マグロ, レシピ recipe edomae maguro
Dec 13, 2014 15:32:02 GMT 9
Post by 管理人 on Dec 13, 2014 15:32:02 GMT 9
築地場内市場では、仕入先の仲卸しが上物の天然生本マグロを扱っていたので、
本マグロばかり仕入れていましたが、それ以前は他の種類のマグロも使いました。
私は、本マグロ以外のマグロも高く評価しています。
1.本マグロ (黒マグロ)
◆ 築地場内市場での仕入れ
築地場内では、トップクラスのマグロの仲卸しのうち、私の仕入先となった1軒だけが
天然の生本マグロをサクでも販売していました。
すし店や日本料理店の、「今日は霜降りの大トロだけを仕入れたい」といった需要に応えていたのだと思います。
(もちろん割高にはなります。)
数あるすしの名店の仕入先にもなっていて、その内マグロのすしで有名なある名店(客として食べに行ったこともあります)
のご主人とその場で話をしたことがありますが、「ここのマグロはすぐに使えるからいい。マグロはここ一筋です。」
と仰っていました。
大抵のマグロの仲卸しは、競り落としたマグロをその日に販売していたようですが、
その仲卸しは、使うには早すぎるマグロは2つに切った後、紙とビニール袋で包み、マグロ専用の冷蔵庫で熟成していました。
私は、熟成に耐え得る釣りや延縄で漁獲されたマグロは、1週間熟成 (既にある程度熟成されていたので2週間は無理)
して使っていましたが、確かに仕入れた日に使っても充分に美味しかったです。
マグロは、仲卸しによって切り分けられます。
生マグロは、頭部を切った後、縦に二等分されますが、
下側(下身)はマグロの重い体重がかかっているため上側 (上身)よりも安く取引されます。
骨も外され、半身になったマグロは背側と腹側に分けられ、さらに需要に応じ販売単位 (コロ)に切り分けられますが、
背側は頭に近い方から「背カミ」、「背ナカ」、「背シモ」、
腹側は「腹カミ」、「腹ナカ」、「腹シモ」と呼ばれます。
背側で最も高価なのは「背ナカ」で、赤身と中トロはこの部位が最上です。
(中トロについては、「腹カミ」が最上と考える料理人も多いと思いますが、私は「背ナカ」の中トロをより高く評価します。)
腹側で (背側を含むマグロ全体で) 最も高価なのは「腹カミ」で、大トロはこの部位が最上です。
私は色々な部位をサクに切っていただき使いましたが、特に頻繁に仕入れたのは、
背側では「背ナカ」の赤身、中トロ、背ビレ下の小トロ、
腹側では「腹カミ」の霜降りの大トロ (蛇腹の大トロと中トロの間で最も高価) です。
私が一番好きなのは、「背ナカ」の中トロです。
旬の脂がのった上物の「背ナカ」の赤身も同じくらい好きで、それを初めて握った時の父の驚いた顔が忘れられません。
高級すし店の多くが「腹カミ」ばかりを使うため、「背ナカ」の赤身の美味しさを知らない人が多いのは残念なことです。
そういう高級すし店も本当は使いたいのでしょうが、営業上やむを得ないのだと思います。
テレビや雑誌でよく高価なものとして登場する「カマ」は値が安く、通常はマグロの仲卸しの店頭には並びません。
(欲しい人には下段の冷蔵庫から取り出して販売)
脂のノリが強烈で少々クセがあるため、あぶって使われることが多いですが、
マスメディアのおかげで高価での提供が可能となり、すし店としては有難い儲け仕事となっています。
近海本マグロの旬は冬ですが、1年を通じて上物を追いかけました。
毎年9月中旬あたりから北海道戸井の延縄物が並ぶと、「ああ、これからマグロが良くなるぞ!」と内心ワクワクしました。
10月から12月上旬頃は、ほとんどの場合大間の釣り物を仕入れました。
大間のマグロが少なくなってくる12月下旬頃からは、壱岐の釣り物が中心でした。
