アワビ (鮑), レシピ awabi recipe edomae
May 9, 2015 18:22:01 GMT 9
Post by 管理人 on May 9, 2015 18:22:01 GMT 9
日本の食用アワビは、クロアワビ ・ マダカアワビ ・ メガイアワビ ・ エゾアワビ(クロアワビの北方型) で、
いずれも江戸前のすし店で使われています。
近年はアワビに加え、トコブシを使うすし店も増えました。
このうち、私が高く評価しているのは、クロアワビとマダカアワビです。
共に旬は夏から秋口です。
◆クロアワビ
東京のすし店や築地では、オガイと呼ばれることが多いです。
生で食べるなら、このアワビがベストです。
生で食べる場合、身を硬く締めて使われることが多いのですが、すしにするならば硬く締めず、
切り付けてから包丁目をたくさん入れないと、シャリとのバランスがとれません。(それでも硬い)
上物はとても美味しいですが、生ですし・刺身に使うと両親にとっては硬すぎ、
すし用の加熱調理をすると仕上がりが硬くなるので、すしの日には使いませんでした。
◆マダカアワビ
東京のすし店や築地では、メガイアワビと共にメガイと呼ばれることが多々あるので、紛らわしいです。
江戸前のすしの加熱調理には、最も柔らかいメガイアワビが一番多く使われていると思いますが、
マダカアワビを使うと、美味しさはグッと上がります。
ただし、漁獲量が少なく最も高価なため、高級店専用という感じです。
そして、私がここで紹介するのも、マダカアワビです。
1.仕入れ(築地場内, マダカアワビ)
クロアワビ ・ マダカアワビ ・ メガイアワビの3種については、千葉の大原が絶対的な名産地として知られています。
大原沖には、アワビに最適な生息場所があり、味も香りも濃厚で素晴らしいアワビとなります。
かつては、東京のすしの名店が使うアワビといえば、大原のアワビでした。
私が働いていた日本料理店でもよく使っていましたので、その圧倒的な美味しさをよく知っています。
でも、漁獲量が激減し、その後禁漁、再開、禁漁・・・となってしまいました。
禁漁後も密漁物が少量流通していましたが、私が築地通いをしていた頃は、ほとんど幻のような存在でした。
密漁物がどのような流通経路で、築地の仲卸しの元に届くのかは知りませんが、他の魚介類でもよくあることでした。
築地通いを始めてから初めて迎えた夏、仕入先の選定もまだ不充分な中、密漁物でもなんでもいいから、
とにかく大原のマダカアワビの上物を仕入れたいと思い、築地場内を歩き回りましたが見つかりませんでした。
大原のすぐ近くで、やはり名産地として知られる岩和田や、その他の外房産(千葉)も選択肢に入れていたのですが、
その時は外房産のマダカアワビは全く見つかりませんでした。
次は、アワビの競りを見て、上物を競り落としていた複数の仲卸しを特定してからトライしましたが、
やはり大原産 ・ 岩和田産、その他の外房産のマダカアワビは見つからず、仕入れませんでした。
ただ、その時に思ったのは、もし大原のマダカアワビがあったとしても、仲卸しの店頭には並ばず、
予め決まった顧客へ流れてしまい、私の手元には届かないであろうということです。
そこで、活魚でお世話になっていた事情通の仲卸し(アワビの扱いは無し)のご主人に相談し、
大原のマダカアワビを扱うことのある仲卸しを紹介していただきました。
アワビ以外の魚介類も、とびっきりの上物を扱う仲卸しでしたから、その後重要な仕入先の一つとなり、
良好な関係が出来ていきました。
しばらくしてから、「大原産の800グラム級以上のマダカアワビの上物が入荷したら、
キロ単価5万でも10万でもかまわない、必ず誰よりも高く買い取る」、という条件を提示しました。
おかげさまで、ごく稀にではありますが、大原産の上物を適正価格で仕入れることができました。
特に身がビワ色をした上物は、素晴らしい味わいです。
密漁物だったのでしょうが、正真正銘の大原のアワビでした。(食べればすぐに分かるほど、大原のものは素晴らしいです。)
マダカアワビは、日本のアワビの中で最も大きくなります。
