タコ (マダコ, 真蛸), レシピ tako madako recipe edomae
May 30, 2015 16:20:09 GMT 9
Post by 管理人 on May 30, 2015 16:20:09 GMT 9
東京の江戸前のすし店で昔から使われてきたタコは、マダコです。
ミズダコやイイダコを使うすし店も中にはあります。
ミズダコは、それなりに漁獲量があり、カットされても元気に動く腕が安く販売されるので、若い頃によく使いました。
従来、江戸前のすしではあまり重要視されてきませんでしたが、
最近は東京の高級すし店でも、好んで使っているところがあります。
イイダコは、子供の頃から東京湾でよく釣りました。
子持ちの時期にすしにしてみたかったのですが、
いざ仕入れようと思っても使いたいと思うようなイイダコが見つからなかったので、できませんでした。
東京でイイダコを使うすし店がほとんどない理由の一つも、同じかもしれません。
以下は、マダコについてです。
マダコの丸い部分を胴(俗に頭)、目のあたりを頭、8本あるのを腕(俗に足)と表記します。
1.仕入れ (明石, 築地場内)
マダコは、同じ産地でも産卵期の違いにより、
大きく分けて、夏に旬を迎えるものと、冬に旬を迎えるものとがあります。
したがって、きちんと選別していけば、ほぼ年間を通じて質の良いものが入手でき、
そのため1年中マダコを使うすし店もあります。
特に有名な産地は、瀬戸内海の明石と下津井(岡山)、三浦半島の佐島です。
最も美味しいサイズは、2.5キロくらいで腕がズングリと太ったものです。
2キロに満たない小さなものは風味に欠け、3キロ以上になると大味で評価は低くなります。
私は、明石のものを産地直送で、佐島のものを築地場内で仕入れました。
◆明石
マダイでもお世話になった明石の仲買のご主人に、ズングリとした2.5キロ前後の上物を、
活け締めし内臓とスミ袋をとってから送っていただきました。
明石のマダコは、卵や子を含め、料理人時代に仕事で使っていたのでよく知っているのですが、本当にすごいと思います。
明石は、マダイをはじめ他の魚介類もすごいのですが、マダコの質は、ずば抜けていると思います。
明石の上物が手に入りやすいのは夏です。
◆築地場内
築地場内には、明石や下津井の上物はありませんでした。
仕入れたのは、佐島産のズングリとした2.5キロ前後の上物。
活け締めし内臓とスミ袋をとっていただいてから、持ち帰りました。
佐島の上物が手に入りやすいのは冬です。
佐島産のマダコも、なかなかのものです。
でも、私の経験では明石産とはかなり差があります。
佐島はマダイでも有名ですが、明石産と比べた場合、マダイの差よりもマダコの差の方がずっと大きいと思います。
ただし、明石産は産地直送で、佐島産は築地経由なので、公平な比較ではありません。
マダイもマダコも、佐島産は生け簀で築地に運ばれ、築地に着いた後も生け簀に入れられ、
活け締めまでの時間が明石産よりも長く、受けるストレスも大きいので、味と香りを落としてしまいます。
2.仕込みと供し方
既に茹でられたマダコを使うすし店も多いですが、一定レベル以上の東京のすし店では、自店で調理しています。
生かそれに近い形で使われることもありますが、普通は茹でダコか煮ダコにします。(煮ダコの方が多いと思います)
※ここでは、「茹でダコ」はダシ・ 醤油 ・ 日本酒などで味をつけないもの、煮ダコは味をつけるものとして定義しています。
両方とも紹介させていただきます。
普通は活けのマダコをその日のうちに調理するのですが、私はあえて活け締めの翌日に調理しました。
明石産の場合は、活け締めの翌日に届くよう手配したので、届いた日に調理するわけですが、
佐島産は築地で仕入れた日には調理せず、1日置きました。
2.5キロ級以上のマダコの場合、その方が美味しいと思います。
ただし、もっと小さいマダコの場合は、1日置くことで身質が変わり、
仕上がりに悪影響が出るかもしれませんので、オススメできません。
タコを茹でたり煮たり蒸したりする場合に、硬さが問題になります。
柔らかく仕上げる加熱方法には、通常の長時間加熱、圧力釜や過熱水蒸気などによる高温での加熱、
真空調理のような低温での加熱などがあります。
いずれも、香りと味は多少なりとも犠牲になります。
低温調理は(真空調理の場合は湯通し・冷却・真空パック後)、
低温(マダコは60℃くらいが一般的)で火を通していくのですが、私の経験では満足な香りが出ません。
柔らかさと味・香りをある程度両立させるには、
工夫を加えた上で、茹で汁や煮汁の中で長時間加熱するのが良いと思います。
桜煮は長時間煮ることで柔らかくしましたが、茹でダコの場合は柔らかさよりも味と香りを重視する過熱をし、
その分、塩で身を締めることを避け、下処理に手間をかけました。
また、柔らかくしたり、色を良くするために使われる種々の食材等は、味と香りに影響があるので使いませんでした。
【下処理 (茹でダコ ・ 煮ダコ 共通)】