大間や戸井のマグロはすっかり有名になりましたが、この時期の壱岐やその周辺の釣り物 (竿で釣る) もすごいです。
2月中旬頃から、3月に宮崎の油津あたりで延縄物が水揚げされる前までは、
近海物の入荷が極端に少なかったです。(入荷ゼロもあり)
私は、築地のマグロの競り値 (キロあたりの単価) を毎日インターネットでチェックしていましたが、
この時期の生本マグロの最高値は、外国からの空輸物につく日も多かったです。
近海物と地中海産や大西洋産の空輸物では、味も明らかに異なりますが、
近海物の生にこだわるすし店も私も、近海物の入荷がない時は外国産を仕入れていました。
4月から6月頃の中心は、紀州勝浦 (和歌山) で水揚げされる延縄物で、旬ではありませんが安心して使うことができました。
最悪なのは真夏です。
近海物は多く漁獲されるのですが、旬外れど真ん中である上に、漁法 (網)と漁獲後の処理が悪いらしく、
すぐに色変わりしてしまうものがほとんどでした。
この時期の生本マグロの競り (キロあたりの単価) では、ほとんど毎日外国 (主にボストン ・ カナダの釣り物)
からの空輸物に最高値がつきました。
ただし、外国からの空輸物も旬外れで、生本マグロ以外のマグロを含めた最高値は、
冷凍ミナミマグロ ・ 冷凍本マグロにつく日も多かったです。
この時期も、近海生本マグロにこだわるすし店にとっても私にとってもつらい時期で、
なんとか使えるレベルの近海物か、チュウボウと呼ばれる小さなサイズを仕入れていました。
9月初旬くらいからボチボチと北海道松前などの使えるマグロが出始め、再び戸井、大間、壱岐と続いていきました。
◆ 仕込み
築地で仕入れた本マグロには、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
マグロの握りや巻き物で特にこだわったことは次の通りです。
①ネタ (タネ)を生かす力強いシャリを使うこと
②最高級のワサビを使うこと
③脂のノリに応じたネタの厚さ (脂の強いものは薄く)
④ネタの温度 (冷たすぎず温かすぎず)
⑤マグロを適度に熟成させること
< ヅケ >
本マグロの赤身で脂のノリが少ないもの、酸味の強いものは、ヅケにした方がシャリに合うと思います。
また、冷凍の赤身は解凍時のドリップで味が相当落ちますので、ヅケにして味を補うと良いと思います。
若い頃、安さと鮮度が売りの大型鮮魚店で、冷凍の安い本マグロの赤身 (トロは高嶺の花でした)
を仕入れてはよく作りました。
ヅケの作り方は、大きく分けて2つ。
①サクまたはネタに切りつけた状態で、漬け地に漬ける。
②サクの表面を湯引き又はあぶった後、氷水等で熱をとってから漬け地に漬ける。
①の場合、漬ける時間は短時間です。長く漬け込むと塩分が強くなるだけでなく表面がヌルヌルになります。
サクでも10分から20分の間くらいで。
②の場合は、何時間も漬け込むことになり、少し硬く締まった感じになりますが、
表面のヌルヌルは避けられますので、保存して使うこともできます。
漬け地にも色々ありますが、
醤油+日本酒、醤油+ミリン、醤油+日本酒+ミリンを煮切ったもの、
又は上記にカツオ節かカツオ節のだし汁を加え一緒に煮切ったものが一般的です。
マグロ節や赤ワインを使ったものもあります。
私は、生の赤身なら、醤油+日本酒の煮切り醤油に漬けるのが好きです。
冷凍の赤身なら、醤油+日本酒+マグロ節 (マグロ節は試したことはありません)
の煮切り醤油が良いのではないかと思います。
あまり質の良くない冷凍物しか仕入れることが出来なかった若い頃は、カツオ節で味を補っていました。
使用後の漬け地に火を通した後、煮切り醤油として使ったり、繰り返し漬け地として使用する店もあります。
(調味料やカツオ節等はその都度補充される。)
そうすると味が深くなると言いますが、私自身はほとんど経験がないため何とも言えません。