上物は、体高があり、身が殻から飛び出すほど大きくて分厚く、
身がビワ色(オレンジ色っぽい)で、触った時に反応が良いものです。
サイズ(殻つきの重量)は、味を重視するならば、
1キロ以上(大きければ大きいほど、仕上がりが硬くなるので、1.5キロくらいまでが良いと思います。)、
シャリと一体となる柔らかさを重視するならば800グラムから1キロくらいが良いと思います。
小さいと、このアワビの醍醐味を味わうことが出来ません。
産地は、大原や岩和田のものがなければ、他の外房産がオススメです。(クロアワビ・メガイアワビも同様。)
マダカアワビに限らず、アワビは出荷調整が行われがちです。
その上、塩分濃度を低くして、アワビにたっぷりと海水を吸わせて目方を増量させたりもします。
(吸い込んだ海水も含めてのキロ単価です。)
ひどい業界です。
充分に気をつけてください。
2.仕込み (マダカアワビ)
江戸前のすしでも、色々と加熱調理の仕方はありますが、
名店では、「蒸しアワビ」、「酒蒸し」、「塩蒸し」などと呼ばれる仕込みが主流になってきていると思います。
蒸し器で蒸す店もありますが、長時間煮てそのまま煮汁に漬け込む店が多いようです。
私も、後者の方が江戸前のすしに合うと思います。
元々は、日本料理の世界で行われてきた煮方の一つですが、江戸前のすし店にも普及し、
その後に有名なすし店がその調理手順を公開してから、同様の仕込みをするすし店が増えたようです。
上質のマダカアワビが手に入ったならば、あまり余計なものは使わず、
高価希少で香り豊かな味わいを持つ、マダカアワビの良さをそのまま活かしたやり方が、
江戸前のすしにはふさわしいと思います。
したがって、煮汁にダシ・昆布・大根(柔らかくするために使われることもある)・醤油・ミリンなどは入れず、
供する時も、甘い煮ツメや肝(キモ)で作ったソースなどは、使わない方が良いと思います。
長時間煮て、そのまま煮汁に漬け込む場合、一度にたくさんのマダカアワビを煮ると、とても美味しく出来上がります。
逆に少量のマダカアワビでは、煮汁に出ていくエキスの方が、煮汁から入ってくるエキスよりもずっと多くなり、
あまり美味しくなりません。
でも、家庭でたくさんのマダカアワビを煮るわけにはいきません。
代替として、次のような方法があります。
a. 煮汁を冷凍保存し、次回、また次回と繰り返し煮汁を使っていく。
→煮汁を繰り返し使うすし店もあります。(煮汁をゼラチン状に固めたものを使う店もあります。)
マダカアワビからは、エキスだけでなく塩分も出てくるので、繰り返し使うと塩分が濃くなってしまい、
私のやり方には向きません。
b. 煮汁がほとんど無くなるまで、マダカアワビを煮る。
→すし店でも行われている方法です。
弱火でじっくり調理すれば、いい感じになりますが、仕上がりが硬めになります。
c. 真空調理
→すし店では、あまり行われていないと思います。
この場合、マダカアワビと煮切ってから冷やした日本酒を真空パックし、低温加熱します。
仕事では経験があり、良い調理法の一つだと思いますが、
真空調理では出せない味を意図したので、家では実践しませんでした。
d. 以下に紹介します。
(下処理)
①殻から身(柱を含む)を外します。
殻を下、身を上、殻の薄い側を右にすると、手前に口ばしが来ます。
口ばしの右横のあたりから、シャモジ又は食事用のナイフ等を、身と殻の間に差し込み、
殻にくっついている柱を殻からはずし、
片方の手で殻を持ち、もう片方の手で身を起こしてから軽くチョップ(叩く)して、身を外します。
逆側から柱を外しに行くと、ワタが破けやすいので、気をつけてください。
②口ばしを包丁で取ります。
目方増量のために海水を飲まされていると、口バシをとった時にたくさん出てきます。
③タワシを使って汚れとヌメリを洗い流し、水気を拭き取ります。
塩は使いません。
④タワシを使ってもとれない見た目に汚い部分があれば、包丁で切り取ります。
【レシピ】
マダカアワビの大きさによりますが、供するまでに8時間くらいかかります。
気長に、大らかな気持ちで調理してください。