普通は塩(最も一般的)・ダイコンおろし(柔らかくなる)・ヌカ(塩やダイコンおろしよりも味・香りへの影響が少ない)
などを使って揉んでから、ヌメリと共に水で洗い流すのですが、私は何も使わずに揉み、洗い流さずに使いました。
これもマダコ調理の技法の一つです。
塩で身が締まること、余分な味・香りがつくことを避け、
茹でたり煮たり湯通しする場合の味・香りのロスを少なくし、表皮を剥けにくくすることが出来ます。
茹でダコで、芯にギリギリ火が入る程度に加熱し、香りを最大限に引き出す場合、どうしても硬くなりますので、
歯切れを良くするために、下処理の段階で筋肉繊維を徹底的に破壊することが重要になります。
①胴をひっくり返して、内臓とスミ袋をとり、胴を元に戻します。(私は、仕入れの段階で取っていただきました。)
②包丁で目をえぐるようにして取ります。
③胴の中を流水で洗い、更に表面の汚れをタワシと流水でざっと洗い落とし、ザルに上げて水を切ります。
④マダコを大きなボウルに入れ、力を入れてひたすら手で揉みまくり、
更にビール瓶などで叩きまくり、筋肉繊維を破壊します。
これにより、ヌメリが浮いてくるだけでなく、柔らかくなり、仕上がった時の味も香りも食感も良くなります。
叩く際は、凹凸のないものを使い、表皮が傷つかないよう気をつけてください。
ヌメリが水のようにサラッとし、マダコの硬直が大分ゆるんでダラッとしたらOKです。
2.5キロ級のマダコの場合、1時間以上かかります。
体力に自信のない方は、マダコをビニール袋に入れるなどしてから、
足で徹底的に踏んだ後に手揉みし叩くと楽かもしれません。
ちなみに、桜煮のように長時間加熱する場合は、ここまでやらなくても柔らかくなります。
(ただし、ヌメリが水のようにサラッとするまで揉むことは、味と香りを良くするために必須です。)
⑤マダコの胴にフック状のものを引っかけてつるし、表面についている余分な水分を落とします。
※量が多すぎるので、この後に腕の付け根にある口(カラストンビ)を包丁でとり、
私が使う何本かの腕と胴、翌日に妻が使う残りの部分に切り分けました。
◆茹でダコ
マダコそのものの味と香りをダイレクトに味わうのに最適です。
マダコを柔らかくするため、色をきれいにするため、あるいはマダコのクセをとるためとして、
アズキ・番茶・ほうじ茶・ダイコン・重曹・酢などが使われることがありますが、
ダイレクトな味と香りを重視するならば、使わない方がいいと思います。
上物を扱う地元の鮮魚店で、産地で塩茹でされた上物のマダコを試食して、とても感心したことがあります。
茹で汁を繰り返し使い(その加工業者の場合)、尚且つ一度に多量のマダコを茹でるため、
非常に濃厚なマダコのダシ汁で煮るのと同じわけで、
マダコ自体の味と香りの濃さでは、すし店・料理店・個人の及ぶレベルではありません。
この産地加工の茹でダコが、一つの基準となりました。
改良を加えるとしたら、もう少し柔らかくすること、
もう少し火を入れて一番香りが出る状態にすること、
(加工業者は、目方が減ること・硬くなることを嫌い、火の通しを浅くすることが多い。)
胴と1本1本の腕それぞれに適した火の入れ方をすること、適温で供することだと思いました。
少量のマダコを普通に茹でても、それなりに美味しくはなりますが、
茹で汁に出ていくエキスの方が、茹で汁から入ってくるエキスよりもはるかに多くなります。
そのため、茹で汁を繰り返し使うことで、茹で汁のエキスの濃度を高くする店もあります。
これを自宅でやるならば、下処理の後に水で洗ってから茹で、
茹で汁を冷ましてから冷凍庫で保存し、次回、また次回と水を加えながら繰り返し茹でていけば良いでしょう。
ただし、茹で汁を繰り返し使うと、揉む時に塩を使わなくても、塩を加えずに茹でても、
茹で汁の中にはマダコの持つ塩分が蓄積していくため、
長時間茹でない限り、仕上がりがかなり硬くなってしまう欠点があります。
塩で身が硬くなることを避け、なお且つマダコのエキス流出を少なくする茹で方の一つは、
下処理の後に水で洗わず、塩を加えない湯で茹でることです。
(茹で上がり後はフック状のものを引っかけてつるし、自然に適温まで冷ます。)
この方法は、ある有名な高級すし店とその出身者の店等で行われている仕込みで、
それらの店では、沸騰させながら茹でて、芯まできっちりと火を通しています。
実際に何度か、その高級すし店と出身者の営む有名店で食べてみましたが、
評論家などから絶賛されている割には、味と香りが薄いと感じました。
小さ目のマダコを使うこと ・ 仕込みに塩を使わないこと ・ 丁寧な下処理 ・
洗わずに沸騰させながら芯まで火を通すこと ・ 薄く切って握ること ・ 塩をつけて人肌の温度で供することに、
すしネタ(タネ)としてのマダコの味 ・ 香りと硬さの妥協点を見出したのだなぁ、とも思いました。
私としては、生っぽく仕上げる場合、ならびに腕の細いマダコを使う場合は、この茹で方をオススメします。