2.ミナミマグロ (インドマグロ)
東京での呼称はインドマグロ。
ミナミマグロを本マグロと比べてボロクソに言う人が多いですが、私はとても高く評価しています。
本マグロとは異質の脂がのった身の甘味は無二のもので、シャリとの相性は抜群だと思います。
築地の競りの最高値 (キロあたりの単価) を見ても、
多くの場合、冷凍のミナミマグロは冷凍の本マグロよりも高く、
生の本マグロを上回ることも珍しいことではなく、市場 (しじょう) は正当に評価していると思いました。
(冷凍物は重い頭がついていませんが、その分を考慮しても高値。)
生のミナミマグロもニュージーランドなどから空輸されていましたが、
南アフリカのケープタウンなどで揚がった冷凍の上物の方が高い値をつけていました。
築地場内で、上物のミナミマグロを欲しい量で販売している仲卸しは見つからなかったので
築地で仕入れたことはありませんが、
築地に通う前に仕入先にしていた地元の上物を扱う鮮魚店は、
冷凍のミナミマグロを解凍したものを時々扱っていたので、
大トロや中トロの部分をサクで仕入れました。(赤身は解凍時のドリップによるロスが大きいため仕入れず。)
ミナミマグロも本マグロと同様、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
3.メバチマグロ
築地に通う前に仕入先だった地元の上物を扱う鮮魚店は、
毎年10月くらいになると、三陸沖あたりで漁獲された生のメバチマグロをよく扱いました。
一般に夏が旬と云われますが、この時期この海域で獲れたものの方が良いのではないかと思います。
(メバチマグロはこの時期しか使っていないのであまり詳しくないですが。)
それまで、メバチマグロにあまり良いイメージを持っていなかったのですが、それが一変しました。
赤身には大きな特徴はありませんが、トロは充分に脂がのっていて、
しかもとても軽いのが持ち味で、中トロの部分をサクで仕入れて使いました。
私の知人で、長年頻繁に様々な高級すし店へ食べに行っていた人が、
「高級店じゃ出てこないけど、一番好きなのはメバチのトロなんだ。」 と言っていました。
私もメバチマグロの持ち味を高く評価しています。
メバチマグロも本マグロと同様、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
4.キハダマグロ
実は、キハダマグロの上物を使った経験も食べた経験もありません。
ただ、地元の上物を扱う鮮魚店のご主人の
「今はキハダは使わないけど、昔はいいのがけっこうあったんだよ。旨かったなぁ。」
という言葉が脳裏を離れずにいました。
ずっと後になって、
「オォォ~! これがキハダの上物か~~!」
と胸ときめくものを築地場内で見つけました。
キハダにしてはかなり大きく、脂のノリも良く・・・
残念ながら少量を買うことができなかったので使えませんでしたが、きっと美味しかったでしょうね。
先ほど触れた知人から、「キハダの旨いすしを出す店知ってる?」
と聞かれた時に答えられませんでした。
上物の本マグロを使うすしの名店は沢山知っていますし、何度も食べに行きましたが、
上物のキハダマグロを使う名店というのは、どこかにはあるのでしょうが、聞いたことがありません。
と、上記の通りキハダマグロについて書いた後、
1年以上に渡り、意識して近海生のキハダマグロの上物(とびきりの上物という訳ではないのですが)を食べてきました。
そして、すっかりキハダマグロのファンになりました。
私が働いていた日本料理店ではマグロは一切使いませんでしたが、
日本料理店でも好んで使うことも多いマグロだけに、香り ・ 味わいが上品だと思います。
一般に、産卵期で漁獲量の多い夏が旬とされ、その時期に良いものもあるのですが、