それだけの価値があると思います。
煮汁に塩は加えません。(少量加える店もあります)
(材料)
・下処理済みのマダカアワビの身 1杯
・造りの良い純米酒 (ただし苦みを感じさせないもの。古酒は不可。) 適量
・ミネラルウォーター(軟水) 適量
①鍋に、純米酒・ミネラルウォーターを入れ、マダカアワビを柱を下にして入れ、弱火にかけます。
沸騰するまで時間がかかりますが、焦らずじっくりと弱火で加熱していきます。
鍋は、マダカアワビがすっぽりと入り、且つ出来るだけ小さく、焦げ付きにくいものを使います。
純米酒とミネラルウォーターの量は、マダカアワビよりもぎりぎり少しだけ高いくらいです。
純米酒とミネラルウォーターの量の比率は、2:3くらいが良いと思います。
②鍋が沸騰してきたら、軽い沸騰をぎりぎり維持できる火加減とし、アクを丁寧に取ります。(この後も)
また、マダカアワビの表面が煮汁から出てきたら、ミネラルウォーターを少量足して、
マダカアワビよりもぎりぎり少しだけ高いくらいにします。(この後も)
ミネラルウォーターを足すたびに、温度が少し下がるわけですが、それが良い効果をもたらします。
③マダカアワビの身の表面が飴色っぽく色づき、身が柔らかくなったら、
火を止めて、煮汁に漬け込んだまま室温に置きます。
煮る時間は、1キロ前後の上物で、概ね4.5~5時間くらいです。
身の柔らかさは、竹ぐしや妻ようじを刺すと分かりやすいですが、
身が傷つくので、慣れてきたら、見た目と弾力で判断してください。
あまり大きなマダカアワビだと、いくら煮ても硬めの仕上がりになります。
④煮汁がすっかり冷めたら、マダカアワビをボウル状の器に移してラップし、室温に置きます。
マダカアワビには、少量の煮汁をからませておきます。
⑤鍋の煮汁を、別の鍋に濾して入れ、煮詰めていきます。
この時に、煮汁の味をみて、次の手順で使う純米酒の量を決めてください。
⑥煮汁の無くなった方の鍋も火にかけ、純米酒を入れて煮切り、
鍋に付いているマダカアワビのエキスをシャモジでこそげ落として純米酒に移し、
それを煮汁の入った方の鍋に濾して入れます。
⑦引き続き、アクを取りながら、焦がさないようシャモジを使い、煮汁を煮詰めていきます。
煮汁が少なくなってきたら、マダカアワビが入っている器の煮汁も鍋に入れ、味を見ます。
煮汁にはアワビから出た塩分があります。
この後の手順で、マダカアワビに煮汁をからませますが、
塩気が強いと身が硬く締まってしまいますので、どの程度まで煮詰めるかをここで判断します。
⑧味を見ながらターゲットまで煮汁を煮詰めたら、火を止めます。
⑨鍋の表面を氷水につけ、マダカアワビと同じくらいの温度にまで冷やし、鍋表面の水気を拭き取ります。
何度か氷水を変えると、早く冷やすことが出来ます。
⑩鍋にマダカアワビを移し、煮汁をよくからませ、柱を上にし、フタをして室温に置きます。
途中、何度か煮汁をからめ直してください。
⑪供する少し前に、鍋からマダカアワビを取り出して器に移してラップし、
煮汁を更に煮詰めて火を止め、鍋の表面を氷水に漬け、煮汁を室温まで冷まします。
この煮詰めた煮汁は、マダカアワビにつけるためのものですので、それにふさわしい塩分濃度にまで煮詰めます。
3.供し方
足とか耳とか呼ばれるヒダヒダの部分は、見栄えが悪いので切り外します。(この部分も食べます。)
握らずに、身も柱も分厚く切って食べるのが、
マダカアワビの香り豊かで、ミルキーで、ゼラチン質豊かで、甘くネットリとした味を楽しむには一番です。
⑪の煮詰めた煮汁を小皿に入れて添え、供します。
握っても美味しいです。
つるっとしていて握りづらいので、切り付ける際は、シャリを包み込めるよう、丸みをつけます(湾曲させる)。
シャリと接する面には、切り付けてから細かく包丁を入れるか、
切り付けの際にギザギザと波状に包丁を入れると良いです。
薄く切った方が握りやすいですが、厚みがあった方が、美味しいです。
厚く切りつける場合は、表面にも包丁を入れて、食感と握りやすさを調整してください。