(マダコ投入後に再沸騰してきたら火を止め、好みによりしばらく漬け込んでください。)
芯の方まで火を通していく場合は、沸騰させずに茹でた方が、硬くはなりますがエキスの流出は少なくて済みます。
柔らかくする場合は、沸騰させて長く茹でればいいのですが、かなりエキスが出てしまいます。
私がこだわったことは、マダカアワビの仕込みで述べたことと共通する点が多いのですが、
茹でることにより湯に出てしまうエキスを再びマダコに戻していくこと、
塩で身を締めないこと、香りを最大限に引き出すこと、それぞれの腕と胴に適した火の通しとすること、
まだ温度のあるうちに(人肌かそれよりも少し温かいくらい)供することです。
ですから、すし店で行われている方法とは全く異なります。
【レシピ (茹でダコ)】 ※芯の方まで火を通す調理に向いています
(材料)
・下処理済みのマダコ 適量
・茹で用の水(軟水のミネラルウォーター) 適量
・湯通し用の水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
①2つの鍋に水を入れ沸かします。
1つは湯通し用で、大きな鍋にたっぷりと沸かします。
もう1つは茹で用で、切ったマダコがすっぽりと入り(重ねても良い)、且つ出来るだけ小さく、
焦げ付きにくい鍋で、水(ミネラルウォーター)の量は、マダコを入れた時にヒタヒタになるくらいです。
こちらも沸かします。
湯には塩を加えません。
②湯通し用の湯の中で、まず胴を裏返して数秒湯通しし、胴を元に戻してから全体を入れ、
色が変わるまでさっと湯通しし(5秒前後)、ザルに上げます。
マダコを入れた時に急激に温度が下がらないよう、湯通し用の湯はたっぷりにしてください。
そうしないと味を落とします。
③マダコの胴と腕を切り離し、更に腕を1本ずつに切り分けます。
熱々で皮が剥がれやすい状態なので、気をつけてください。
④太い腕から順に時間差をつけて茹で用の鍋に入れ、アクをこまめにとりながら(この後も)、
沸騰させずに茹でていきます。
胴は薄いので、更に時間差をつけてから入れます。
茹で用の鍋の湯温は、90℃前後を維持できるよう火加減を調整し、
沸騰しそうになったら火を止め、しばらくしてから再度火を着けてください。
また、湯が減ってマダコが湯の表面に出てきた時は、ミネラルウォーターをひたひたになるまで加えてください。
⑤好みの加減まで火を通していきます。
どの程度火を通すかは好みによりますが、芯にギリギリ火が通ったくらいが、一番香りが出ます。
(ただし、硬くはなります。)
私は、余熱による火の通しも計算した上で、これを狙いました。
茹で加減は、ローストビーフを作る時のように、マダコの腕の太い箇所に金串を刺してから、
金串を唇の下に当てると、分かりやすいかと思います。(芯の温度はまわりよりも低い)
この沸騰させない茹で方だと、2.5キロクラスのマダコで、20~40分くらいが茹で時間の目安です。
柔らかく仕上げたければ、最初から軽く沸騰させながら長く茹でてください。
この沸騰させて柔らかく仕上げる茹で方では、時間の目安は40~60分くらいです。
生っぽく仕上げたい場合、ならびに腕の細いマダコを使う場合は、このレシピによらず、先に述べた茹で方にしてください。
⑥予め温めていたボウル状の器にマダコを移し、ラップして保温します。
マダコには、少量の茹で汁をからませておきます。
⑦鍋の茹で汁を、別の鍋に濾して入れ、アクを取りながら、焦がさないよう木べらを使い、煮詰めていきます。
⑧茹で汁が少なくなってきたら、マダコが入っている器の茹で汁も鍋に入れ、味を見ます。
茹で汁には、マダコから出た塩分があります。(沸騰させて長く茹でた場合、ある程度塩分が強くなります。)
この後の手順で、マダコに茹で汁をからませますが、塩気が強いと身が硬く締まってしまいますので、
どの程度まで煮詰めるかをここで判断します。
茹でる前に湯通ししているので、下司な味にはならないはずですが、
下司だと思った場合は、煮切った日本酒を入れて調整してください。
⑨味を見ながらターゲットまで茹で汁を煮詰めたら、火を止めます。
⑩鍋の表面を氷水につけ、マダコと同じくらいの温度にまで冷やし、鍋表面の水気を拭き取ります。
⑪鍋にマダコを移し、煮詰めた茹で汁をよくからませ、フタをして室温に置きます。
途中、何度か茹で汁をからめ直してください。
【供し方 (茹でダコ)】
腕の細い部分は、火が入り過ぎているので使いません。
人肌かそれよりも少し温度のあるうちに供します。
やはりなんといっても、胴も腕も大きく切って食べるのが一番です。
食べ手によっては、硬さを加減するために、少し薄く切ってから刃打ちするなどすると良いでしょう。
好みで使えるよう、塩とワサビを添えます。
握りには腕の太い部分を使います。
つるっとしていて握りづらいので、シャリと接する面には、切り付けてから細かく包丁を入れるか、
切り付けの際にギザギザと波状に包丁を入れると良いです。