私は、漁獲量が非常に少ない冬から春先にかけてが、本当の味覚の旬だと思います。
すしにする場合は、上に述べた他のマグロよりも弱めのシャリにした方が調和するでしょう。
本マグロばかり仕入れていましたが、それ以前は他の種類のマグロも使いました。
私は、本マグロ以外のマグロも高く評価しています。
1.本マグロ (黒マグロ)
◆ 築地場内市場での仕入れ
築地場内では、トップクラスのマグロの仲卸しのうち、私の仕入先となった1軒だけが
天然の生本マグロをサクでも販売していました。
すし店や日本料理店の、「今日は霜降りの大トロだけを仕入れたい」といった需要に応えていたのだと思います。
(もちろん割高にはなります。)
数あるすしの名店の仕入先にもなっていて、その内マグロのすしで有名なある名店(客として食べに行ったこともあります)
のご主人とその場で話をしたことがありますが、「ここのマグロはすぐに使えるからいい。マグロはここ一筋です。」
と仰っていました。
大抵のマグロの仲卸しは、競り落としたマグロをその日に販売していたようですが、
その仲卸しは、使うには早すぎるマグロは2つに切った後、紙とビニール袋で包み、マグロ専用の冷蔵庫で熟成していました。
私は、熟成に耐え得る釣りや延縄で漁獲されたマグロは、1週間熟成 (既にある程度熟成されていたので2週間は無理)
して使っていましたが、確かに仕入れた日に使っても充分に美味しかったです。
マグロは、仲卸しによって切り分けられます。
生マグロは、頭部を切った後、縦に二等分されますが、
下側(下身)はマグロの重い体重がかかっているため上側 (上身)よりも安く取引されます。
骨も外され、半身になったマグロは背側と腹側に分けられ、さらに需要に応じ販売単位 (コロ)に切り分けられますが、
背側は頭に近い方から「背カミ」、「背ナカ」、「背シモ」、
腹側は「腹カミ」、「腹ナカ」、「腹シモ」と呼ばれます。
背側で最も高価なのは「背ナカ」で、赤身と中トロはこの部位が最上です。
(中トロについては、「腹カミ」が最上と考える料理人も多いと思いますが、私は「背ナカ」の中トロをより高く評価します。)
腹側で (背側を含むマグロ全体で) 最も高価なのは「腹カミ」で、大トロはこの部位が最上です。
私は色々な部位をサクに切っていただき使いましたが、特に頻繁に仕入れたのは、
背側では「背ナカ」の赤身、中トロ、背ビレ下の小トロ、
腹側では「腹カミ」の霜降りの大トロ (蛇腹の大トロと中トロの間で最も高価) です。
私が一番好きなのは、「背ナカ」の中トロです。
旬の脂がのった上物の「背ナカ」の赤身も同じくらい好きで、それを初めて握った時の父の驚いた顔が忘れられません。
高級すし店の多くが「腹カミ」ばかりを使うため、「背ナカ」の赤身の美味しさを知らない人が多いのは残念なことです。
そういう高級すし店も本当は使いたいのでしょうが、営業上やむを得ないのだと思います。
テレビや雑誌でよく高価なものとして登場する「カマ」は値が安く、通常はマグロの仲卸しの店頭には並びません。
(欲しい人には下段の冷蔵庫から取り出して販売)
脂のノリが強烈で少々クセがあるため、あぶって使われることが多いですが、
マスメディアのおかげで高価での提供が可能となり、すし店としては有難い儲け仕事となっています。
近海本マグロの旬は冬ですが、1年を通じて上物を追いかけました。
毎年9月中旬あたりから北海道戸井の延縄物が並ぶと、「ああ、これからマグロが良くなるぞ!」と内心ワクワクしました。
10月から12月上旬頃は、ほとんどの場合大間の釣り物を仕入れました。
大間のマグロが少なくなってくる12月下旬頃からは、壱岐の釣り物が中心でした。
大間や戸井のマグロはすっかり有名になりましたが、この時期の壱岐やその周辺の釣り物 (竿で釣る) もすごいです。