表面中央に縦長に包丁を入れ、鞍掛(三角屋根のような形)にすると握りやすくなります。
少量のワサビを挟み、⑪の煮詰めた煮汁又は煮切り醤油をつけて供します。
煮汁と煮切り醤油の両方をつけても合います。
いずれも江戸前のすし店で使われています。
近年はアワビに加え、トコブシを使うすし店も増えました。
このうち、私が高く評価しているのは、クロアワビとマダカアワビです。
共に旬は夏から秋口です。
◆クロアワビ
東京のすし店や築地では、オガイと呼ばれることが多いです。
生で食べるなら、このアワビがベストです。
生で食べる場合、身を硬く締めて使われることが多いのですが、すしにするならば硬く締めず、
切り付けてから包丁目をたくさん入れないと、シャリとのバランスがとれません。(それでも硬い)
上物はとても美味しいですが、生ですし・刺身に使うと両親にとっては硬すぎ、
すし用の加熱調理をすると仕上がりが硬くなるので、すしの日には使いませんでした。
◆マダカアワビ
東京のすし店や築地では、メガイアワビと共にメガイと呼ばれることが多々あるので、紛らわしいです。
江戸前のすしの加熱調理には、最も柔らかいメガイアワビが一番多く使われていると思いますが、
マダカアワビを使うと、美味しさはグッと上がります。
ただし、漁獲量が少なく最も高価なため、高級店専用という感じです。
そして、私がここで紹介するのも、マダカアワビです。
1.仕入れ(築地場内, マダカアワビ)
クロアワビ ・ マダカアワビ ・ メガイアワビの3種については、千葉の大原が絶対的な名産地として知られています。
大原沖には、アワビに最適な生息場所があり、味も香りも濃厚で素晴らしいアワビとなります。
かつては、東京のすしの名店が使うアワビといえば、大原のアワビでした。
私が働いていた日本料理店でもよく使っていましたので、その圧倒的な美味しさをよく知っています。
でも、漁獲量が激減し、その後禁漁、再開、禁漁・・・となってしまいました。
禁漁後も密漁物が少量流通していましたが、私が築地通いをしていた頃は、ほとんど幻のような存在でした。
密漁物がどのような流通経路で、築地の仲卸しの元に届くのかは知りませんが、他の魚介類でもよくあることでした。
築地通いを始めてから初めて迎えた夏、仕入先の選定もまだ不充分な中、密漁物でもなんでもいいから、
とにかく大原のマダカアワビの上物を仕入れたいと思い、築地場内を歩き回りましたが見つかりませんでした。
大原のすぐ近くで、やはり名産地として知られる岩和田や、その他の外房産(千葉)も選択肢に入れていたのですが、
その時は外房産のマダカアワビは全く見つかりませんでした。
次は、アワビの競りを見て、上物を競り落としていた複数の仲卸しを特定してからトライしましたが、
やはり大原産 ・ 岩和田産、その他の外房産のマダカアワビは見つからず、仕入れませんでした。
ただ、その時に思ったのは、もし大原のマダカアワビがあったとしても、仲卸しの店頭には並ばず、
予め決まった顧客へ流れてしまい、私の手元には届かないであろうということです。
そこで、活魚でお世話になっていた事情通の仲卸し(アワビの扱いは無し)のご主人に相談し、
大原のマダカアワビを扱うことのある仲卸しを紹介していただきました。
アワビ以外の魚介類も、とびっきりの上物を扱う仲卸しでしたから、その後重要な仕入先の一つとなり、
良好な関係が出来ていきました。
しばらくしてから、「大原産の800グラム級以上のマダカアワビの上物が入荷したら、
キロ単価5万でも10万でもかまわない、必ず誰よりも高く買い取る」、という条件を提示しました。
おかげさまで、ごく稀にではありますが、大原産の上物を適正価格で仕入れることができました。
特に身がビワ色をした上物は、素晴らしい味わいです。
密漁物だったのでしょうが、正真正銘の大原のアワビでした。(食べればすぐに分かるほど、大原のものは素晴らしいです。)
マダカアワビは、日本のアワビの中で最も大きくなります。
上物は、体高があり、身が殻から飛び出すほど大きくて分厚く、
身がビワ色(オレンジ色っぽい)で、触った時に反応が良いものです。