シャリと硬さを調和させるためにも、適宜包丁を使ってください。
薄く切った方が柔らかく握りやすくもありますが、厚みがあった方が、美味しいです。
厚く切りつける場合は、包丁目を沢山入れ、食感と握りやすさを調整してください。
表面中央に縦長に包丁を入れ、鞍掛(三角屋根のような形)にすると握りやすくなります。
少量のワサビを挟み、塩又は煮切り醤油をつけて供します。
◆煮ダコ
煮ダコには、茹でダコとあまり変わらないものも含め、色々な仕込みがあります。
東京の江戸前のすし店で、多く行われている煮ダコの仕込みは、
以下のいずれかの煮汁で柔らかくなるまで長時間煮る方法だと思います。
(番茶やアズキ等が併せて使われることも多い。)
a. 水 + 日本酒 + 塩
b. 水 + 日本酒 + 醤油
c. 水 + 日本酒 + 塩 + 醤油(少量)
d. a~cのいずれか - 水 + 昆布ダシ (カツオダシが使われることも)
e. a~dのいずれか + 繰り返し使っている煮汁
私の一番のオススメは、桜煮と呼ばれる煮方です。
江戸前のすしで桜煮と云えば、狭義には日本酒・砂糖・醤油等を使って柔らかく煮たものを指します。
味は、このサイトで紹介しているアナゴ ・ イカの印籠詰め (印籠づけ) ・ ハマグリに近いものです。
シャリとの相性は、マダコのすしの中では随一だと思います。
マダコの桜煮のすしに、アナゴの煮汁で作った煮ツメを使うすし店がほとんどですが、
私はマダコの煮汁で煮ツメを作りました。
煮ツメをつけることで、煮汁に出るマダコのエキスを再びマダコに戻すことが出来ますし、
それよりも何よりもマダコの桜煮に一番合う煮ツメだからです。
茹でダコと同じように、まだ少し温度のあるうちに(人肌かそれよりも少し温かいくらい)供します。
【レシピ (桜煮)】
(材料)
・下処理済みのマダコの腕 適量
・湯通し用の水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
・煮汁用の水(軟水のミネラルウォーター) 適量
・造りの良い純米酒 (ただし苦みを感じさせないもの。古酒は不可。) 適量
・造りの良いコクのある純本ミリン (ただし熟成香が控えめなもの) 適量
・白ザラメ(又は砂糖) 適量
・造りの良い濃口醤油 (香りは控えめで色の明るいもの) 適量
★煮方
①大きな鍋に湯通し用の水をたっぷり入れ沸かします。
②別の鍋に純米酒を入れ、煮切ってアルコール分をとばし、白ザラメを入れて溶かし、濃口醤油を加えます。
マダコを煮た後に、純本ミリンを加えて煮詰め、ツメを作りますので、白ザラメも濃口醤油も控えめにしてください。
マダコからも塩分が出ます。
甘味と塩分が強いと、煮汁で作るツメの味も濃くなってしまいます。
③②の味をチェックし、ミネラルウォーターで薄めて沸かします。
これが煮汁になります。
煮汁の量はマダコの腕を入れた時にヒタヒタになるくらいです。
純米酒とミネラルウォーターの比率は4:1を目安にしてください。(純米酒だけでもかまいません。)
④湯通し用の湯の中で、色が変わるまでさっと湯通しし(5秒前後)、ザルに上げます。
マダコを入れた時に急激に温度が下がらないよう、湯通し用の湯はたっぷりにしてください。
そうしないと味を落とします。
胴を使う場合は、茹でダコの場合と同じように湯通ししてください。
⑤腕を1本ずつに切り分けます。
熱々で皮が剥がれやすい状態なので、気をつけてください。
⑥沸騰した煮汁の中に、太いものから順に時間差をつけて腕を1本ずつ入れます。
⑦再度沸騰したらアクを取り、落としぶたをし、軽い沸騰を維持できる程度に火力を調整し、柔らかくなるまで煮ます。
この後も、アクはマメに取ってください。
⑧柔らかくなったら火を止めます。
竹グシ等を、腕の太い部分に通すと、柔らかさの程度が分かりやすいです。
煮る時間は、2.5キロ級のマダコで、40~60分くらいを目安にしてください。
煮る時間を少し短くし、その分煮汁に漬け込みながら柔らかく仕上げてもOKです。
⑨予め温めておいたボウル状の器にマダコを移し、少量の煮汁をかけ、ラップして保温します。
★煮ツメの作り方
①純本ミリンを別の鍋に入れ、煮切ります。
②①の鍋に、煮汁を濾して入れ火にかけ、まめにアクをとりながら煮詰めていきます。
③煮汁が少なくなってきたら、マダコが入っている器の茹で汁も鍋に入れ、好みの味に調整し、
焦がさぬよう木べらでかき混ぜながら弱火で煮続け、好みのトロミがついたら完成です。
(甘味又は塩分の強いツメにならないよう注意。塩分が強すぎる場合は、煮切った純本ミリンで調整してください。)
④冷めたら、器に移します。
【供し方 (桜煮)】
腕の細い部分は、火が入り過ぎているので使いません。
人肌かそれよりも少し温度のあるうちに供します。
シャリとの相性がとても良いので、握り専用に使いました。
切りつけ方は茹でダコと同じですが、柔らかいのであまり包丁を入れなくても大丈夫です。
味が濃厚なので、厚く切りすぎると味のバランスが悪くなることに注意してください。