2月中旬頃から、3月に宮崎の油津あたりで延縄物が水揚げされる前までは、
近海物の入荷が極端に少なかったです。(入荷ゼロもあり)
私は、築地のマグロの競り値 (キロあたりの単価) を毎日インターネットでチェックしていましたが、
この時期の生本マグロの最高値は、外国からの空輸物につく日も多かったです。
近海物と地中海産や大西洋産の空輸物では、味も明らかに異なりますが、
近海物の生にこだわるすし店も私も、近海物の入荷がない時は外国産を仕入れていました。
4月から6月頃の中心は、紀州勝浦 (和歌山) で水揚げされる延縄物で、旬ではありませんが安心して使うことができました。
最悪なのは真夏です。
近海物は多く漁獲されるのですが、旬外れど真ん中である上に、漁法 (網)と漁獲後の処理が悪いらしく、
すぐに色変わりしてしまうものがほとんどでした。
この時期の生本マグロの競り (キロあたりの単価) では、ほとんど毎日外国 (主にボストン ・ カナダの釣り物)
からの空輸物に最高値がつきました。
ただし、外国からの空輸物も旬外れで、生本マグロ以外のマグロを含めた最高値は、
冷凍ミナミマグロ ・ 冷凍本マグロにつく日も多かったです。
この時期も、近海生本マグロにこだわるすし店にとっても私にとってもつらい時期で、
なんとか使えるレベルの近海物か、チュウボウと呼ばれる小さなサイズを仕入れていました。
9月初旬くらいからボチボチと北海道松前などの使えるマグロが出始め、再び戸井、大間、壱岐と続いていきました。
◆ 仕込み
築地で仕入れた本マグロには、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
マグロの握りや巻き物で特にこだわったことは次の通りです。
①ネタ (タネ)を生かす力強いシャリを使うこと
②最高級のワサビを使うこと
③脂のノリに応じたネタの厚さ (脂の強いものは薄く)
④ネタの温度 (冷たすぎず温かすぎず)
⑤マグロを適度に熟成させること
< ヅケ >
本マグロの赤身で脂のノリが少ないもの、酸味の強いものは、ヅケにした方がシャリに合うと思います。
また、冷凍の赤身は解凍時のドリップで味が相当落ちますので、ヅケにして味を補うと良いと思います。
若い頃、安さと鮮度が売りの大型鮮魚店で、冷凍の安い本マグロの赤身 (トロは高嶺の花でした)
を仕入れてはよく作りました。
ヅケの作り方は、大きく分けて2つ。
①サクまたはネタに切りつけた状態で、漬け地に漬ける。
②サクの表面を湯引き又はあぶった後、氷水等で熱をとってから漬け地に漬ける。
①の場合、漬ける時間は短時間です。長く漬け込むと塩分が強くなるだけでなく表面がヌルヌルになります。
サクでも10分から20分の間くらいで。
②の場合は、何時間も漬け込むことになり、少し硬く締まった感じになりますが、
表面のヌルヌルは避けられますので、保存して使うこともできます。
漬け地にも色々ありますが、
醤油+日本酒、醤油+ミリン、醤油+日本酒+ミリンを煮切ったもの、
又は上記にカツオ節かカツオ節のだし汁を加え一緒に煮切ったものが一般的です。
マグロ節や赤ワインを使ったものもあります。
私は、生の赤身なら、醤油+日本酒の煮切り醤油に漬けるのが好きです。
冷凍の赤身なら、醤油+日本酒+マグロ節 (マグロ節は試したことはありません)
の煮切り醤油が良いのではないかと思います。
あまり質の良くない冷凍物しか仕入れることが出来なかった若い頃は、カツオ節で味を補っていました。
使用後の漬け地に火を通した後、煮切り醤油として使ったり、繰り返し漬け地として使用する店もあります。
(調味料やカツオ節等はその都度補充される。)
そうすると味が深くなると言いますが、私自身はほとんど経験がないため何とも言えません。
2.ミナミマグロ (インドマグロ)
東京での呼称はインドマグロ。