サイズ(殻つきの重量)は、味を重視するならば、
1キロ以上(大きければ大きいほど、仕上がりが硬くなるので、1.5キロくらいまでが良いと思います。)、
シャリと一体となる柔らかさを重視するならば800グラムから1キロくらいが良いと思います。
小さいと、このアワビの醍醐味を味わうことが出来ません。
産地は、大原や岩和田のものがなければ、他の外房産がオススメです。(クロアワビ・メガイアワビも同様。)
マダカアワビに限らず、アワビは出荷調整が行われがちです。
その上、塩分濃度を低くして、アワビにたっぷりと海水を吸わせて目方を増量させたりもします。
(吸い込んだ海水も含めてのキロ単価です。)
ひどい業界です。
充分に気をつけてください。
2.仕込み (マダカアワビ)
江戸前のすしでも、色々と加熱調理の仕方はありますが、
名店では、「蒸しアワビ」、「酒蒸し」、「塩蒸し」などと呼ばれる仕込みが主流になってきていると思います。
蒸し器で蒸す店もありますが、長時間煮てそのまま煮汁に漬け込む店が多いようです。
私も、後者の方が江戸前のすしに合うと思います。
元々は、日本料理の世界で行われてきた煮方の一つですが、江戸前のすし店にも普及し、
その後に有名なすし店がその調理手順を公開してから、同様の仕込みをするすし店が増えたようです。
上質のマダカアワビが手に入ったならば、あまり余計なものは使わず、
高価希少で香り豊かな味わいを持つ、マダカアワビの良さをそのまま活かしたやり方が、
江戸前のすしにはふさわしいと思います。
したがって、煮汁にダシ・昆布・大根(柔らかくするために使われることもある)・醤油・ミリンなどは入れず、
供する時も、甘い煮ツメや肝(キモ)で作ったソースなどは、使わない方が良いと思います。
長時間煮て、そのまま煮汁に漬け込む場合、一度にたくさんのマダカアワビを煮ると、とても美味しく出来上がります。
逆に少量のマダカアワビでは、煮汁に出ていくエキスの方が、煮汁から入ってくるエキスよりもずっと多くなり、
あまり美味しくなりません。
でも、家庭でたくさんのマダカアワビを煮るわけにはいきません。
代替として、次のような方法があります。
a. 煮汁を冷凍保存し、次回、また次回と繰り返し煮汁を使っていく。
→煮汁を繰り返し使うすし店もあります。(煮汁をゼラチン状に固めたものを使う店もあります。)
マダカアワビからは、エキスだけでなく塩分も出てくるので、繰り返し使うと塩分が濃くなってしまい、
私のやり方には向きません。
b. 煮汁がほとんど無くなるまで、マダカアワビを煮る。
→すし店でも行われている方法です。
弱火でじっくり調理すれば、いい感じになりますが、仕上がりが硬めになります。
c. 真空調理
→すし店では、あまり行われていないと思います。
この場合、マダカアワビと煮切ってから冷やした日本酒を真空パックし、低温加熱します。
仕事では経験があり、良い調理法の一つだと思いますが、
真空調理では出せない味を意図したので、家では実践しませんでした。
d. 以下に紹介します。
(下処理)
①殻から身(柱を含む)を外します。
殻を下、身を上、殻の薄い側を右にすると、手前に口ばしが来ます。
口ばしの右横のあたりから、シャモジ又は食事用のナイフ等を、身と殻の間に差し込み、
殻にくっついている柱を殻からはずし、
片方の手で殻を持ち、もう片方の手で身を起こしてから軽くチョップ(叩く)して、身を外します。
逆側から柱を外しに行くと、ワタが破けやすいので、気をつけてください。
②口ばしを包丁で取ります。
目方増量のために海水を飲まされていると、口バシをとった時にたくさん出てきます。
③タワシを使って汚れとヌメリを洗い流し、水気を拭き取ります。
塩は使いません。
④タワシを使ってもとれない見た目に汚い部分があれば、包丁で切り取ります。
【レシピ】
マダカアワビの大きさによりますが、供するまでに8時間くらいかかります。
気長に、大らかな気持ちで調理してください。
それだけの価値があると思います。
煮汁に塩は加えません。(少量加える店もあります)
(材料)
・下処理済みのマダカアワビの身 1杯