ワサビは挟まず握り、マダコの煮汁で作った煮ツメをつけて供します。
おろしたゆずの皮をシャリにつけたり、煮ツメをつけた後に直接振りかけても合います。
ミズダコやイイダコを使うすし店も中にはあります。
ミズダコは、それなりに漁獲量があり、カットされても元気に動く腕が安く販売されるので、若い頃によく使いました。
従来、江戸前のすしではあまり重要視されてきませんでしたが、
最近は東京の高級すし店でも、好んで使っているところがあります。
イイダコは、子供の頃から東京湾でよく釣りました。
子持ちの時期にすしにしてみたかったのですが、
いざ仕入れようと思っても使いたいと思うようなイイダコが見つからなかったので、できませんでした。
東京でイイダコを使うすし店がほとんどない理由の一つも、同じかもしれません。
以下は、マダコについてです。
マダコの丸い部分を胴(俗に頭)、目のあたりを頭、8本あるのを腕(俗に足)と表記します。
1.仕入れ (明石, 築地場内)
マダコは、同じ産地でも産卵期の違いにより、
大きく分けて、夏に旬を迎えるものと、冬に旬を迎えるものとがあります。
したがって、きちんと選別していけば、ほぼ年間を通じて質の良いものが入手でき、
そのため1年中マダコを使うすし店もあります。
特に有名な産地は、瀬戸内海の明石と下津井(岡山)、三浦半島の佐島です。
最も美味しいサイズは、2.5キロくらいで腕がズングリと太ったものです。
2キロに満たない小さなものは風味に欠け、3キロ以上になると大味で評価は低くなります。
私は、明石のものを産地直送で、佐島のものを築地場内で仕入れました。
◆明石
マダイでもお世話になった明石の仲買のご主人に、ズングリとした2.5キロ前後の上物を、
活け締めし内臓とスミ袋をとってから送っていただきました。
明石のマダコは、卵や子を含め、料理人時代に仕事で使っていたのでよく知っているのですが、本当にすごいと思います。
明石は、マダイをはじめ他の魚介類もすごいのですが、マダコの質は、ずば抜けていると思います。
明石の上物が手に入りやすいのは夏です。
◆築地場内
築地場内には、明石や下津井の上物はありませんでした。
仕入れたのは、佐島産のズングリとした2.5キロ前後の上物。
活け締めし内臓とスミ袋をとっていただいてから、持ち帰りました。
佐島の上物が手に入りやすいのは冬です。
佐島産のマダコも、なかなかのものです。
でも、私の経験では明石産とはかなり差があります。
佐島はマダイでも有名ですが、明石産と比べた場合、マダイの差よりもマダコの差の方がずっと大きいと思います。
ただし、明石産は産地直送で、佐島産は築地経由なので、公平な比較ではありません。
マダイもマダコも、佐島産は生け簀で築地に運ばれ、築地に着いた後も生け簀に入れられ、
活け締めまでの時間が明石産よりも長く、受けるストレスも大きいので、味と香りを落としてしまいます。
2.仕込みと供し方
既に茹でられたマダコを使うすし店も多いですが、一定レベル以上の東京のすし店では、自店で調理しています。
生かそれに近い形で使われることもありますが、普通は茹でダコか煮ダコにします。(煮ダコの方が多いと思います)
※ここでは、「茹でダコ」はダシ・ 醤油 ・ 日本酒などで味をつけないもの、煮ダコは味をつけるものとして定義しています。
両方とも紹介させていただきます。
普通は活けのマダコをその日のうちに調理するのですが、私はあえて活け締めの翌日に調理しました。
明石産の場合は、活け締めの翌日に届くよう手配したので、届いた日に調理するわけですが、
佐島産は築地で仕入れた日には調理せず、1日置きました。
2.5キロ級以上のマダコの場合、その方が美味しいと思います。
ただし、もっと小さいマダコの場合は、1日置くことで身質が変わり、
仕上がりに悪影響が出るかもしれませんので、オススメできません。
タコを茹でたり煮たり蒸したりする場合に、硬さが問題になります。
柔らかく仕上げる加熱方法には、通常の長時間加熱、圧力釜や過熱水蒸気などによる高温での加熱、
真空調理のような低温での加熱などがあります。
いずれも、香りと味は多少なりとも犠牲になります。
低温調理は(真空調理の場合は湯通し・冷却・真空パック後)、
低温(マダコは60℃くらいが一般的)で火を通していくのですが、私の経験では満足な香りが出ません。
柔らかさと味・香りをある程度両立させるには、
工夫を加えた上で、茹で汁や煮汁の中で長時間加熱するのが良いと思います。
桜煮は長時間煮ることで柔らかくしましたが、茹でダコの場合は柔らかさよりも味と香りを重視する過熱をし、
その分、塩で身を締めることを避け、下処理に手間をかけました。
また、柔らかくしたり、色を良くするために使われる種々の食材等は、味と香りに影響があるので使いませんでした。
【下処理 (茹でダコ ・ 煮ダコ 共通)】
普通は塩(最も一般的)・ダイコンおろし(柔らかくなる)・ヌカ(塩やダイコンおろしよりも味・香りへの影響が少ない)