ミナミマグロを本マグロと比べてボロクソに言う人が多いですが、私はとても高く評価しています。
本マグロとは異質の脂がのった身の甘味は無二のもので、シャリとの相性は抜群だと思います。
築地の競りの最高値 (キロあたりの単価) を見ても、
多くの場合、冷凍のミナミマグロは冷凍の本マグロよりも高く、
生の本マグロを上回ることも珍しいことではなく、市場 (しじょう) は正当に評価していると思いました。
(冷凍物は重い頭がついていませんが、その分を考慮しても高値。)
生のミナミマグロもニュージーランドなどから空輸されていましたが、
南アフリカのケープタウンなどで揚がった冷凍の上物の方が高い値をつけていました。
築地場内で、上物のミナミマグロを欲しい量で販売している仲卸しは見つからなかったので
築地で仕入れたことはありませんが、
築地に通う前に仕入先にしていた地元の上物を扱う鮮魚店は、
冷凍のミナミマグロを解凍したものを時々扱っていたので、
大トロや中トロの部分をサクで仕入れました。(赤身は解凍時のドリップによるロスが大きいため仕入れず。)
ミナミマグロも本マグロと同様、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
3.メバチマグロ
築地に通う前に仕入先だった地元の上物を扱う鮮魚店は、
毎年10月くらいになると、三陸沖あたりで漁獲された生のメバチマグロをよく扱いました。
一般に夏が旬と云われますが、この時期この海域で獲れたものの方が良いのではないかと思います。
(メバチマグロはこの時期しか使っていないのであまり詳しくないですが。)
それまで、メバチマグロにあまり良いイメージを持っていなかったのですが、それが一変しました。
赤身には大きな特徴はありませんが、トロは充分に脂がのっていて、
しかもとても軽いのが持ち味で、中トロの部分をサクで仕入れて使いました。
私の知人で、長年頻繁に様々な高級すし店へ食べに行っていた人が、
「高級店じゃ出てこないけど、一番好きなのはメバチのトロなんだ。」 と言っていました。
私もメバチマグロの持ち味を高く評価しています。
メバチマグロも本マグロと同様、特別に仕事をせず、シンプルな使い方をしました。
4.キハダマグロ
実は、キハダマグロの上物を使った経験も食べた経験もありません。
ただ、地元の上物を扱う鮮魚店のご主人の
「今はキハダは使わないけど、昔はいいのがけっこうあったんだよ。旨かったなぁ。」
という言葉が脳裏を離れずにいました。
ずっと後になって、
「オォォ~! これがキハダの上物か~~!」
と胸ときめくものを築地場内で見つけました。
キハダにしてはかなり大きく、脂のノリも良く・・・
残念ながら少量を買うことができなかったので使えませんでしたが、きっと美味しかったでしょうね。
先ほど触れた知人から、「キハダの旨いすしを出す店知ってる?」
と聞かれた時に答えられませんでした。
上物の本マグロを使うすしの名店は沢山知っていますし、何度も食べに行きましたが、
上物のキハダマグロを使う名店というのは、どこかにはあるのでしょうが、聞いたことがありません。
と、上記の通りキハダマグロについて書いた後、
1年以上に渡り、意識して近海生のキハダマグロの上物(とびきりの上物という訳ではないのですが)を食べてきました。
そして、すっかりキハダマグロのファンになりました。
私が働いていた日本料理店ではマグロは一切使いませんでしたが、
日本料理店でも好んで使うことも多いマグロだけに、香り ・ 味わいが上品だと思います。
一般に、産卵期で漁獲量の多い夏が旬とされ、その時期に良いものもあるのですが、
私は、漁獲量が非常に少ない冬から春先にかけてが、本当の味覚の旬だと思います。
すしにする場合は、上に述べた他のマグロよりも弱めのシャリにした方が調和するでしょう。