・造りの良い純米酒 (ただし苦みを感じさせないもの。古酒は不可。) 適量
・ミネラルウォーター(軟水) 適量
①鍋に、純米酒・ミネラルウォーターを入れ、マダカアワビを柱を下にして入れ、弱火にかけます。
沸騰するまで時間がかかりますが、焦らずじっくりと弱火で加熱していきます。
鍋は、マダカアワビがすっぽりと入り、且つ出来るだけ小さく、焦げ付きにくいものを使います。
純米酒とミネラルウォーターの量は、マダカアワビよりもぎりぎり少しだけ高いくらいです。
純米酒とミネラルウォーターの量の比率は、2:3くらいが良いと思います。
②鍋が沸騰してきたら、軽い沸騰をぎりぎり維持できる火加減とし、アクを丁寧に取ります。(この後も)
また、マダカアワビの表面が煮汁から出てきたら、ミネラルウォーターを少量足して、
マダカアワビよりもぎりぎり少しだけ高いくらいにします。(この後も)
ミネラルウォーターを足すたびに、温度が少し下がるわけですが、それが良い効果をもたらします。
③マダカアワビの身の表面が飴色っぽく色づき、身が柔らかくなったら、
火を止めて、煮汁に漬け込んだまま室温に置きます。
煮る時間は、1キロ前後の上物で、概ね4.5~5時間くらいです。
身の柔らかさは、竹ぐしや妻ようじを刺すと分かりやすいですが、
身が傷つくので、慣れてきたら、見た目と弾力で判断してください。
あまり大きなマダカアワビだと、いくら煮ても硬めの仕上がりになります。
④煮汁がすっかり冷めたら、マダカアワビをボウル状の器に移してラップし、室温に置きます。
マダカアワビには、少量の煮汁をからませておきます。
⑤鍋の煮汁を、別の鍋に濾して入れ、煮詰めていきます。
この時に、煮汁の味をみて、次の手順で使う純米酒の量を決めてください。
⑥煮汁の無くなった方の鍋も火にかけ、純米酒を入れて煮切り、
鍋に付いているマダカアワビのエキスをシャモジでこそげ落として純米酒に移し、
それを煮汁の入った方の鍋に濾して入れます。
⑦引き続き、アクを取りながら、焦がさないようシャモジを使い、煮汁を煮詰めていきます。
煮汁が少なくなってきたら、マダカアワビが入っている器の煮汁も鍋に入れ、味を見ます。
煮汁にはアワビから出た塩分があります。
この後の手順で、マダカアワビに煮汁をからませますが、
塩気が強いと身が硬く締まってしまいますので、どの程度まで煮詰めるかをここで判断します。
⑧味を見ながらターゲットまで煮汁を煮詰めたら、火を止めます。
⑨鍋の表面を氷水につけ、マダカアワビと同じくらいの温度にまで冷やし、鍋表面の水気を拭き取ります。
何度か氷水を変えると、早く冷やすことが出来ます。
⑩鍋にマダカアワビを移し、煮汁をよくからませ、柱を上にし、フタをして室温に置きます。
途中、何度か煮汁をからめ直してください。
⑪供する少し前に、鍋からマダカアワビを取り出して器に移してラップし、
煮汁を更に煮詰めて火を止め、鍋の表面を氷水に漬け、煮汁を室温まで冷まします。
この煮詰めた煮汁は、マダカアワビにつけるためのものですので、それにふさわしい塩分濃度にまで煮詰めます。
3.供し方
足とか耳とか呼ばれるヒダヒダの部分は、見栄えが悪いので切り外します。(この部分も食べます。)
握らずに、身も柱も分厚く切って食べるのが、
マダカアワビの香り豊かで、ミルキーで、ゼラチン質豊かで、甘くネットリとした味を楽しむには一番です。
⑪の煮詰めた煮汁を小皿に入れて添え、供します。
握っても美味しいです。
つるっとしていて握りづらいので、切り付ける際は、シャリを包み込めるよう、丸みをつけます(湾曲させる)。
シャリと接する面には、切り付けてから細かく包丁を入れるか、
切り付けの際にギザギザと波状に包丁を入れると良いです。
薄く切った方が握りやすいですが、厚みがあった方が、美味しいです。
厚く切りつける場合は、表面にも包丁を入れて、食感と握りやすさを調整してください。
表面中央に縦長に包丁を入れ、鞍掛(三角屋根のような形)にすると握りやすくなります。
少量のワサビを挟み、⑪の煮詰めた煮汁又は煮切り醤油をつけて供します。
煮汁と煮切り醤油の両方をつけても合います。