などを使って揉んでから、ヌメリと共に水で洗い流すのですが、私は何も使わずに揉み、洗い流さずに使いました。
これもマダコ調理の技法の一つです。
塩で身が締まること、余分な味・香りがつくことを避け、
茹でたり煮たり湯通しする場合の味・香りのロスを少なくし、表皮を剥けにくくすることが出来ます。
茹でダコで、芯にギリギリ火が入る程度に加熱し、香りを最大限に引き出す場合、どうしても硬くなりますので、
歯切れを良くするために、下処理の段階で筋肉繊維を徹底的に破壊することが重要になります。
①胴をひっくり返して、内臓とスミ袋をとり、胴を元に戻します。(私は、仕入れの段階で取っていただきました。)
②包丁で目をえぐるようにして取ります。
③胴の中を流水で洗い、更に表面の汚れをタワシと流水でざっと洗い落とし、ザルに上げて水を切ります。
④マダコを大きなボウルに入れ、力を入れてひたすら手で揉みまくり、
更にビール瓶などで叩きまくり、筋肉繊維を破壊します。
これにより、ヌメリが浮いてくるだけでなく、柔らかくなり、仕上がった時の味も香りも食感も良くなります。
叩く際は、凹凸のないものを使い、表皮が傷つかないよう気をつけてください。
ヌメリが水のようにサラッとし、マダコの硬直が大分ゆるんでダラッとしたらOKです。
2.5キロ級のマダコの場合、1時間以上かかります。
体力に自信のない方は、マダコをビニール袋に入れるなどしてから、
足で徹底的に踏んだ後に手揉みし叩くと楽かもしれません。
ちなみに、桜煮のように長時間加熱する場合は、ここまでやらなくても柔らかくなります。
(ただし、ヌメリが水のようにサラッとするまで揉むことは、味と香りを良くするために必須です。)
⑤マダコの胴にフック状のものを引っかけてつるし、表面についている余分な水分を落とします。
※量が多すぎるので、この後に腕の付け根にある口(カラストンビ)を包丁でとり、
私が使う何本かの腕と胴、翌日に妻が使う残りの部分に切り分けました。
◆茹でダコ
マダコそのものの味と香りをダイレクトに味わうのに最適です。
マダコを柔らかくするため、色をきれいにするため、あるいはマダコのクセをとるためとして、
アズキ・番茶・ほうじ茶・ダイコン・重曹・酢などが使われることがありますが、
ダイレクトな味と香りを重視するならば、使わない方がいいと思います。
上物を扱う地元の鮮魚店で、産地で塩茹でされた上物のマダコを試食して、とても感心したことがあります。
茹で汁を繰り返し使い(その加工業者の場合)、尚且つ一度に多量のマダコを茹でるため、
非常に濃厚なマダコのダシ汁で煮るのと同じわけで、
マダコ自体の味と香りの濃さでは、すし店・料理店・個人の及ぶレベルではありません。
この産地加工の茹でダコが、一つの基準となりました。
改良を加えるとしたら、もう少し柔らかくすること、
もう少し火を入れて一番香りが出る状態にすること、
(加工業者は、目方が減ること・硬くなることを嫌い、火の通しを浅くすることが多い。)
胴と1本1本の腕それぞれに適した火の入れ方をすること、適温で供することだと思いました。
少量のマダコを普通に茹でても、それなりに美味しくはなりますが、
茹で汁に出ていくエキスの方が、茹で汁から入ってくるエキスよりもはるかに多くなります。
そのため、茹で汁を繰り返し使うことで、茹で汁のエキスの濃度を高くする店もあります。
これを自宅でやるならば、下処理の後に水で洗ってから茹で、
茹で汁を冷ましてから冷凍庫で保存し、次回、また次回と水を加えながら繰り返し茹でていけば良いでしょう。
ただし、茹で汁を繰り返し使うと、揉む時に塩を使わなくても、塩を加えずに茹でても、
茹で汁の中にはマダコの持つ塩分が蓄積していくため、
長時間茹でない限り、仕上がりがかなり硬くなってしまう欠点があります。
塩で身が硬くなることを避け、なお且つマダコのエキス流出を少なくする茹で方の一つは、
下処理の後に水で洗わず、塩を加えない湯で茹でることです。
(茹で上がり後はフック状のものを引っかけてつるし、自然に適温まで冷ます。)
この方法は、ある有名な高級すし店とその出身者の店等で行われている仕込みで、
それらの店では、沸騰させながら茹でて、芯まできっちりと火を通しています。
実際に何度か、その高級すし店と出身者の営む有名店で食べてみましたが、
評論家などから絶賛されている割には、味と香りが薄いと感じました。
小さ目のマダコを使うこと ・ 仕込みに塩を使わないこと ・ 丁寧な下処理 ・
洗わずに沸騰させながら芯まで火を通すこと ・ 薄く切って握ること ・ 塩をつけて人肌の温度で供することに、
すしネタ(タネ)としてのマダコの味 ・ 香りと硬さの妥協点を見出したのだなぁ、とも思いました。
私としては、生っぽく仕上げる場合、ならびに腕の細いマダコを使う場合は、この茹で方をオススメします。
(マダコ投入後に再沸騰してきたら火を止め、好みによりしばらく漬け込んでください。)
