ミリン 適量
・砂糖 適量
・塩(精製塩不可) 適量
・造りの良い濃口醤油(香りは控えめで色の明るいもの) 適量
・植物油(軽く酸化安定性に優れたもの) 適量
・eの場合のみ、イチョウイモ(関東での呼称は大和イモ) 適量(割った卵と、イチョウイモの体積は同じくらい)
※ちなみに、
dの場合、シバエビを少なめにした方が握るのが簡単です。(割れにくい)
eの場合、イチョウイモを多めにした方が失敗しにくいです。
また、巻き簾で巻いて伊達巻のようにするならば、イチョウイモを多くした方が、
割れることなく上手くいきます。
ただし、いずれも味わいは変わってしまいます。
①冷やした塩水でシバエビをざっと洗って表面の汚れとヌメリを落とし、
ザルに上げて水を切り、キッチンペーパー等で水気をとります。
②シバエビの頭・殻・尾を外し、身だけにします。(ミソは使いません。)
③つまようじ等を使ってシバエビの背ワタをとります。
④純本ミリンを鍋で煮切り、冷まします。
⑤シバエビを裏ごしし、すり鉢(当たり鉢)に入れます。 ※すし店によっては、シバエビを軽く茹でてからすり身にします。
eの場合、ここでイチョウイモを擦りおろし、シバエビと合わせ、
すりこ木で非常に丹念にあたり、強いコシと粘りを出します。
ここで手を抜くと、失敗します。
⑥砂糖と少量の塩を加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。
味見して、砂糖と塩の量を決めてください。
この後の味付けもそうなのですが、すしにする場合は、握った時のシャリの量と玉子焼きの厚さを考えて
それに相応しい味付けをしてください。
⑦煮切って冷えた純本ミリンを加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。 ※ミリンと共に日本酒を加えるすし店も多いです。
⑧鶏卵を割り、少しずつすり鉢に加え、すりこ木でよく混ぜ合わせます。
鶏卵の状態(水っぽさや黄身と白身の割合)により、加える量を調整してください。
生地には一定レベルの粘りと黄色い色が必要です。
eの場合は、ホットケーキの生地のように、かなりどろっとした感じになります。
※dの場合、鶏卵を入れてから、
すりこ木ではなく菜箸等で空気を含ませながら軽めに混ぜ合わせるのが普通で、
その方が菜箸でひっくり返して焼く場合やり易いのですが、
上火も使って焼く場合は、あえてすりこ木でよく混ぜ合わせました。
※卵の白身の一部を泡立てて、メレンゲにして加える店もあります。
オススメではありませんが、メレンゲを入れると、よく膨らみます。
ただし、たくさん入れると、シバエビ風味のスポンジケーキ(笑)のようになってしまいますので、
もしも使うならば極少量にしてください。
⑨濃口醤油を少量入れて味見し、味を修正し、すりこ木でよく混ぜ合わせます。 ※色が悪くならないよう注意。
濃口醤油の代わりに薄口醤油を使っても、醤油を一切加えなくてもかまいません。
醤油を加えない場合は、⑥で塩を少し多めにしてください。
eの場合、私はすしにしないので、醤油は加えませんでした。加えないすし店も多いです。
⑩銅鍋を熱し、植物油をたっぷり入れて、しばらく熱します。
⑪熱くなってきたら植物油を空け、鍋を適温まで冷まします。
この時に、鍋に手をかざすか、鍋を顔に近づけて“適温”を覚えてください。
“熱い”と“温かい”の間という感じ(笑)です。
この後に弱火で焼いていくのですが、鍋に植物油をよくなじませ、適温まで温度を上げておけば、
鍋にくっついて失敗するのを防ぐことができます。
ただし、温度を上げ過ぎると、焦げやすく(又は焼き過ぎに)なりがちです。
⑫鍋を弱火にかけ、植物油を少量加え、
菜箸と脱脂綿(キッチンペーパー等でも可)を使って鍋全体(四辺の縁を含む)に薄い植物油の膜ができるようにします。
⑬鍋に生地を入れ、鍋を軽くゆすって平らにします。火は弱火です。
この時に、玉子焼きの厚さが決まりますので、好みの高さにしてください。
私は、dの場合は、鍋底から6~7ミリくらいの高さまで入れました。(焼き上がると若干厚みが増します。)
eの場合、私は2センチくらいの高さまで入れました。(焼き上がるとかなり厚みが増します。)
eの場合、火加減は極弱火です。
⑭気泡が出てきたら竹串等で一つ一つつぶします。
⑮底面に好みの焼き色がつくであろう頃に、
玉子焼きの四辺の縁のまわりを竹串を自転させながらくるっと1周させ、
鍋から玉子焼きの縁を離します。(その後再び鍋にくっつきます。)
底面の焼き色は、四辺の縁よりも濃いことに留意してください。
※この時点で、一度この処理をしておくと、焼き具合を確認することができますし、
後で玉子焼きが鍋からきれいに離せないということがありません。
⑯上火で焼きます。
私は、次の4つを試してみました。
・オーブンのグリル機能(上火)
・オーブンのオーブン機能(上火)
・ガスコンロに付属しているグリル(魚を焼く部分)
・焼き網に備長炭を載せ、鍋の上で近づけたり遠ざけたりしながら焼く。
最終的には、綺麗に焼け、熱をコントロールしやすいオーブンのグリル機能に落ち着きました。
予めオーブンを300℃で20分くらい温めて置き、鍋ごとオーブンに入れ、
300℃のグリルで回転させながら焼き、
好みの焼き色が付いても(dの場合、焼き色は付けなくても可)まだ火が通っていない場合は、
鍋にアルミホイルを被せて火を通します。
eの場合、温度は250℃くらいにしました。
※オーブンの機種により、必要な温度や時間は変わります。
⑰ほどよく焼けたら、再度、竹串で玉子焼きの四辺の縁のまわりを竹串を自転させながらくるっと1周させ、
玉子焼きを鍋から離します。
⑱玉子焼きの上に木蓋を載せ、鍋を上、木蓋を下にして、玉子焼きを木蓋に載せ、
上火で焼いていた玉子焼きの面が下になるよう鍋に移し、玉子焼きの上から木蓋を載せて軽く押し、
余分な空気を抜きます。(木蓋がなければ他のもので代用してください。)
⑲表になる方を上にして玉子焼きを木蓋又は平らなザルに載せ、室温に置き、自然に冷まします。
完全に冷めてからが食べ頃です。
3.供し方
≪dの場合≫
玉子焼きをネタに切りつけ、表面中央縦長に包丁で浅く切れ目を入れ、
何も挟まずにシャリを置いて鞍掛けに握り、何もつけずに供します。
すし店の中には、ネタ表面となる方には焼き色を付けずに薄く焼き、
ネタに切りつけてからおぼろを挟んで握り、包丁目からおぼろが見えるよう、
ネタの表面中央に十文字に包丁を入れるところもあります。
見た目の美しさを優先させるならば、この焼き方・供し方がオススメです。
≪eの場合≫
適当な大きさに切り、そのまま供します。