芯の方まで火を通していく場合は、沸騰させずに茹でた方が、硬くはなりますがエキスの流出は少なくて済みます。
柔らかくする場合は、沸騰させて長く茹でればいいのですが、かなりエキスが出てしまいます。
私がこだわったことは、マダカアワビの仕込みで述べたことと共通する点が多いのですが、
茹でることにより湯に出てしまうエキスを再びマダコに戻していくこと、
塩で身を締めないこと、香りを最大限に引き出すこと、それぞれの腕と胴に適した火の通しとすること、
まだ温度のあるうちに(人肌かそれよりも少し温かいくらい)供することです。
ですから、すし店で行われている方法とは全く異なります。
【レシピ (茹でダコ)】 ※芯の方まで火を通す調理に向いています
(材料)
・下処理済みのマダコ 適量
・茹で用の水(軟水のミネラルウォーター) 適量
・湯通し用の水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
①2つの鍋に水を入れ沸かします。
1つは湯通し用で、大きな鍋にたっぷりと沸かします。
もう1つは茹で用で、切ったマダコがすっぽりと入り(重ねても良い)、且つ出来るだけ小さく、
焦げ付きにくい鍋で、水(ミネラルウォーター)の量は、マダコを入れた時にヒタヒタになるくらいです。
こちらも沸かします。
湯には塩を加えません。
②湯通し用の湯の中で、まず胴を裏返して数秒湯通しし、胴を元に戻してから全体を入れ、
色が変わるまでさっと湯通しし(5秒前後)、ザルに上げます。
マダコを入れた時に急激に温度が下がらないよう、湯通し用の湯はたっぷりにしてください。
そうしないと味を落とします。
③マダコの胴と腕を切り離し、更に腕を1本ずつに切り分けます。
熱々で皮が剥がれやすい状態なので、気をつけてください。
④太い腕から順に時間差をつけて茹で用の鍋に入れ、アクをこまめにとりながら(この後も)、
沸騰させずに茹でていきます。
胴は薄いので、更に時間差をつけてから入れます。
茹で用の鍋の湯温は、90℃前後を維持できるよう火加減を調整し、
沸騰しそうになったら火を止め、しばらくしてから再度火を着けてください。
また、湯が減ってマダコが湯の表面に出てきた時は、ミネラルウォーターをひたひたになるまで加えてください。
⑤好みの加減まで火を通していきます。
どの程度火を通すかは好みによりますが、芯にギリギリ火が通ったくらいが、一番香りが出ます。
(ただし、硬くはなります。)
私は、余熱による火の通しも計算した上で、これを狙いました。
茹で加減は、ローストビーフを作る時のように、マダコの腕の太い箇所に金串を刺してから、
金串を唇の下に当てると、分かりやすいかと思います。(芯の温度はまわりよりも低い)
この沸騰させない茹で方だと、2.5キロクラスのマダコで、20~40分くらいが茹で時間の目安です。
柔らかく仕上げたければ、最初から軽く沸騰させながら長く茹でてください。
この沸騰させて柔らかく仕上げる茹で方では、時間の目安は40~60分くらいです。
生っぽく仕上げたい場合、ならびに腕の細いマダコを使う場合は、このレシピによらず、先に述べた茹で方にしてください。
⑥予め温めていたボウル状の器にマダコを移し、ラップして保温します。
マダコには、少量の茹で汁をからませておきます。
⑦鍋の茹で汁を、別の鍋に濾して入れ、アクを取りながら、焦がさないよう木べらを使い、煮詰めていきます。
⑧茹で汁が少なくなってきたら、マダコが入っている器の茹で汁も鍋に入れ、味を見ます。
茹で汁には、マダコから出た塩分があります。(沸騰させて長く茹でた場合、ある程度塩分が強くなります。)
この後の手順で、マダコに茹で汁をからませますが、塩気が強いと身が硬く締まってしまいますので、
どの程度まで煮詰めるかをここで判断します。
茹でる前に湯通ししているので、下司な味にはならないはずですが、
下司だと思った場合は、煮切った日本酒を入れて調整してください。
⑨味を見ながらターゲットまで茹で汁を煮詰めたら、火を止めます。
⑩鍋の表面を氷水につけ、マダコと同じくらいの温度にまで冷やし、鍋表面の水気を拭き取ります。
⑪鍋にマダコを移し、煮詰めた茹で汁をよくからませ、フタをして室温に置きます。
途中、何度か茹で汁をからめ直してください。
【供し方 (茹でダコ)】
腕の細い部分は、火が入り過ぎているので使いません。
人肌かそれよりも少し温度のあるうちに供します。
やはりなんといっても、胴も腕も大きく切って食べるのが一番です。
食べ手によっては、硬さを加減するために、少し薄く切ってから刃打ちするなどすると良いでしょう。
好みで使えるよう、塩とワサビを添えます。
握りには腕の太い部分を使います。
つるっとしていて握りづらいので、シャリと接する面には、切り付けてから細かく包丁を入れるか、
切り付けの際にギザギザと波状に包丁を入れると良いです。
シャリと硬さを調和させるためにも、適宜包丁を使ってください。
薄く切った方が柔らかく握りやすくもありますが、厚みがあった方が、美味しいです。
厚く切りつける場合は、包丁目を沢山入れ、食感と握りやすさを調整してください。
表面中央に縦長に包丁を入れ、鞍掛(三角屋根のような形)にすると握りやすくなります。
少量のワサビを挟み、塩又は煮切り醤油をつけて供します。
◆煮ダコ
煮ダコには、茹でダコとあまり変わらないものも含め、色々な仕込みがあります。
東京の江戸前のすし店で、多く行われている煮ダコの仕込みは、
以下のいずれかの煮汁で柔らかくなるまで長時間煮る方法だと思います。
(番茶やアズキ等が併せて使われることも多い。)
a. 水 + 日本酒 + 塩
b. 水 + 日本酒 + 醤油
c. 水 + 日本酒 + 塩 + 醤油(少量)
d. a~cのいずれか - 水 + 昆布ダシ (カツオダシが使われることも)
e. a~dのいずれか + 繰り返し使っている煮汁
私の一番のオススメは、桜煮と呼ばれる煮方です。
江戸前のすしで桜煮と云えば、狭義には日本酒・砂糖・醤油等を使って柔らかく煮たものを指します。
味は、このサイトで紹介しているアナゴ ・ イカの印籠詰め (印籠づけ) ・ ハマグリに近いものです。
シャリとの相性は、マダコのすしの中では随一だと思います。
マダコの桜煮のすしに、アナゴの煮汁で作った煮ツメを使うすし店がほとんどですが、
私はマダコの煮汁で煮ツメを作りました。
煮ツメをつけることで、煮汁に出るマダコのエキスを再びマダコに戻すことが出来ますし、
それよりも何よりもマダコの桜煮に一番合う煮ツメだからです。
茹でダコと同じように、まだ少し温度のあるうちに(人肌かそれよりも少し温かいくらい)供します。
【レシピ (桜煮)】
(材料)
・下処理済みのマダコの腕 適量
・湯通し用の水(高性能の浄水器で、水道水を浄水・軟水化したもの) 適量
・煮汁用の水(軟水のミネラルウォーター) 適量
・造りの良い純米酒 (ただし苦みを感じさせないもの。古酒は不可。) 適量
・造りの良いコクのある純本ミリン (ただし熟成香が控えめなもの) 適量
・白ザラメ(又は砂糖) 適量
・造りの良い濃口醤油 (香りは控えめで色の明るいもの) 適量
★煮方
①大きな鍋に湯通し用の水をたっぷり入れ沸かします。
②別の鍋に純米酒を入れ、煮切ってアルコール分をとばし、白ザラメを入れて溶かし、濃口醤油を加えます。
マダコを煮た後に、純本ミリンを加えて煮詰め、ツメを作りますので、白ザラメも濃口醤油も控えめにしてください。
マダコからも塩分が出ます。
甘味と塩分が強いと、煮汁で作るツメの味も濃くなってしまいます。
③②の味をチェックし、ミネラルウォーターで薄めて沸かします。
これが煮汁になります。
煮汁の量はマダコの腕を入れた時にヒタヒタになるくらいです。
純米酒とミネラルウォーターの比率は4:1を目安にしてください。(純米酒だけでもかまいません。)
④湯通し用の湯の中で、色が変わるまでさっと湯通しし(5秒前後)、ザルに上げます。
マダコを入れた時に急激に温度が下がらないよう、湯通し用の湯はたっぷりにしてください。
そうしないと味を落とします。
胴を使う場合は、茹でダコの場合と同じように湯通ししてください。
⑤腕を1本ずつに切り分けます。
熱々で皮が剥がれやすい状態なので、気をつけてください。
⑥沸騰した煮汁の中に、太いものから順に時間差をつけて腕を1本ずつ入れます。
⑦再度沸騰したらアクを取り、落としぶたをし、軽い沸騰を維持できる程度に火力を調整し、柔らかくなるまで煮ます。
この後も、アクはマメに取ってください。
⑧柔らかくなったら火を止めます。
竹グシ等を、腕の太い部分に通すと、柔らかさの程度が分かりやすいです。
煮る時間は、2.5キロ級のマダコで、40~60分くらいを目安にしてください。
煮る時間を少し短くし、その分煮汁に漬け込みながら柔らかく仕上げてもOKです。
⑨予め温めておいたボウル状の器にマダコを移し、少量の煮汁をかけ、ラップして保温します。
★煮ツメの作り方
①純本ミリンを別の鍋に入れ、煮切ります。
②①の鍋に、煮汁を濾して入れ火にかけ、まめにアクをとりながら煮詰めていきます。
③煮汁が少なくなってきたら、マダコが入っている器の茹で汁も鍋に入れ、好みの味に調整し、
焦がさぬよう木べらでかき混ぜながら弱火で煮続け、好みのトロミがついたら完成です。
(甘味又は塩分の強いツメにならないよう注意。塩分が強すぎる場合は、煮切った純本ミリンで調整してください。)
④冷めたら、器に移します。
【供し方 (桜煮)】
腕の細い部分は、火が入り過ぎているので使いません。
人肌かそれよりも少し温度のあるうちに供します。
シャリとの相性がとても良いので、握り専用に使いました。
切りつけ方は茹でダコと同じですが、柔らかいのであまり包丁を入れなくても大丈夫です。
味が濃厚なので、厚く切りすぎると味のバランスが悪くなることに注意してください。
ワサビは挟まず握り、マダコの煮汁で作った煮ツメをつけて供します。
おろしたゆずの皮をシャリにつけたり、煮ツメをつけた後に直接振りかけても合います。